サブカルチャーマシンガン

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syrup16g「Les Misé blue」全曲レビューその3「明かりを灯せ」

2024-01-07 | syrup16g「Les Misé blue」全曲レビュー











明かりを灯せ
淀みないもの集めて









「明かりを灯せ」は、
アルバムの2曲目に収録されている楽曲。
ライブでも序盤で観客にゆったりと着火するタイプの曲だったと思う
限りなく優しいギターの音色に浮遊感のあるアンサンブル、
そして、
サビで力強く「明かりを灯せ」と何度も聴き手に歌いかける
ある種、これまでのsyrup16gが歌ってこなかった類の楽曲にも思える
(それは「Maybe Understood」にも言える)。

「淀みないもの」とは、
裏を返せば普段は淀んでいる事の証拠だと思う。
口を開けば、ワイドショーの不祥事、ゴシップ、愚痴、陰口...とこの世は暗くなる要素に溢れている
Xを開けば常に誰かが誰かに激昂しているイメージで、それもきっと必要な事だと理解してても
心が休まらない
身体がついていかない。
例えば、
身内の子供と遊んでいる時、
まるでかつての自分をそこに見い出すかのような瞬間があった
それも、子供の中と自分自身の中と両方である。
人それぞれなのは重々承知しつつ、
自分が本気で癒されたり勇気を貰うのはそんな時だったりする。自分にとって、本当に大切なもの
決して他人に踏み込まれたくないピュアな好奇・・・ぶっちゃけ、それだけで人間は生きて行けるもの。
 この曲は、
このキャリアのバンドが・・・
しかも、
syrup16gの様な音楽性のバンドが放つからこそ沁み入る。と素直に書ける楽曲であり、
また、ただ優しい楽曲~ってだけでは済まない哀愁も背景には滲んでいるのをしみじみ感じる一曲だ
だからこそ、「大好きだ」って思えるし、また、昨日に引き続きおせっかいをするならば、
今の日本を見渡した時にsyrup16gの楽曲の中で特に差し出したい曲の一つである
(差し出したい~って自分が創った訳でもないのに偉そうで申し訳ないけれど笑)。











アルバムの流れで聴くと、
いかにも始まります!って1曲目から
前向きなメッセージが伝わる2曲目に移行するので、
そういう意味では「Les Misé blue」のポップな部分を担っている楽曲だと思う
(次の曲が「首吊り台」とか出て来るから対照的でもある...笑)。
やっぱり、
人間を救うのは、
なんだかんだ「〇〇が好き~」みたいなピュアな感情なんじゃないか。

そう信じている(信じたい)自分にとってはスッと心に入って来る素敵なうたに感じた曲ですね。
自分はやはり感想を書く事に命を懸けているので、微力ながら少しでも誰かに届けば。
 自分も本当に良いな。と思える表現を他人のフィルターを一切加味せず純粋に愛してゆきたい。
その結果、誰かと重なる事があったならば、ちょっとは最高って思えるかもしれない。人生が、ね。


syrup16g「Les Misé blue」全曲レビューその2「診断書」

2023-11-05 | syrup16g「Les Misé blue」全曲レビュー










大事 それは確かに大事
いや それよりも大事を突き詰めたら虚無かもよ









上記に引用した歌詞を読んだとき、
「確かに・・・。」と頷いてしまった。それも、心の底から。
何かの為に頑張ったり、
誰かの為に頑張ったり。
やってる時はそりゃ夢中でしょうけど、
結局空回る...というか本当は何の意味も無い事だったりもする。
ハナから諦めて家で鼻くそほじくりながらゴロゴロしてた上で願いが実らないのって
悲しいけどショックは正直無いですよね
だけど、
一生懸命何かを掴もうとした挙句そこには何も無かった~みたいな状況になっちゃうと、
「何の為に頑張って来たんだろう。」って心境に陥ってしまう
っていうか、
過去だけじゃなくて
今やってるすべてが!
だとしたら、
なんて空しいんだろう。そんな憂い、ブルーな心情が切々と歌われている名曲に仕上がってます。

