ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

社会保険料の改竄

2008-10-08 13:53:14 | 社会・政治・一般
日頃、朝日新聞を罵唐オている私だが、それでも読むのを止められないのは、たまにいい記事を書くからだ。

今月6日の朝刊に載った社会保険庁の不正を掘り下げた記事は見事だった。私が日頃、思っていたことを簡潔にまとめてあり、取材も十分やったことが伺われる記事だった。ただ、詰めが甘い。

色々と不正の多い社会保険庁だが、改竄が多発した最大の要因は、企業の負担する社会保険料が高すぎることだ。

日本経済の特徴は、大企業を支える無数の下請け中小企業があることだ。バブル崩壊後、安い海外製品の流入に苦しむ大企業が採った選択は、下請け企業にコスト・ダウンを強要したことだ。この結果、中小企業は大きく経営を悪化させた。

政府が統計数値を元に、いくら好景気を謳おうと世論がそれを認めなかったのは、リストラで手取り収入の減少したサラリーマンたちと、中小企業の社長さんたち(一番、金遣いが荒い)の財布が薄っぺらだったからだ。サラリーマンと下請け中小企業の犠牲のもとに成り立った好景気なんざ、実感がないのが当然だった。

しかし、霞ヶ関のお偉方(キャリア官僚)には、これが分らない。だから厚生労働省は、来るべき高齢者社会に向けての財源確保のため、平然と全ての会社と、従業員5人以上の零細事業者にまで社会保険を強要した。

一応言っておくが、零細事業者や中小企業だって十分利益を出し、社会保険を負担できるところはある。しかし、大手の下請け企業では薄利での自転車操業だし、自己資本の乏しい零細事業者に余力はない。つまり、払えないものは払えない。

社会保険の適用の枠を拡げた結果、今まで以上に社会保険を払わない事業者の増加は、末端の社会保険庁職員の業績を下げることとなった。そのため、零細事業者のもとに社会保険庁がやってきて、強硬な取立てを騒ぎ立てたケースもあった。

しかし、金がないのだから、払いたくとも払えない。困った社会保険庁の下っ端職員が考えたのが、今回騒ぎになっている保険料の改竄だった。こうすることで、金が無い零細業者にも払える数字を捏造した。その際、給与から天引きされているサラリーマンたちのことを失念していたようだが、元々保険との認識が薄く、国家歳入の一環としか考えてないから、気にも留めなかった。

社会保険庁の席には腰樺xの意識で高給を食むキャリア官僚は、この実態を知らずに見過ごした。現地採用の下っ端職員の苦労を知っている社会保険庁の公務員(中央採用)たちは、上から厭われることを嫌がり、キャリアたちに報告しなかったらしい。おかしいと思う人は多いだろうが、つまるところキャリア官僚の作成したプランの失敗なので、それをキャリアに報告するのが嫌だったらしい。そりゃ、誰だって猫に鈴を付けるネズミの役割は避けたい。

こうして、社会保険庁ぐるみの保険料改竄という犯罪が行われた。

厚生労働大臣が、外部組織(これは良いが)に調査させて徹底的に調べ上げ、罰するものは罰すると宣しているようだが、それじゃあ駄目だ。

実現が難しいプランを強要すれば、下部組織の人間は不正をしてでもプランを実行しようとするのは必然だ。現場知らずのお馬鹿エリート官僚が作った間抜けなプランがあったからこそ、真面目な役人たちまでもが不正を働いた。不正が起きやすいプランを作成した真犯人を追及せずして、真の問題解決には至らない。

ちなみに、かつては新規の事業者の元へ突如として現われ、社会保険への加入を増やそうと躍起になっていた社会保険庁だが、現在はぜんぜん来ない。保険料の改竄という手口が使えなくなったので、業績悪化を防ぐため故意に、社会保険加入事業者を増やすことを避けているようだ。

こうして、社会保険の空洞化は進む。改竄をやった職員を罰するのは仕方ないが、真犯人を放置していい道理がない。繰り返しますが、社会保険は高すぎる。既に制度としては無理がある。この現実を認めない限り、今後も不正は起るでしょう。
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