眠れる獅子と恐れられたシナが、張りぼての獅子だと分かった途端、欧米各国は貪欲に貪り食った。
シナはこの屈辱を決して忘れはしない。現在の中華人民共和国の創設者である毛沢東は、シナの経済復興には失敗したが、軍事指導者としては秀逸であった。
技術力に劣るのを承知していた毛沢東は、朝鮮戦争に100万を超す兵隊を送り込み、その人海戦術でアメリカを中心とした国連軍を恐怖さしめた。この実績こそが、国連の常任理事国の座を台湾から奪い取る結果につながった。
軍事力こそが、国家の基盤であることを痛感しているのがシナである。経済よりも、文化よりも、なによりも軍事力。これが国際政治の基本である。だからこそ、貧しい農民を搾り取って財源を集め、核兵器の開発に夢中になった。
核兵器を搭載した弾道ミサイルの開発にも成功したシナが、次に求めたのが海洋覇権である。覇権国となるには強大な海軍力が必要だと考えたからだ。なぜ海洋覇権を目指したのかと云えば、やはり背景にあるのは資源問題だと考えられる。
軍事力により国家基盤を固めたシナにとって、最大の問題は経済成長により国民を食わせていくことだ。皮肉なことに経済成長が進めば進むほど、国内資源の限界に直面せざるを得なかった。
砂漠化と水不足、工業化による環境汚染と地下資源の枯渇問題は、シナ政府をして経済開放をしてまでも取り組まねばならぬ大問題である。予想されたとおり、既に食料も石油も輸入をしなければ、この膨大な数の国民を養うことができずにいる。
だからこそ、海洋の交易ルートの確保と、海洋資源の獲得は絶対に引くことのできない課題なのだ。
まずは南沙諸島及び西沙諸島を侵略した。ヴェトナムやフィリピン、インドネシア、マレーシアなどがいくら文句を言おうと、軍事力で支配を正当化させてしまう。この地域にアメリカが固執しないことは織り込み済みだからだ。
問題は、台湾から沖縄そして九州にかけての南シナ海だ。このラインはアメリカが防衛圏と定めているがゆえに、容易に侵略できない。だが諦めることは出来ない。だからこそ、尖閣諸島で妥協することは出来ない。これは国家の存亡に係る重要課題なのだから。
だから、今後もシナは尖閣諸島への侵犯を続ける。決して諦めない。
そのためには、アメリカ軍に対抗できる海軍力が必要不可欠だ。だからこそ旧・ソ連から建造中止となった空母を買い取った。当初はカジノとして運用すると嘘をついてまでして入手した。それがシナ海軍の虎の子である「遼寧」だ。
さて、この空母・遼寧は尖閣諸島海域に来るだろうか?
現時点ではありえないし、当分(最低5年以上)は来ないと予測できる。理由は簡単で、このシナ海軍の虎の子は、文字通り子トラであり、実戦能力皆無。
写真を見てもらえばわかるが、先端がスキージャンプ台のように持ち上がっている。これは飛行機の発着装置(カタパルト)の開発が出来なかったからの発着方法であり、重量の軽い機体しか発艦できない。つまり爆弾やミサイルなどを搭載した艦載機の発艦はまず不可能。
前にも書いたが、空母の発着装置(カタパルト)は非常に難しい構造で、アメリカ以外で実用化に成功した国はない。だから空母を保有した国の大半は、爆弾等を搭載した艦載機の運用は諦めている。
更に付け加えると、艦載機の発艦時には向かい風を利用するため、風上に全速航行するのだが、この遼寧スピードが遅い。旧・ソ連が蒸気タービン式のエンジンを撤去してシナに売り払ったとの報は、まず本当なのだろう。
現在のシナの技術力(とりわけ冶金技術)では、高出力に対応できるタービンの生産は難しい。おそらくこの遼寧のエンジンはディーゼルなのだろう。そうなると、航行速度は20ノット程度であり、アメリカ空母の6割程度にとどまる。これでは、ますます重量級の艦載機の発艦は無理だ。
また空母は複雑なシステムの塊であり、実戦運用できるのは4か月程度が限界。通常は、3隻必要でメンテナンス、訓練、航海の三パターンに分けて運用する。一隻では常時戦力としては使えない。
つまり現時点では、この空母・遼寧は訓練用、試験用としての運用しか出来ない。もちろん進展著しいシナの経済力、技術力を考えれば、いずれ実戦投入可能な空母及び艦載機を出してくる可能性はある。
あるには、あるが当分ない。何故なら基幹技術の大半は未だシナが保有していないことが明白だからだ。これはシナ空軍が保有する戦闘機などからも推測できる。シナが保有する戦闘機は、大別して二種。すなわちJ10とJ11なのだが、どちらも外国の機体のコピーであり、自力で開発したものではない。
もっとも面の皮の厚さには定評あるシナ人である。あくまで自主開発したと言い張っているが、嫌気がさしたロシアがエンジンなどの基幹技術を渡すことを拒否しているので、止む無くエンジン部品は輸入している。
ジェットエンジン自体を開発する技術力はあるが、高出力のジェットタービンファンを作る技術はさすがにない。これはどこの国でも最高機密に近い技術であり、他の国も容易に提供はしてくれない。
冶金技術というものは、IT技術のように容易にコピーできるものではない。日本でさえ、戦車や機関砲に使う銃身の製造技術は、あまり高いとは言えない。これは実戦体験が戦後半世紀にわたりないせいでもあるが、機密情報が多くて外国からの技術導入が困難なせいでもある。
いかに経済発展が著しいシナといえども、容易に手に入る技術ではないと思う。だから当分の間、この空母は張子の虎であり続ける。つまり、シナ海軍はアメリカ海軍と対峙することはない。
しかし、海洋覇権はシナの国益にかかる重要課題である。それゆえに、何十年かかっても諦めることはない。現在のシナ海軍の実力はたいしたことはない。現在の日本海軍(海上自衛隊)でも技術的には対応できる。もちろんアメリカの支援あってではある。
最大の問題は、むしろ日本国内の国防に関する法整備と運用といったソフト面にこそある。
安倍内閣は、選挙前の大言壮語は封印して、現在は経済再建に傾倒している。これは政治的には正しい選択だと思う。これこそ有権者の大半が望んでいたことだからだ。しかし、有事法制の整備を忘れないで欲しい。
おそらくシナは小競り合い程度の戦闘は仕掛けてくる可能性は高い。過去の旧ソ連やインドとの国境紛争からして、その程度の事態はあってしかるべきと想定すべきなのだ。
その際日本は、ハード面では十分対抗できる兵力を有しながら、それを運用するソフト面での不備から戦えない可能性が高い。大切なものを守るために闘う覚悟なくして、平和は守れない。
来たるべき21世紀の新・日中紛争でその覚悟が問われると思う。