ヌマンタの書斎

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シャレード

2013-02-26 14:52:00 | 映画

だいぶ前の事だが、アメリカでヘップバーンといえば、キャサリン・ヘップバーンだと言われて驚いたことがある。

もちろん、日本では断トツでオードリー・ヘップバーンだと思う。現在はヘプバーンと表記されているようだが、私は懐かしの記憶に従って、敢えてヘップバーンと記載した。でも面倒くさいのでHと略すので失礼。

一応書いておくと、キャサリン・Hだって名女優であることは間違いない。アメリカでは若手の憧れの的である以上に、お手本的存在でさえあった。長身で個性的で、なにより自立した女性像を演じさせたら随一の名優だ。

一方、オードリー・Hだって十分、名女優の実績を残している。アカデミー、トニー、エミー、グラミー各賞を総なめしただけでなく、名作映画のTOP50に出演作が4作も入っている。

ただ、それでもアメリカではキャサリンのほうが知名度は高い。これはオードリーが70年代から80年代にかけて家庭を重視し、育児に重きを置いたことも一因であろう。

だが、日本では圧倒的にオードリーの方が知名度、人気ともに高い。これはやはり彼女の個人的な資質によるところが大きいと思う。グラマラスとは程遠いスレンダーさは可憐としか言いようがなく、大きな目と相まって妖精のような容姿に憧れた日本人女性は多いと思う。

実のところ、日本では男性よりも女性からの支持の方が高いのではないかと私は思っている。オードリーにはファッションリーダー的なものがあったようで、小柄な日本人には彼女のスタイルは、大柄な白人女優よりもより身近に感じられたようだ。

どちらかといえば、流行音痴、ファッション音痴の私でさえ、亡くなって十年以上たつにもかかわらず、オードリーの写真がファッション誌などに掲載されたり、広告に使われることぐらいは知っている。

彼女の映画が撮られたのが50年代から60年代であったことを思えば、時代を超えた魅力があったのだと評さざるを得ない。

実は先だってCS放送でたまたま映画「シャレード」を放送していたので、現在自宅での休養を重んじていることもあって、じっくり観てしまった。一応、サスペンス映画だと思うが、上記の名作TOP50には入っていない。

無理もないと思う。当時ミステリーの最高峰といえばヒッチコックだが、その作風をなぞったような構成自体は決して悪くない。凝ったシナリオだって十分合格なのだが、一点どうしても困った問題がある。

それは主人公であり、ヒロインでもあるオードリーの存在だ。悲劇の未亡人を演じているのだが、どうしても悲劇の香りが薄い。細身の華奢な体躯を華麗なファッションで装ったオードリーに、どうしても悲劇的な最期を予想できない。

映画を観ながら、絶対ハッピーエンドで終わるよと確信できてしまう。これはオードリー本人が醸し出す独特の華やいだ雰囲気に帰するところが大きい。率直に言ってヒッチコック風サスペンスが似合わない女優だと思う。

もっともオードリー自身は、第二次大戦の戦火の中で育ち、幾多の悲劇を身近に観ながら成人し、女優として大成してからもユニセフの活動など社会奉仕を忘れなかった御人であり、決して不幸を知らずに生きた人ではない。でも、やっぱり凄惨な悲劇や、酷薄な陰謀劇の似合う女優さんではないな。

多分、他の女優さんが演じたら、ヒッチコック風サスペンス映画としては出来が良かったように思う。でも、オードリーが主演したほどには大ヒットはしなかったとも思う。その意味でも凄い女優だと思いますね。

コメント (2)
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