国家戦略特区法案を読んでいて、頭に浮かんできたのが「全権委任法」という言葉。
続いて「ナチスの手口に学べ」という麻生副総理の言葉。
秘密保護法に国家戦略特区法、これら二つの法律が決まってしまったら国民主権が絵に描いた餅になってしまう可能性があります。
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国家戦略特区法案が成立してしまうと、これまで、さまざまな法律で守られてきた国民の権利が、この一つの法律で、各法律を改正すること無く、骨抜きにされる可能性がでてきました。
国家戦略特区法案には、次のような特徴があります。
1.これまで、地方自治体や住民が持っていた権限が国にいってしまう。
2.中央集権化するが、中でも、国家戦略特別区諮問会議が大きな権限を持つようになる。
3.国家戦略特別区諮問会議は、その構成の過半数を内閣総理大臣が任命する有識者が占めると定められている。しかも、国家戦略特別区域ごとに、国家戦略特別区域会議が設けられるが、国家戦略特別区域担当大臣、関係地方公共団体の長、特定事業実施するもの、国の当該行政機関、密接な関係者とされている。会議の庶務は内閣府。方針なども内閣府令で定めるとされるなど、推進者中心の組織となっている。
具体的な規制緩和を使った事業計画及び事業施行の流れ
①法律に盛り込まれた規制緩和を使った区域計画を国家戦略特別区域会議(以下区域会議)が作成
②作成された区域計画は区域会議全員の同意の下国家戦略特別区域諮問会議へ提出
③国家戦略特区諮問会議で同意されると内閣総理大臣へ
④内閣総理大臣が認定し特区事業の執行
この①~④の意思決定の仕組みの中に、住民の関与はありません。
通常、基礎的自治体において、議会の関与や再開発組合、審議会、住民説明会、パブリックコメントなど様々なかたちでの関与の機会がありますが、国家戦略特区のしくみには示されていません。
たとえば、これまで、丹念に合意形成してきた再開発における合意形成も、「事業計画が公表されてから2週間の間に意見書を提出することができるだけの権限」にとどまります。意見書の意見は、国家戦略特別区域会議が採択すべきであるとすれば、計画の修正ができることになっていますが、計画を速やかに知り、意見を2週間で出して、周到に準備を積み上げてきた計画に土地もしくは権利を有する者が力を合わせて対抗できるでしょうか。
国は、こうした国主導の規制緩和による住民との合理形成について、国家戦略特別区域会議には自治体の首長がおり、一人でも反対すれば区域計画策定は不可能なので、合意形成はそこでなされるといった解釈をしているようですが、首長が、さまざまな状況に置かれている住民全ての利害を代弁することが可能でしょうか。
構造改革特区策定の際、国は、『全国一律に課されている規制において、一定の合理性を有し』と、たとえ、規制が緩和されたとしても元の法律の持つ目的が失われることが無と明記しています。
確かに、日本の現行制度には、さまざまな改めるべき慣行や制度があります。
しかし、国家戦略特区のしくみで規制を緩和すれば、規制緩和の計画を作る人も決める人も、規制を緩和することで利益を上げることのできる当事者=利害関係者ばかりになる可能性があり、仮に緩和すべき規制が有ったとしても、緩和した後、それまで、規制により守られてきた国民の権利をどうするのか(無くす、形をかえる、維持する)といった議論さえできなくなることに問題があります。
私たちが問題視する非効率的であると感じている仕組み=規制は、無くすことだけで、合理化され、私たちのくらしが快適になるほど問題は簡単ではありません。
特区を議論しているワーキンググループの中では、この規制を緩和するために、火事場を作ってでも、平時のルーチンはスキップしてでもという議論が行われているのです。
(P10)「平時であれば絶対に法制審をスキップすることはできない。なぜできたかといったら、火事場だったからである。つまり、今も火事場だという認識をつくる必要がある。だから、平常のルーチンはスキップさせてもらいますと、これはとても重要だと思う。」
国家戦略特区は、これまで、民主主義のルールの中で行われてきた意思決定のしくみから、利害関係者中心の意思決定のしくみに変わることを可能にしようとしています。
国際競争力をつけるために規制緩和し、投資を呼び込んでも、外国資本は投資して得た利益を特区内に再投資してくれるとは限りません。オリンピックの特需で施設や道路鉄道の整備で儲けるだけ儲けたら逃げてしまうかもしれません。
儲けても法人事業税も固定資産税も東京都では100%減免。利子まで国が補助し、利益は都民にも国民にも還元され無いかもしれないのです。
短期の投資の配当を期待できる人たちだけが歓迎する事業を国家戦略と呼べるでしょうか。減免した税財政措置分が更に私たちに増税としてブーメランのように戻ってくる可能性が無いことを試算し、示していただきたいものです。