嘘をつくのは、傷つきたくないからだ。
嘘をつかずに生きていけるほど、人生は甘くもないし、優しくもない。嘘は傷口を覆うカサブタのようなものかもしれない。
カサブタ自体は綺麗でもなく、柔らかくもなく、むしろ見た目はグロテスクだ。だがカサブタがあるからこそ、その下で傷口は優しく癒される。
だが、嘘に嘘を重ねて生きていくと、カサブタの醜さに心苦しくなる。誰かにカサブタの下の真実を告白したくなる。
表題の作品では、子供たちがどうしても付かざるを得なかった嘘に苦しみ、森の中の巨木のもとで告白をしたことで秘密を共有し合う。
だが嘘をついて真実を隠すことを止めることができないが故に、一つの事故が起き、3人は散り散りに生きることになる。
それから17年、嘘を隠し通りながらも陽のあたる世界で生きてきた3人。でも、カサブタの醜さは平凡な幸せを得ることを許してはくれなかった。
誰が一番悪いのか、他に生きる道はなかったのか。答えのない苦悶を読者は共有せざる得ない。読後感は決して爽快でもなく、快活でもない。
それでも一度は読んで欲しいと思うのは、この作品が突きつける問題を身近なものとして考えて欲しいと願うからです。是非、どうぞ。