馬鹿もほどほどにして欲しい。
日本という国は自然災害に恵まれている。毎年のように台風に襲われるし、高潮や土砂崩れも頻繁に起こる。冬になれば雪崩や凍結による被害が生じない年は稀だ。
また、活火山が豊富にある列島であり、地震がなかった年など滅多にない。近代以降では、今回の東日本大震災は最大の地震だと思うが、江戸以前ならば同規模の地震があったことも確からしい。
間違いなく災害列島だと思う。しかし、この自然災害に恵まれたことが、その島の住人たちを鍛え上げた。紙と木の家と西欧人から揶揄されたが、その紙と木の家は自然災害を乗り越えるのに適切であった。
ある程度までの地震なら、その構造的な造りで揺れを吸収してしまう。そして限度を超えて破損しても、スクラップ&ビルドは石造りの家より遥かに容易い。
また定期的に建て直すことにより、自然災害に強く、また再建も容易い家に住み続けてきた。また、ハードだけでなく、ソフトの面でも災害に強い社会を作り上げてきた。
今は被害の凄まじさに茫然自失とならざる得ないだろうが、必ずや復興に立ち上がると私は信じている。だが、そのためには、政府による支援が必要なのは間違いない。
その復興を名目に、政府が増税を目論んでいる。
これほど馬鹿な政府も珍しい。長く続いた江戸時代も、地震、津波、台風と自然災害が数多く起ったが、時の政府は徳政令などを発布して復興を後押しした。要するに、減税により民間の活力を上げて、それを復興に活かす手法だ。
別に日本に限らず、古来より施政者が行ってきた当然の手法でもある。
ところが、民主党政権はそれとは逆に増税を言い出す始末だ。もちろん、その黒幕は、間違いなく財務省だろう。財務省にとっては増税による財政赤字縮小こそが、至上の命題だからだ。
しかし、少し考えてみれば分る。売上が低迷して倒産の危機にある会社に対して、もっと税金を払えと強行するようなものだ。むしろ倒産を早める可能性のほうが高い。
古来より大規模な災害が発生した時は、増税ではなく減税をして国が貧困に耐えて、民に余裕を与えて復興の助けになるようにしたものだ。つまり国債を発行すればいい。それも超大規模な建設国債だ。
必然に日銀は通貨発行量を大幅に増やして、市中に金が回るようにする必要がある。なぜなら国債を買うのは、もっぱら金融機関だからだ。国債購入に資金を使った銀行は、資金を民間企業に貸し付ける余裕は、なくなってくる。
だからこそ、インフレ政策が必要になる。現在の日本はデフレ気味であり、しかも大量の外貨準備高がある。大量の通貨発行が可能な状態にあると考えていいと思う。つまり、復興資金の獲得に増税はしなくてもいい。
しかし、財政赤字に汲々とする財務省と、なにもしないことが存在価値だと思い込んでいる日銀の自己保身優先エリートが増税を民主党政権に押し付けた。
ド素人政治家には、優秀なエリートだと思い込んでいる官僚たちに反論するだけの力はない。だから、このまま増税による復興政策は、国会を通過してしまうだろう。
結果は分っている。体力の無い零細企業は大量に梼Yし、失業者を増やし、貧富の差を飛躍的に拡大させる。政治に不満を抱いた有権者は、自暴的な行動に出る可能性は高い。
この状況をみて、社会を破壊的に変えようと主張する政治家が、必ずや登場する。極論から極論に振れやすい日本人は、意図も容易に、口先だけ威勢のいい政治家の主張に騙される。
思い出して欲しい。今の民主党政権を生み出したのは、自公連立政権下での改革路線(小泉・竹中)で生まれた貧困層であることを。構造改革路線で、はじかれ、切り捨てられたリストラの犠牲者たちが変革を求めて、与党自民党に見切りをつけた結果が、今の政治なのだ。
景気が上向きな時の増税ならともかく、確実に下方に向かっている時の増税は、間違いなく政治に対する不満を高める。民主党は、次の選挙で確実に自滅の方向に向かうだろう。しかし、次の政権の受け皿が、今以上に不安定なものになる可能性は高い。
なにしろ既成政党への支持は、まるで上がっていない。小数政党の連立内閣の可能性が高まったと思う。つまり、大きな改革が出来ないだけでなく、官僚に操られやすい素人政治家が政権に関る可能性が高い。
不安なことばかり予測したが、唯一幸いなのは増税が消費税中心であることだろう。アメリカ、EUに次ぐ巨大市場を国内に持つ日本は、小規模な増税ならば吸収できる可能性は高い。
小規模な増税であっても零細事業者にはきついことに変りはない。消費税はフローに対する課税であり、ストックとりわけ金融資産そのものには課税されない。莫大な金融資産を持つ日本ならば、なんとか乗り越えられるかもしれない。
そのためには小規模な増税である必要がある。財務省は二桁台の税率を考えているようだが、選挙を浮黷髢ッ主党は受け入れまい。小規模な増税では、復興財源には足りないので、復興が遅れる可能性がある。
東日本大震災は、長く続く景気の低迷に活を入れる絶好の機会でもある。しかし、政治がその復興の足を引っ張る可能性は高い。
こんな時は、政府の援助に期待するのではなく、自分の目で見て、耳で聞いて、足を運び、自分の判断で活路を見出せる人だけが成功すると思う。社会的弱者にはきついと思いますがね。
やはり、私としては建設国債の大量発行による復興財源確保を願わざる得ません。