いのしし くん。

政治、経済から音楽全般の評論
ultimate one in the cos-mos

首相「の」談話。 speech `of ' the premier

2015-06-26 19:50:27 | 日記
 (1)安倍首相の「戦後70年談話」が当初想定していた象徴的な8月15日の終戦記念日を避けて8月上旬に表明する公算が強まっている。政府としての内外への日本の侵略、植民地支配責任に対する表明というよりは、安倍首相の個人的な思い、理念、信条をより優先させる意向が働いていることがわかる繰り上げ論だ。

 これとセットして、これまで50年の村山談話、60年の小泉談話が閣議決定(decision of a cabinet council)を受けた最高意思決定の「首相談話」としたものが、今年の安倍首相の「戦後70年談話」は閣議決定を見送り「首相『の』談話」(speech `of' the premier)ということになりそうだ。

 (2)これで安倍首相の強い信条、理念が色濃く出る可能性が高くなり、閣内に公明党議員大臣もいることから公明党の意思判断に配慮した閣議決定見送り論だ。
 「首相の談話」となったからと言って安倍さんの個人の考えというわけでもなく、法人格としての安倍首相の立場を示すものであるから、基本的な政治(姿勢)論が変化するものではない。

 とはいえ、閣議決定を受けた政府の最高意思決定としての「首相談話」とは手続論が違うということは、「談話」の性質も拘束力も説得力も違うということを意味する。

 (3)基本的な政治(姿勢)論は変わらないとはいえ、政府、首相の戦後70年談話への取り組み、決意が後退したと受け取られても仕方のないところだ。

 当時の村山首相の戦後50年談話は戦後半世紀を経て首相として初めて日本のアジア侵略、植民地支配へのおわびと反省を示したもので政治的意味はあったが、その後の小泉首相の戦後60年談話は村山談話を踏襲した継続的立場の表明であって意図がわからないものであり、本来なら10年単位の区切りのくり返しの戦後70年談話も同じ様な性質、立場のものである。

 (4)しかし安倍第2次内閣発足後に首相の靖国参拝を巡る中国、韓国の反発に、歴史認識問題、尖閣、竹島領有権問題と日中韓の政治的対立が鮮明になって、安倍首相の「戦後70年談話」は大きな政治的意味を持つものに変容していった。

 首相談話は終戦記念日にあわせた極めて日本国内の政治的発言でありながら、中国、韓国をはじめ米国、欧州からも強い関心を持たれる国際問題になっている。

 (5)単に10年区切りのくり返しの戦後談話であれば、「首相の談話」でもよかった。ないしは表明が必要なものなのかは意味も意義も少ないものであったが、近年のアジアを取り巻く軍事、歴史問題の緊張状況を考えると、これで懸案の政治的問題にひと区切りをつける閣議決定を経た最高意思決定の首相談話として政府の立場、意思を内外に表明することが求められて、必要な政治環境であった。

 (6)検討されている「首相の談話」が中国、韓国そして米国ほかの懸念を払しょくできるのか、さらに再燃させるのか、安保法制案、辺野古埋め立てとともに暑い日本の政治の季節を迎える。

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