ただ、
逆に言えば、
そうやって自分に保険かけておく事によって
後々感じてしまうであろうショックを少なく出来る効能もあると思う。
ある種の自己憐憫・・・というか、
あまりに期待し過ぎると
その反動もデカいし、
ハナっから期待半分でやってた方が精神安定の観点では良いのかもしれない。
この曲を聴いてちょっと悲しくなったりやるせなくなったりするけど、
それ自体が一種の希望...或いは優しさだったりもする。
聴き手に寄り添ってくれる・・・と言いますか、
まあ、
解決法を示すだけが背中を押す~って事じゃないんですよね。うん。
「診断書」と「死んだっしょ」をかける五十嵐さんらしい強引な韻の踏み方も味にまで昇華されている、
そしてその拡がっていく美しいブルーにカタルシスも憶える物悲しくも頼もしい一曲であります。
やる気を出すのも大切だけど、話を聞いてあげる様な楽曲も必要、、、って事ですね。










サウンド面に関しても、
ザラついたギターサウンドが気持ち良く
サビのポップさもまた印象的な楽曲
それと、
この曲をライブで演奏した時、
冒頭の「悩みが無いのが悩みで」の部分の演奏をミスって
「悩みあった!」って五十嵐さんがMCしてたのがめっちゃ楽しかったですね(笑
楽曲としては決して明るい曲では無いと思うけど、そういう逸話で笑いが生まれてるのも面白いです。
 それにしても、
何度読み返しても冒頭の五十嵐節はキレッキレだし人生も滲んでて素晴らしい。
まだまだ五十嵐さんがソングライターとして健在である事が如実に伝わって来る大好きな一曲ですね。



syrup16g「Les Misé blue」全曲レビューその1「Don't Think Twice(It's not over)」

2023-10-14 | syrup16g「Les Misé blue」全曲レビュー










記号になることは
諦めじゃなくて十字架










ずっとやりたかったんですが、
今年はライブレポの消化が優先順位高かったので中々手付かずだった「Les Misé blue」の全曲レビュー、
発売からもうすぐ一年経つタイミングではありますけど始めようと思います。
リリースツアーは横浜2DAYS参加した経験がありますので、
その時の記憶込みで語ってゆきたいと思う。

一曲目は「Don't Think Twice(It's not over)」。
何故この曲を一曲目に選んだのかと言うと、シンプルに(今作の中では)聴きやすい曲だから。
爽快感溢れるバンド演奏、伸びやかな五十嵐さんのボーカル、分かりやすいメッセージ性・・・と
比較的意図が読み取りやすいのも取っ掛かりとしてはデカいですね。
 確か、
「Les Misé blue」のインタビューで90年代をテーマにした~みたいなのをどっかで見掛けて、
この曲なんかはモロに90年代のギターロックっぽいアレンジに仕上がってると思う
それでいて、
抽象的な表現にはなってしまうんですけど、
音に触れてるとどことなく‟空”を感じるんですよね
90年代の楽曲って「空」がタイトル又はキーワードな曲が多かったので、
そういう観点からも個人的に90’Sを感じてしまうのかもしれません
まあ歌詞の中に直接的に空って単語は出てこないんですが笑




タイトルは、
直訳すると「二度と考えるな」
もう考えても仕方の無い事をぐちぐち考えても仕方がないし、
その暇を使ってもっと嬉しい事や豊かな事を考えた方が建設的な訳で。
ただ、
それを、
自信満々で歌ってる訳では無く、
どこか悲しそうに歌ってるところが非常にシロップらしいですね
二度と考えるな、まだ終わって無い。普通に考えたらそこまでシロップらしくない筈なんですけどね笑
でも五十嵐隆という人間の性質上やっぱりそこには絶対にブルースが滲み出てしまうんですよね
なので、どこか歯を食いしばってる様にも聴こえるっていう、
それはきっともうシロップなら何やってもシロップらしくなる~って事なんでしょう
記号=十字架、っていうのもポジティブなんだかネガティブなんだかよく分からないですけど、
そういう曖昧さ含めて実はめっちゃシロップらしい一曲として聴ける快作であります
音源でもそうなんですけど、
生で聴くと「うーうーうーうー」の部分がとっても気持ち良く響く曲でもある。





選び取ったもの
多分 それが正解だ



多様性とはきれいごとの様にのたまいつつ、
裏では普遍的価値観から一歩でもはみ出すと途端に陰口の餌食になってしまう
それで自分を変えるんじゃなく、自分の好きなものや道が本当に自分のチョイスすべきものなんだ、と。
そう力強く歌ってくれるこの曲が大好きですね。完走するまでやるのでよろしくお願いします。

そういえば、この曲、野外でも似合いそうですね。まあ...機会は少なそうですが。