ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

「水の戒律」 フェイ・ケラーマン

2008-10-02 09:54:43 | 
夫婦で作家というのは、案外珍しいかもしれない。

夫であるジョナサン・ケラーマンは、私のお気に入りのミステリー作家だ。臨床小児心理医アレックス・シリーズが代表作で、私は大ファンである。ただ、近年なかなか新作を出してくれないのが不満の種だった。

だからという訳でもないが、奥様に手を伸ばしてみることにした。ベストセラー作家でもある夫に劣らず、彼女もミステリー作家としての地位を確立していることは、以前から知ってはいたが、なんとなく手を伸ばしにくかった。

ただ、最近あまりにジョナサンが新作を出さない。良質のミステリーに飢えていた私は、藁をもつかむ気持ちで、奥様の作品に手を出した次第。

で、読んでみた印象は、夫ほどではないにせよ、質の高いミステリーであり、失望を味わうことはなかった。ただ、舞台設定をユダヤ人社会においているため、イマイチ気持ちが乗りにくかったのも事実だ。

子供の頃から、わりと外人とりわけ白人を多く見てきた私だが、未だにユダヤ人と非ユダヤ人の区別はつかない。あくまで私の知る範囲内だが、これまで知り合った白人たちは、皆ユダヤ人はすぐ分ると言う。

ちなみに、中国人やタイ人、フィリピン人などの東アジア圏の人たちは、私と同様に区別が付かないらしい。何故に白人は、ユダヤ人を見分けることが出来るのか?

歴史に詳しい方ならご承知のとおり、ユダヤ人とは人種の概念ではない。何度も民族離散(ディアスャ堰jを経験しており、混血が進んでいて、とても外見だけで判断できるものではないはずだ。

ただ、その行動様式は独特であるのは間違いない。この作品でも、ヒロインのあまりにかたくななユダヤ人としての振る舞いに、苛立ちを覚えるのは主人公だけではないと思う。

古代において故国を喪失したユダヤ人が、ユダヤ人として生き残るためには、他の民族から閉ざされた集団であることを選択したことは分らないでもない。ただ、その結果として他民族から嫌われる集団になったことも事実だと思う。

他民族を差別することで、ユダヤ人としての集団を維持できたのだと思うが、それゆえに差別される集団にもなったと言ったら言い過ぎだろうか。

どんなに嫌われても、生き残ってきた実績を凄いとは思う。思うが、ある意味不幸な選択だとも思う。民族としてのアイディンティティを否定するものではないが、あまりに民族に拘ると、かえって他民族から反発を食らうのは必然なのだろう。

どうやら、このユダヤ人社会を舞台としたミステリーは、シリーズ化しているようなので、じっくり読んでみようと思います。
コメント (5)
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