ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

入院記 その三

2013-02-15 12:12:00 | 健康・病気・薬・食事

実のところ、ICUを三日で追い出されてからは、あまり語るべきことはない。

一般病棟では、カテーテルを抜かれた直後はベッドから動けなかったが、すぐに安静度は緩和されてトイレぐらいなら歩いていけるようになった。これだけで、私のストレスは激減した。

もっとも歩く速度はカタツムリのように緩慢で、わずか数日の寝たきり生活でこれほど体力が落ちるとは思わなかった。これはこれで、ちょっと精神的に堪えた。これは退院して社会復帰した今も悩みの種で、朝の通勤ラッシュはかなり体にキツイ。

一般病棟に移って何が嬉しかったって、食事が出たことだ。ICUでも少し出たが、寝たきりの状態であったので、まともに食べることが出来なかった。ベッドの上とはいえ、身体を起こして食事できるのは、本当に嬉しかった。

もっとも初回は4割ほど残してしまった。まだ身体の回復がそこまで十分ではなかったらしい。これは私としてはたいへん屈辱であったので、二回目からは全て平らげた。食べて体力をつけることが、私の使命だと任じていたからでもある。

次に私が苦しんだのは、活字中毒の禁断症状が出たことだ。トイレとナースステーションまでは歩けたが、そこでお終い。売店に行くことも出来ず、私は活字に飢えていた。

そんな私の目に飛び込んできたのは、掲示板に張られた院内図書室の存在であった。是非行きたいと切望したが、場所は2階であり、まだ5階の病棟の一部しか動けない私には遠すぎた。

ところが週に一回、ボランティアの方が本の一部を移動式ラックに入れて各病棟を巡回していることが分かった。それを待って私は数冊本を借りることが出来た。これでとりあえず、活字中毒の禁断症状は改善された。これはありがたかった。

やがて5階のフロアなら、どこでも歩いて良いことになった。シャワーと入浴の負荷テストにも合格して、病院内なら自由に動けるようになった。もちろん、真っ先に行ったのは、2階の図書室であることは言うまでもない。

誤算は院内の売店で、これはローソンが運営しているのだが、確かに病院の敷地内ではある。でも、病棟の入り口を出て、徒歩15メートルほど歩く必要があった。外套を着てならともかく、寝間着一枚で外に出るのはいささか辛い。

だから売店に行く時は晴天の日の午後に限られた。寝間着一枚で売店に行く馬鹿なんて、そうはいないと思っていたら、私以外にもけっこう居たのが面白い。やっぱり、入院生活は退屈なのだろう。

当初、二週間で退院の予定だったのだが、この季節カテーテル手術の需要は多いらしく、私の担当医は大忙し。白衣を着ているよりも、手術用の青い服を着ているほうが多かったぐらいだ。

おかげで退院予定が一週間伸びたのは痛かった。ただ、慎重を期してカテーテル検査をした結果、詰まっていた血管は良好に血が流れていることが確認されたのは嬉しい情報だった。一部壊死した心臓も、早期の手術の甲斐あって、機能はほとんど低下していなかった。これは本当にありがたい。

だからといって、今後毎日血をサラサラにする薬を生涯飲み続ける現実に変わりはない。もっとも、これは高血圧対策の降圧剤で経験済みなので、私としては少し手間が増えた程度の負担でしかない。

変な言い様になるが、私のような難病歴のある人間は、生涯病気と連れ合って生きていく覚悟が必然であり、その意味では手慣れたものだ。それでも新しい薬が増えるのは、やっぱりあまり嬉しくはない。

でも、きちんと服用するだけで、ある程度の健康な生活が維持されるのなら、むしろ喜ぶべきなのだろう。人生、山あり谷ありというが、どうも私の人生は浮き沈みが激しいようでならない。

私個人としては、もう少し落ち着きのある人生が希望なのだが、なかなか思うようには生きられないものだ。まァ、無事に生きていれば、そのうち良いこともあるでしょう。

コメント (16)
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