大田区議会議員 奈須りえ  フェアな民主主義を大田区から!

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特区による規制緩和の課題~公平性の欠如と統治機構の崩壊~

2013年10月09日 | ├TPP・グローバル化・国家戦略特区

何をどうする経済政策なのかわからなくても、「特区」と聞けば「特別」にすごいことをしそうで、それが「国家戦略」とつけば、さらにものすごいイメージで受け入れられているのかもしれません。

しかし「特区」でためしにやることの問題が議論さえされないところに、日本という社会の公平性に対する感度の欠如あるいはマヒがみられると感じています。

この欠如とマヒは、必ずしも、公平性を肯定するばかりでなく、仮に、国民全体が、日本の制度に公平性の欠如が認められるが=不公平な政治だが、これに始まったことではないからといったあきらめのような感覚があるとするなら、尚更に問題であると感じます。

特別な区域で良い思いをする誰かと、別の区域で良い思いをすることができない誰かの公平性など、どうでもよくて、意思決定権者に近い(誰かさん)言った者勝ちという日本を象徴しているのが、この国家戦略特区と言っていでしょう。

国家戦略特区にうたわれている規制緩和による経済政策は、これまでにできなかった規制を大胆に撤廃し緩和するものですが、逆に言えば、行われる規制緩和による社会的・経済的影響もまたこれまでに無く大きくなります。

たとえば、雇用の規制緩和を行うことによりどこにどのような影響が出てくるでしょうか。

雇用の規制を緩和し、金銭解決による解雇を認めれば、企業の活動による最適な人件費というコストをコントロールすることが可能になります。

これにより、企業は収益を上げますが、例えば、東京都心部を中心(23区)に展開されるアジアヘッドクオーター特区内に拠点を構える外資系企業は、法人税、都税の減免があります。

http://www.chijihon.metro.tokyo.jp/ahq_project/japanese/business-support/tax-incentive.html

対象となる税目

区分国税(法人税)都税
  アジア拠点化推進法 所得控除(20%) 法人事業税全額減免
総合特別区域法
(※)
投資税額控除
(機械:取得価額の15%、建物等:8%)
不動産取得税(家屋)全額減免
固定資産税(家屋・償却資産)全額減免
都市計画税(家屋)全額減免
特別償却
(機械:取得価額の50%、建物等:25%)

 

東京都は、よく、大都市事務という言葉を持ち出し、「東京都は昼間人口が多いことやビジネス拠点が集積していることから、担わなければならない事務(役割)が多い。だから、23区で稼ぎ出している法人住民税、固定資産税、特別土地保有税の45%は東京都が23区のために使ってあげているのだ」と言います。

特区構想により、都心部に外資系企業を呼び込もうとしていますが、ここに企業集積されても、固定資産税は全額免除です。

需要は確実に増えますが、それに伴う税収は伸びず、それでは、何をもって経済効果というのかと東京都に経済効果の算出根拠を尋ねましたが、算出根拠は出せないと非公開。

税収アップのシミュレーションさえ出せていません。

国家戦略特区には、医療の規制緩和もあります。

医療の規制緩和と医療保険制度は切っても切り離せませんが、医療保険への影響もまた何も考えられていないと言ってよいでしょう。

といいますのも、医療保険制度は自治体財政と不可分だからです。

特区エリアで高度医療を行うベッド数が増え、混合診療が拡大すれば、特区における国民健康保険会計は当然に悪化します。

それでは、特区の自治体が医療保険制度への影響もふまえ、特区申請しているのかと言えば、そうはなっていません。
しかも、療養ベッドが増えたことで、特区内に新たに医療機関ができたとして、それでは、特区内の住民だけが診療するのでしょうか。
特区外の住民も受診するなら、それが特区である必要があるでしょうか。

先進医療・高度医療ができる地域、病院を設置するのがふさわしい区域は限られます。
日本全国からのアクセスや、海外からの受診者を呼び込むなどの医療ツーリズムから考えれば、たとえば、川崎市が医療特区として手を挙げましたが、空港近辺が適地と言えます。

たとえ特区にしてもしなくても、羽田空港周辺は対象地でしょうから、これは、特区ではなく、日本全体の制度変更としてとらえ、医療保険制度との関係性を検証して国民的議論にしていくべきでしょう。

雇用も、医療も規制緩和は行われ、外資系企業(日本企業との合弁を補助要件として)が呼び込まれにもかかわらず、法人税、固定資産税の減免措置が行われるわけです。

税制から言って、自治体の税収が減れば、国から交付金が公布される仕組みですが、特区は、自分から手を挙げているのだから、交付金は無しにしようというのが、国家戦略特区の考え方です。

国家戦略特区は、自治体だけでなく民間企業も手をあげられます。
企業の利益のために、自治体財政や医療保険会計が悪化する可能性がありますが、国は交付金措置しませんから、福祉(子育て・介護・障害等々)や医療など、基本的な住民サービスに関る実質的な財源が、相対的に減るのが国家戦略特区のしくみです。

国・地方それぞれに定められた役割は、補完性、地方分権(地域主権)の下、住民生活を基本に展開されなければならず、それを前提に、税制・財政が整備されてきた日本の統治機構ですが、民間事業者の要望をエンジンに、いとも簡単にその日本の統治機構が壊されようとしています。

自治体財源を減免しても、医療保険会計が悪化しても、住民サービスが軽減されることのない税収の確保や、医療保険制度については、一切何も示されず、経済界の売上確保という視点だけで提案が行われ、国家戦略特区のメニューの法的措置が秋の国会で行われようとしています。

地方分権と言われてきましたが、その声が全く聞こえなくなり、経済、経済と威勢の良い掛け声とともに、地方自治体財政の悪化と住民サービスの低下が始まろうとしていることに大きな危機感を覚えています。

 


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