ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

ニュー・アメリカン・ピープル 共同通信社・編

2011-04-25 12:00:00 | 

人類の歴史史上、アメリカ合衆国ほど奇妙な国はない。

まず世界屈指のキリスト教原理主義の国であることだ。西欧が宗教改革を経験して、宗教に対して一線を画す面があるのに対して、アメリカはキリスト教的価値観に疑問を抱かない。

これは恐ろしいことだ。宗教に裏づけされた絶対的正義を振り回す時、人は最も残忍になりうる。なにしろ正義の旗は神に保証されているのだ。その正義に反対するものは、絶対悪に決まっている。

この頑なな価値観が、世界に対して苛立ちを禁じえない。限界に達した時、いとも容易に戦争に踏み込む。まさに独善の限りである。

ところが困ったことに、アメリカはその自覚がない。ないばかりか、自分たちこそが世界の模範であると思い込んでいる。だから、自分たちの意向が世界に反映されないことに苛立つ。

これは全く根拠なきことではないが故に、事態はことさら厄介だ。単に軍事大国、経済大国であるばかりではない。文化の面でも世界を牽引する先導者でもある。

アメリカを嫌い、アメリカを軽蔑し、アメリカを憎む人は世界中いたるところにいる。しかし、ミッキーマウスを愛し、マイケル・ジャクソンのビデオに夢中になり、ハリウッド映画の虜となっている人も数多いる。

家のなかに冷蔵庫、電子レンジ、テレビを備え、パソコンで情報を収集し、ポテトチップを食べながらクーラーの効いた快適な部屋での暮らしに憧れを持つ人は、世界中に溢れている。この生活スタイルこそ、アメリカで生まれたものだ。

朝は、シリアルに牛乳をかけてて食べ、昼にはマクドナルドのハンバーガーを頬張り、夜になるとピザを宅配してもらう。冷蔵庫のなかは冷凍食品であふれ、Tシャツを日常的に着て、スニーカーで歩き回る。

全てアメリカの文化から生まれたものだぞ。

そのアメリカのつま先を踏みつけ、唾を吐きかけて喧嘩を挑んだ国が、20世紀前半の大日本帝国だった。アメリカは全力をもって、この小賢しいアジアの小国を叩き潰した。

それだけでは飽き足らず、政治、軍事、経済、教育とあらゆる分野に干渉して、その牙を抜き、反抗心を抱かぬよう懐柔し、あげくに実質的従属国に貶めた。

軍事力、政治力を極端に低下させたが、経済に傾注して再び大国の地位を取り戻した日本だが、今日でも政治的、軍事的にはアメリカに従属している事実に変りはない。

そのことが、どれほど屈辱的であろうと、日本単独ではこの状況から抜け出せない。だからこそ、日本は常にアメリカに気を配る必要がある。アメリカの実情を常に知っている必要がある。

21世紀を迎えて、アメリカは少しずつ変りつつある。在り得ないとされた有色人種の大統領が生まれ、国内には英語を話せないラテン系アメリカ人が増えつつある。

かつて過半を占めていたプロテスタントは数を減らしつつあり、カトリックの影響は無視できないまでになっている。またアメリカで生まれたファンダメンタリストと呼ばれる教条的な新興キリスト教団体も数を増やす一方だ。

アメリカを支えてきた中産階級は没落し、少数の極端な富裕層と、未来に希望を持てなくなりつつある貧困層の増大は、確実にアメリカを変質させる。

アメリカを知らずして、日本の将来は計れない。アメリカには常に注意を払う必要があると思います。

コメント (6)
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