いのしし くん。

政治、経済から音楽全般の評論
ultimate one in the cos-mos

格差社会の深み。 depth of discrepant society

2015-03-19 19:40:15 | 日記
 (1)近年の春闘はそれまでの長引くデフレ不況下で経営、労働側の双方からの企業存続優先の厳しい追い詰められた考え方が大勢を占めて、「物分かりのいい」(reasonable)決着が続いていた。

 12年末の安倍内閣の登場でアベノミクスによる大胆な金融緩和策で円安株高効果を生んで輸出産業中心に企業業績の自然回復につながって、14年春には政労会議まで設けて安倍内閣が企業に賃上げを要請(事実上の強制指導)して賃上げに結びつけた。

 (2)ところが14年4月の消費税8%引き上げで消費動向を冷え込ませて、円安による輸入原料の高騰が物価高を加速させて物価上昇が賃上げを上回って実質賃金は目減りして、年末のGDP2四半期マイナス成長、貿易収支連続赤字と経済指標データは後退を示して、安倍内閣は15年10月の消費税10%引き上げの18か月先延ばしに迫られた。

 経済界はこの間でも円安株高効果に原油安が重なって堅調な業績成果を伸ばして、トヨタなどは過去最高の営業利益を記録した。

 (3)17年4月の消費税10%引き上げ(政府決定)まで賃上げを毎年実施させたい安倍首相、政府は、法人税引き下げ、残業代ゼロ法、労働者派遣法改正で企業経営を強く後押しして、昨年よりさらに高い最高額による15年春の2季連続の賃上げに結びつけた。

 円安効果の製造業だけでなく非製造業にも賃上げは波及浸透している。アベノミクスで企業業績は大幅に回復したとはいえ、賃金は経営者と労働者の費用対業績効果比較による妥協であったものを、安倍内閣、政府の何が何でも景気回復、物価上昇15年2%目標達成に向けた政治的圧力構造によるものへと変化させた。

 (4)企業は利益、収益追求を目的とした営利組織だから、「損」をしてまで利益を再配分することなど絶対にあり得ない。大企業には相当の利益内部留保があるといわれているし、介護施設経営側にも高い利益内部留保を抱えて厚労省は介護報酬を減額して内部留保を使わせる改正をした。

 企業のベースアップは毎年の人件費を圧迫するものとなるが、「通常であれば難しい金額」(トヨタ)、「ベアは競争力に必ず(マイナスに)効いてくる。非常に危機感がある」(日立)との言葉とは裏腹に目算があるのは当然だろう。
 企業の本質とはそういうものだ。

 (5)「優秀な人材に来てもらうためには、賃上げをケチるわけにもいかない」(自動車メーカー)という言葉が示すとおり「投資」もまた企業成長の糧(かて)となるものだからだ。

 この流れが中小企業、地方経済にも及ぶのかは、安倍首相もまだまだというように問題、課題だ。アベノミクスが期待感含みの株高効果に支えられて実体経済(データ)を反映したものではないことが、経済のダイナミズム(dynamism)とはならない課題だ。

 (6)賃上げが政府の「音頭」、業績改善の「大企業」に倣(なら)って従うしかないという風潮(drift)であれば、「格差社会の深み」(depth of discrepant society)に落ち込むことになる。

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