ヌマンタの書斎

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医療法改正

2008-10-03 17:09:55 | 経済・金融・税制
やっぱり、主張しなければ駄目なんだなと、つくづく思わされた。

昨年4月に第5次医療法改正が施行された。この背景にあるのは、公益法人への優遇を改めんとする公益法人改正がある。いろいろと政治的なゴタゴタがあり、公益法人に先んじて医療法人改革が先行することになった。

なんで?

実は2025年になると、戦後のベビーブーマー達が大量に退職し、高齢化人口を増大させる。これに備えての改革なのだ。ぶっちゃけ、本音で言えば、いかに高齢者医療費を減らすかが問題になる。

急に話題になるようになったメタボ対策や、なにかと評判の悪い後期高齢者医療も、元をたどればこの予測が根本にある。要するに政府の歳出をいかに抑制するかが大命題なわけだ。

医療法改正は、この後期高齢者たちの医療を担う病院に対する改革でもある。大量に退職、廃業が見込まれるのは医師も同じこと。この先、少なからぬ医療法人の廃業が予想されている。これまで、税制上の優遇措置を得て、資産を溜め込んだ医療法人をどうするかが、大きな課題となっている。

医療法人が税制上の優遇措置を受けてこられたのは、医業の公益性を鑑みてであり、また非営利事業(配当禁止)としての性格を有するからでもある。ただ、本音の部分では節税目的の医療法人が少なくないのが実態だ。

配当禁止ではあるが、医療法人社団(財団は違います)が解散した時は、残余財産が出資者に戻される。これは実質的な配当ではないかとの批難は出るのは致し方ない。

そこで、厚生労働省は平成19年4月以降、出資持分がある医療法人社団の認可を禁止してしまった。ちなみに医療法自体の改正ではなく、局長通達という形で禁止している。

出資持分がない医療法人が解散した場合、残された残余財産は、国や地方公共団体などに帰属されることとなる。つまり、国に没収されるわけだ。もっとも、実際は日赤病院や済生会病院などの公益目的が強い病院に移管されることになりそうだ。

他にも日本医師会が、残余財産の受け入れ先として規定されているのが興味深い。やはり、長年築き上げてきた財産が、国に取られるのは嫌なのだろうと思う。

妙に思ったのが、その受け入れ先に日本歯科医師会が規定されていないことだ。なんでだろう。

なんと、歯科医師会は要望を出さなかったので、改正案には盛り込まれなかっただけだそうだ。当たり前のことだが、やはりお上がなんでも面唐ンてくれるわけではない。生き残るためには、情勢の変化を読み、必要があれば政治的に働きかけねば駄目だということだろう。

それにしても、厚生労働省も無茶をやる。節税して蓄えた財産を分捕ろうとするんだから、荒っぽいにもほどがある。もっとも、この分捕りは医療法人に限らず、公益法人改正の基本姿勢でもある。いったい、財産権をどう考えているのか。日本の官僚って奴らは、実に社会主義的発想をするもんだと実感した次第。

ただ、まあ・・・医療法人に関する限り、ザル法的改正だ。なぜなら、現在の医療法人社団の大半が、出資持分のある社団であり、当面のあいだ現行どおりで構わない扱いになっているからだ。

一応、出資持分がある社団から、持分のない社団への移行を認めているが、やるわきゃない。財産を分捕られることを認める医者がいるわきゃない。当面と謳ってはいるが、ほぼ半永久的だと思う。第一、移行した場合の課税上の問題がクリアされていない。

仏作って魂入れずとは、よく言ったものだ。それにしても、厚生労働省は年々バカになっている気がする。大丈夫か、この役所。
コメント
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