ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

BUNGO 二宮裕次

2016-10-19 11:51:00 | 

すべてを投げ打って打ち込めるような何かがある人は幸せだと思う。

私はついに、その対象を見つけることが出来なかった。読書も登山も、しょせん余技でしかなく、趣味ではあったが、生涯を賭けるような対象ではなかった。

だからこそ、なにかに必死に打ち込んでいる人を見かけると、羨望を禁じ得ない。

表題の漫画は、週刊ヤング・ジャンプ誌に連載されている。友達がいない少年が、唯一打ち込めた遊びが、野球のボールを壁に思いっ切り投げ込むことであった。

ただ、投げるだけ。ただ、それだけを続けていたので、コントロールもなく、球種もない。もちろん、バットを振ったこともなく、ボールを捕球することも出来ない。

しかし、彼は投げ込むことに傾倒した。それしか、やることがなかったからでもある。それしか知らなかったからでもある。

そんな主人公がジュニア野球の全日本の選手と知り合い、その才能を見出された。数万人に一人しか叶わぬ野球の選手層の厚さ、難しさを聞いても、よく理解できなかった。

でも、彼は自分が自信をもって投げ込んだ球を試合に活かすことの喜びを知ってしまった。自分が目標にするべき偉大な先輩を見つけてしまった。

野球に関しては素人同然なのだが、その天与の才能と、それを活かす努力が眩しい。彼が打者に投げられる球は、ど真ん中のストレートだけ。ただ、それだけしか出来ない。

だが、ど真ん中のストレートだけに、打者は見逃す訳にはいかない。如何に球速が速かろうと、コースは分かっている。それなのに打てない。主人公が全身全霊を賭けて投げ込む球には、異様な伸びがあり、三振の山を築く。

今、ヤンジャン誌で一番、熱い野球漫画。けっこう休載が多いのがたまに傷ですが、私が読むに値すると思っている数少ない漫画の一つです。

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