院長のへんちき論(豊橋の心療内科より)

毎日、話題が跳びます。テーマは哲学から女性アイドルまで拡散します。たまにはキツいことを言うかもしれません。

家族制度と雇用・人事制度(現代の奴隷その7)

2014-11-17 05:55:48 | 社会

(細川家集合写真(1957)、ウィキペディア「家族」より引用。)

 今回ご紹介した書物『グローバリズムという病』は、今後エコノミストや知識人によって批判が加えられることでしょう。私はこの方面では批判を行う力量がありませんので、とりあえず肯定的に引用しました。

 本書には家族制度と雇用・人事制度(ひいては社会制度)との深い関係を、フランスの家族人類学者エマニュエル・トッドの説を援用して説いた部分があります。

 かいつまんで言うと、日本の家族構造はドイツのそれと類似していて、いずれも「権威主義的家族」だそうです。それは、親子関係が権威主義的で兄弟関係も格差的な家族です。

 日本に老舗が多いのは、長子相続、権威主義的直系家族の所産だそうです。その周辺に一族郎党がいて、例えば一族の当主が朝倉家の家臣で、織田信長との戦いで全員が討ち死にしたというように、家業を中心として社会ができていたといいます。

 ドイツでも企業の9割は中小企業で、家族的系経営で成り立っています。日本もドイツも「年功序列」、「終身雇用」で特徴づけられます。

 こうした家族構成という背景の上で社会構造が造られました。むろん企業も似たような構造をとらざるを得ませんでした。

 ところがグローバリゼーションは、こうした企業構造を破壊しようとします。そして、日本の家族構成が1980年代から崩壊し始めたころから、グローバル企業が日本に入り込むのが容易になったといいます。これ以上のことは、本書を直接ご覧ください。

 いずれにしても、権威主義的構造の企業内で、今は下っ端であってもいずれ齢が行けば上役となれるはずだったサラリーマンは、年功序列の廃止、成果主義の導入など、最後の砦を崩しにくるグローバリゼーションによって、本物の奴隷にさせられるかも知れませんね。