ヌマンタの書斎

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真田十勇士

2016-10-03 12:05:00 | 映画

世の中、シナリオ通りに動いている訳ではない。

もちろん、シナリオを描いて、その通りに世の中を動かそうとする人たちはいる。政治家や官僚が、その典型である。いや、世の中を思い通りに動かしたいと欲するからこそ、政治家になり、また官僚になるといったほうが適切であろう。

しかし、人はシナリオ通りには動かない。もっとも、それを承知で、それでもなおシナリオを描いて、世の中を動かさんと企む者も必ず知る。私の知る限り、この半世紀で一番のシナリオは、1970年代のローマクラブであろう。

いわゆる石油枯渇をネタにオイル・ショックを起こしたあれである。日本ではトイレットペーパーが店頭から消えたりする醜態が各地で起きたほど、パニックを引き起こした。

もっとも、このシナリオを描いた連中も、その後原油価格が低迷するほどに、原油採掘が拡がり、供給過剰になることは想定外であったようだ。もっとも、ローマクラブが呈示した原油枯渇の可能性は、21世紀の今日でさえも通用するものだと私は考えている。

ただし、シェールガスやハイドロメタンなど、新たな地下資源も見つかっており、決してシナリオ通りにはいかないであろうことも分かる。それであっても、世の中をシナリオ通りに動かしてみたいと切望する人間は、決して絶えることはないであろう。

そんな人たちにとって、理想的なのは戦乱の時代でしょう。実力あるものが、力をもって世の中を動かせる時代。まさに理想的な状況なのでしょう。もっとも、誰しもが明確なシナリオをもって動いている訳ではなく、むしろその場の流れ、勢いで気が付いたら世の中の動きのど真ん中にいた人もいる。

私は歴史上に名を残す武将、王様なんて、案外とそんな無自覚な英雄であったのだろうと思っています。「天下布武」を掲げた織田信長のように、明確なシナリオをもって動いた人なんて、むしろ例外ではないかと思う。

やはり多かったのは、気が付いたらリーダーに祭り上げられ(足利尊氏とか)、なんだか勢いと成り行きで天下人になっちゃった(豊臣秀吉とか)なんて、タイプがけっこう居たのではないかと思うのです。

決して馬鹿にしているのではありません。人間の生き方なんて、結局周囲の雰囲気に流され、気が付いたら「俺って名将?!」なんて調子で世に名を上げる方が多いのではないか。

そんな素朴な疑問を芝居として興業し、その後映画化されたのが表題の作品です。果たして真田幸村(信繁)は名将であったのか?

現在流布している真田幸村のイメージは、江戸時代の講談を元に、明治時代にヒットした講談本がネタになっている。真田信繁は生前、幸村と名乗ったことはなく、また40代後半までは無名の武将に過ぎなかったことを思うと、やはり疑問が湧いてしまう。

ただ、大阪夏の陣で、家康本陣への突撃は、家康がたの武将たちにも強い印象を残したことも事実。隠れた名将であったと考えても嘘ではない。ただ、この映画で描いているように、本人は凡人であったが、周囲に担がれているうちに、その流れに乗って一気に武人として名を上げた。それもまた事実であるかもしれない。

シナリオを描いて動く人もいるかもしれないが、私は案外と人の人生は、周囲に流されつつも、その勢いに乗る生き方で綴られているのではないかと思っています。

今、真田丸というTVドラマが流行っているそうですが、この映画もその流れに乗って作られた作品なのでしょう。けっこう勢いがある娯楽作品でした。なにも知らずに観たのですが、悪くない時間を過ごせたと思っています。

コメント (4)
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