ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

シド・バレットの死

2006-07-15 13:48:19 | 社会・政治・一般
12日の朝、新聞の片隅の死亡欄に、シド・バレットの名前を見つけました。イギリスのロックバンド、ピンクフロイドを脱退したメンバーでした。

ピンクフロイド結成時の中心メンバーの一人で、そのエキセントリックな言動は、当時ロック界を大いに賑わしたものでした。マリファナはもちろんのこと、覚せい剤やLSD使用の噂も絶えない人で、何度か逮捕されていたと思います。

薬物の影響があったかどうかは分かりませんが、彼の在籍時のピンクフロイドの曲は、えらく刺激的で退廃的な印象が強く、EL&Pと並んでプログレッシブ・ロックを代表するロック・グループでした。

もう時効だと思うので、書いてしまいますが、私が初めて薬物(シンナー)に手を出したのも、当時シド・バレットに憧れていたからです。もっとも体質に合わなかったみたいで、2回ほどやって止めてしまいました。当時はまだ中2でしたから、酒はともかくタバコもシンナーも満足に出来ないことに、むしろ劣等感を感じたくらいでした。

もっともその後、シンナーのやり過ぎで、脳みそが溶けたと噂がたった馬鹿な同級生の末路を見て、やっぱり止めて良かったと安堵したものです。今にして思うと、何故にあれほど憧れたのか不思議でしたが、当時はもの凄く憧れたヒーローだったのは確かです。

私は音楽的才能に乏しかったので、そちらの世界を志向することはありませんでした。でも当時の友人には、音楽で食べていこうとしていた連中が結構居ました。みんな、どうしているのでしょう。

誰一人として、メジャーになった奴はいませんでしたから、大半は夢を諦めて、どこかで妥協して、あるいは新たな道を見つけて生きているのだろうと思います。でも、夢を諦めきれず、その夢の周辺にしがみ付いている奴らもいるかもしれません。

夢を追い求める姿に憧憬を抱くのは勝手ですが、実際夢に縛られ、夢に引きずられて生きていくのは苦しいものです。

夢を空に描いてはいけない。夢を描くなら、現実という堅い大地に刻むべき。空に夢を描くのはた易い。しかし、風があっという間に消し去ってしまう。だからこそ堅い大地に、断固たる意思と、流れ落ちる辛苦の汗と共に、絶えざる努力を積み重ねて、夢を描き刻むことによってのみ、夢は実現する。

シド・バレットがどのような人生を歩んだのか、私は知りません。かつて、時代に、社会に、体制に反逆するかのごとき歌詞を書いた彼が、どのような夢を抱き、どのような人生を歩んだのでしょう。若かりし頃の夢と、人生の晩秋との落差に失望を抱いて死を迎えたのではないことを切望します。
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