ヌマンタの書斎

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アベノミクスに思うこと

2013-02-22 13:48:00 | 社会・政治・一般
頭の良い人ほど、現実よりも理論に囚われるようだ。

その典型が、先だって任期前の辞任を公表した白川・日銀総裁だ。この人、未だに経済ってものが分かっていない。安倍政権樹立以来、東京株式市場は上昇機運に乗り、あっという間に1万円を超えてしまった。また円高基調も逆転し、今や100円台を伺う勢いである。

こうなると、これまで不況風が吹き荒れていた日本経済にも明るい兆しが見えてくる。私の知る限りでも、ここ5年近く売るに売れなかった土地が売れたとの報告があったし、なかにはキャンセル料を払ってまで売買契約を取りやめ、新たに値上げした上で売却を狙っている不動産業者もいる。

明らかに潮目は変わったと観るべきだろう。

これは間違いなく、これまで頑なにデフレ政策を固持してきた日銀及びそれを容認してきた政府のやり方が間違っていたことを意味している。少なくとも市場はそのように理解している。この現実が白川氏には見えないのだろう。まァ、本音は見たくもない、のだろうね。エリートはプライド高いから。

ところで、安倍総理が打ち出したアベノミクスなる新経済政策の中身はどうなのだろうか。

実はここに大きな問題がある。はっきり言えば、それほど新味はなく、かつての自公政権の時とあまり違いは感じられない。一応、確認しておくがデフレ政策自体は、自公政権の時から維持され、民主党政権はそれを継続したに過ぎない。

もっと言ってしまうと、アベノミクス自体に日本経済を刷新するほどの中身があるとは思えないのだ。その意味でアベノミクスに反対するエコノミストらの意見は分からなくもない。私自身、その中身を高く評価することは出来ないと思うからだ。

それでも現実の経済は動いた。まだ一割程度の金融緩和に過ぎないが、それでも市場はそれを評価した。だからこそ株価は上がり、不当に高値が付いていた円が急落して実態に近づきつつあるのだろう。

景気は気分で動くこともある。長いデフレ政策で委縮していた市場心理を動かした。これは厳然たる事実であり、教科書エリートの白川氏には理解しがたいのだろう。

ただ、本音を言うと私自身、まだまだ景気回復を疑っている。不安要素の一つに金融特措法の期限切れがある。亀井大臣が打ち出した銀行への返済猶予のための法律の適用を受けている中小企業は少なくない。

この金融特措法の期限が切れると、返済猶予は停止となり、以前の返済に戻らなくてはならない。景気が未だ十分回復していない以上、この特例を受けていた中小企業は耐えられるだろうか。

私は大いに疑問をもっている。おそらく3月から4月にかけて金融特措法の期限切れによる梼Yが相次ぐと予想している。これが景気回復の足を引っ張るのではないか。

特例の適用を受けているのは中小企業なので、景気全体への影響は小さいかもしれない。そうあって欲しいと願う反面、中小企業相手の税理士でもある私にとっては、顧問先の減少にもつながる一大事である。率直に言って悩ましい。

本音を云えば、金融特措法の適用を受けていること自体、既に破綻寸前であることを意味しているので、梼Yは必然だとの思いもある。その一方で梼Yによる悲劇を間近で幾つも見てきたので、同じ光景が広がるのに胸を痛めるのも予想できる。決して観たい光景ではない。

したがって今の段階では、私は景気の浮揚に懐疑的だ。なにしろ具体的な数字がまだ上がっていないので判断しかねる。ただ、空気は変わった、それは確かだと思う。

私はデフレと不況を望んでいる訳ではないので、金融緩和と景気回復を切に望んでいますが、それを数字で実感できないことが残念。今年夏までで、結果は出ると思うので、ここはじっくり観察しようと思います。
コメント
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