ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

古書店主 マーク・プライヤー

2017-12-26 12:49:00 | 

古本屋に初めて入ったのは、祖父に連れられての神田、神保町であった。

有名な古本屋街なのだが、まだ小学生の私には古臭い街並みに思えた。ただ店頭のワゴンの中に少しくたびれた本が山積みになっており、3冊100円と書いてあることに狂喜した。これなら、僕のお小遣いでも本が買えると。

もっとも世田谷の家から神田までの交通費のほうが高かったので、大人と一緒でないと行けなかった。そうなると、私のお小遣いは、駄菓子や仮面ライダー・スナックに消えてしまう。

だから、私は古本屋に出入りするようになるのは、もう少し大きくなってからだ。自転車で街を駆け回るようになると、神田まで行かなくても、地元に古本屋は何軒もあることに気が付いたのは中学生の頃だ。

以来、週末の空いた時間には古本屋巡りをすることが増えた。十代の子供ながら、店主にも覚えられる常連となっていた。ただ、古本屋さんにとって、私は上客ではなかったと思う。

なにせ買うのは安い文庫本ばかり。初版本や稀覯本にはまったく興味なし。私はただ、本が安く読みたかっただけなのだ。もっとも一番良く通った古本屋で買ったもので、一番高額だったのは多分エロ本だと思う。これは、これで情けない話だが、買った後で置き場所に困り、本棚の奥に隠したはずなのだが、何故か妹にはバレていたのが謎だ。

古本屋で買った本には、たまに書き込みがあることがある。ひどいものだと赤いボールペンで線を引いてあることもある。それは所有者の自由だと思うが、売る気の本に書き込むなと思う。

ただ、その書き込みの内容に首を捻るものもあった。私が嫌だったのは、あるミステリーで冒頭30ページほどに「犯人は○○だ」と書いてあったやつ。書いた奴の品性を疑ったもんだ。

幸いなことに、書き込みの大半はメモ書きというか、慌ててメモを取ろうとしてノートなどがないので本に書き込んだような他人には無意味なものが大半だ。もっとも電話番号を書いてあるのもあり、個人情報にウルサイ昨今との違いを感じる。

ところで表題の本は、主人公の目の前で拉致された古書店主を巡るミステリーだ。さぞや古書のうん蓄にあふれているかと思いきや、メインテーマはその方面ではない。ちょっと肩透かしを食らった気分。

どうも処女作品のようで、作者の意気込みがちょっと空回りしている感は否めないが、新人作家の未熟ではあっても新鮮な感性を感じ取れるのは、そう悪くないものでした。

たぶん、シリーズ化しそうな予感。そこまで引っ張る力量があるのか、少し疑問ですが、期待はしておきましょうかね。

コメント
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