院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

動物園

2007-04-25 10:27:08 | Weblog
 動物園では熊がオリの中で、際限なく往復運動を繰り返している。あれは熊がノイローゼになっているのである。

 動物園は動物を一見可愛がっているように見えるが、オリの中で一生を過ごさせるという点で、極めて動物愛護精神に反する施設である。動物愛護団体は動物園に抗議しているのだろうか?あるいは、動物園反対運動でもしているのだろうか?いまのところ、聞いたことがない。

 グリーンピースという環境保護団体は、捕鯨船に体当たりするような過激な行動で知られているけれども、彼らが動物園をどう考えているのか、私は知らない。捕鯨船に体当たりをしておいて、動物園を不問に付しているとしたら自己矛盾である。

 動物園の歴史は古く、古代ペルシャにまで遡る。ただし、動物園は一般公開されておらず、王侯の権威付けのための個人的コレクションだった。中世ヨーロッパでも、動物園は王侯の個人的な持ち物だった。

 動物園が庶民に開放されるようになったのは、わずかに17世紀になってからである。

 フランス革命は、動物園を一部の特権階級の所有物から民衆の手に移すことに役立った。でも、当時の動物園は人間までも展示するようになった。「セムシ」、「コビト」、黒人などである。

 イギリスでは動物園見物ならぬ、精神病院見物が行われるようになった。庶民が休日にお弁当をもってピクニック気分で精神障害者を見にいくのである。なんと非人道的な!と思われる向きも多かろうが、なに現代でも動物に対して同じことをしているのだ。

 わが国でも明治時代に、「葦原将軍」と自称する妄想症の老人が松沢病院にいて、新聞社はネタがなくなると、「葦原将軍」に時局を語らせ、面白半分の記事にしていた。

 サーカスの動物の方が動物園の動物より繁殖力が強いことが知られている。理由は、サーカスの動物には「仕事」があるが、動物園の動物には何もないことだと考えられている。

 (この記事の動物園の歴史の部分は、碩学の精神科医アンリ・エランベルジェによった。ものすごく面白い本だから、一読をお薦めする。書名は『エランベルジェ著作集2』。出版社はみすず書房で、値段は6000円である)。