社会人なら必読の新聞が日経新聞であろう。
私も大学3年の頃から、父の奨めで読むようになった。あれから40年以上経つと、さすがに日経のおかしなところも見えてくる。だが、公正中立なマスコミなんてあり得ない。そう考えているので、多少の苛立ちは我慢するようにしている。
日本経済新聞の名のとおり、日本経済に視座を置いた紙面つくりは当然であろう。ただ、そのせいで、企業の広告紙的な存在に堕していることは否定しがたい。実際、広告主でもある大企業の不正をスクープするような取材は苦手であるようだ。
また日本では公共事業の占める割合が高く、また行政主導での経済活動も多い。それゆえ、官庁の中に置かれている記者クラブを通じての取材も重要となる。それは私でも理解できるが、それゆえに行政の不正を率先して告発するかのようなスクープも苦手である。
そんなはずはと思われた方は、日経の行政がらみのスクープは、その多くがリーク(意図的な情報漏えい)であることを失念している。読売や朝日、毎日、産経にもその傾向がない訳ではない。しかし、日経は突出して行政寄りである。
一例を挙げよう。さる年のスクープ大賞を獲得したのは、日経新聞の大スクープとされた證券会社による損失補てんを受けた者のリスト開示である。バブルの崩壊により持ち株の値段が下落したため大ダメージを受けた大口投資家に対し、証券会社が禁じられている損失補てんを行ったことの証明であった。
たしか正月の特報であったと記憶している。しかし、このリストが曲者であった。噂されていて政治家、大物官僚OB、暴力団関係者の名前は見事に見当たらないもので、名の知れた大企業と一般人の大口投資家だけが記載されていた。
これは明らかに情報操作(リーク)であろう。情報の入手先は、おそらくは大蔵省(当時)か金融庁ではないかと思う。意図的に選別されたリストを公開して、政治家や官僚OBへの損失補てん疑惑を払しょくするためではないかと思う。
こんな分かり易い情報操作にスクープ大賞を献じる日本新聞協会もグルとしか言いようがない。日本におけるマスコミの危うさを露わにした、実に間抜けなスクープであった。
日経は、その本社ビル用地の取得を含め、霞が関の官庁とは密接な関係を持つ。また、その関係がないと、官庁での円滑な取材に差し障るのであろう。その事情は分からないではないが、報道機関としての矜持があるのか、私は疑わしく思っている。
その一方で、レベルの高い記事も多く、無視は出来ない新聞でもあるから頭が痛い。今は開き直って、日経には官庁(特に財務省、金融庁)の意向が働いた記事が時々あることを前提に読むようにしている。
ぶっちゃけ、霞が関の広報紙だと割り切っている。だからこそ、最近の消費税増税を巡る記事には注意している。
いろいろと云われてはいるが、財務省は来年、つまり平成31年10月から消費税を10%に増税するつもりである。過去、何度も延期させられたので、今度こそ実施すると意気込んでいる。
だが、森友、加計問題など財務省に対する逆風は、未だ収まる気配がない。加えて消費税の増税が景気に与えるマイナスの影響を危惧する声は高まるばかりである。
このような状況で、最近日経新聞や、TV東京で消費税の増税延期を求めるかのような記事や番組が出ていた。多分、観測記事というかアドバルーンだと思う。その一方で経済界の重鎮が消費税の増税は必須だとの発言も出ている。これは叙勲狙いではないかと、意地の悪い私は勘繰っている。
今の日本の経済状況は、一言では表現できかねるほどの複雑なものとなっている。大企業は概ね好調を維持しており、一部ではインフレ懸念も出てきている。これは私もいくつかの企業の決算書からも読み取れる事実である。
だが、その一方で国内の個人消費は低調だし、飲食、サービスなどは梼Y、閉店も相次ぐほどのひどい景気だ。求人は多いが、それを満たすだけの応募がないのも不気味である。
私のみたところ、景気は部分的には過熱気味だが、全体としては低調なのだと思う。果たしてこの状況下で、消費税という大型間接税の増税はするべきなのか。
財政赤字が巨額な日本では、構造改革と云う名のリストラが必要だとは思う。だが、この赤字は、負債の部分だけを強調した意図的な情報であるのも確かだ。資産の評価なくして、負債だけを強調するやり方は信用できない。
予算権限にしがみ付く官僚たちは、従来通りの予算を獲得するためには、更なる消費税増税が必要だと考える。だが、高齢化と少子化を迎える現代日本では、経済規模自体が縮小する方向で進んでいる。
ならば、予算の削減、官僚のリストラをまず率先してみせ、その後に増税が筋ではないか。自らの利権は保持しつつ、増税の負担を国民に押し付ける今の政府のやり様は、どうも信頼できません。