アメリカのサブプライムローンの破たんを契機に、金融危機、不動産の不況が続いています。
一見、関係ないように思われる金融危機や不動産不況ですが、今日は、これらが大田区政に与える影響について大森北一丁目開発などを事例に報告します。
大森北一丁目開発は、丸紅が事業者に選定され、区は、今月(2008年11月)末までに、事業契約を締結するとしています。
これまで、私は、公共目的で土地交換+約2億円を支払い入手した土地の活用方法の問題点について指摘してきました。
土地活用方法の問題点がある一方で、その後、私が、指摘しているのが、事業スキームの問題です。
大田区は、この土地を50年間の定期借地権により貸し出します。
借り受けた事業者は、この土地に建物を建設したのち、J-REIT(ジェイリート=不動産投資法人)と呼ばれる不動産投資法人に譲渡します。
J-REIT(ジェイリート=不動産投資法人)は、資金を市場から調達して購入資金にあてます。その後、この不動産投資法人は、不動産からの収入(賃貸料から)様々なコストを差し引いた利益を投資家に分配します。
この事業スキームにおいて、大田区は、地主として土地を貸出し地代を得るとともに、民間が建設した建物の一部を大田区の図書館・出張所・集会施設として借り受けます。
このスキームで事業者が応募してきたのは昨年の11月です。
この一年余の間に、不動産市況は大きく変化しています。
昨年の前半までは、不動産バブルと言えるほど、不動産は好況で、土地の価格も都心では上昇傾向にありました。
しかし、建築基準法改正による建築確認の遅延による着工件数の落ち込み、その後のサブプライムローンの破たんなどによる不動産資金の悪化が金融市況へ波及し今日に至っています。
これらは、資金調達コストや賃料などにも大きく影響する経済状況の変化ですが、区は、当初受けたプロポーザル内容に変更はないと言っています。
しかし、現実には、テナントの入居率が下がっている商業施設が増えていたり、J-REITの破たんが起きてるといった状況をみると、大森北一丁目開発の事業スキームにには不安があります。
はたして、このまま契約することができるのでしょうか。契約してよいのでしょうか。
そうで、なくとも、大森北一丁目開発運用するJ-REITが利回りの低下などにより、このビルを転売するなどすれば、ビル自体の活用方法やイメージがどのようになるかわかりません。
区は、こうしたリスクについて、議会に対しまったく説明していないどころか、そうしたリスクを認識さえしていない状況です。
開発主体が民間事業者であるからと言って、区有地の開発にかかわるリスクについて検討・検証さえしない姿勢には疑問を持たざるを得ません。
また、J-REIT(ジェイリート=不動産投資法人)が資金調達することを前提にしたスキームにおいて重要なのは、開発企画力やプロジェクト遂行能力、テナント誘致能力などですが、契約締結直前になってもこれらは、ひとつも示されていません。
プロポーザルにおいて、事業者選定理由には、具体的な提案があったため選定したと記載されていました。一方で、具体的な提案がないため評価点を下げられた事業者もいましたが、何を具体的に示したプロポーザルだったのでしょうか。
開示請求しても非開示となっているため、区民も議会も確認することもできません。