昨年くらいから急速に云われ出したのが、車の自動運転である。
既にアメリカでは公道での試験走行が始まっている。アメリカの場合は、コスト削減とか投資家向けの資金集めの側面があるので、日本とはいささか事情が異なる。
日本の場合、この自動運転は既に政府が後押しを始めている。企業もかなり積極的である。反対しているのは警察庁くらいだが、周囲の圧力に根負けして、容認の姿勢を見せている。(本音では、まだまだ絶対反対だと考えているはず)
日本の官庁は極めて保守的である。車の自動運転のようなリスクが高い分野に積極的であることは、むしろ異様でさえある。
しかしながら、官庁の上層部に危機感は強い。細くて長い国土を持つ日本では、物流において自動車の果たす役割は極めて大きい。その物流は、船、鉄道、自動車の三種類により支えられている。
ところが、高齢化により中高年ドライバーが減少しているにも関わらず、少子化のせいで若いドライバーが減っている。そのことを肌で実感しているのが、運送会社である。
二台の貨物車両を引っ張るタイプのトラックや、鉄道、船舶を活用してのトラック運送の効率化は、既に始まっている。バス会社は免許を持っていない高校生の青田買いをはじめ、入社後に免許を取得させて不足しているドライバーの充足に充てる予定だ。
男の職場であったはずの大型トラックだけではなく、建設現場で使われるトラクター、倉庫で活躍するフォークリフトなどでも急速に女性ドライバーが増えている。男女平等の観点からではない。既に男性ドライバーが不足しているので、女性を活用せざるを得ないほど逼迫しているのが実情だ。
日本に在留している外国人はかなり居るが、日本の自動車免許を取得している人はかなり珍しい。ちなみに国際免許は短期間しか使えない。外国人をドライバーとして活用するためには、どうしても日本の自動車免許の取得が必要になる。
その際、最大の障壁となっているのが運転技能ではなく、ペーパー試験である。日本語で書かれたマークシート式の試験こそが、外国人にとっては難し過ぎる。既に水面下では、この試験の簡略化が提案されているが、今のところ警察庁が強硬に反対している。
だが私の見るところ、そう遠くない将来、ペーパー試験は日本語による表記だけでなく、英語なども導入されると思う。私見だが、安全に道路を車で走らせるのに必要なのは日本語能力ではなく、交通標識を判別できることだと思うので、私は簡略化には賛成である。
ちなみに日本各地で散発的に起きている在留外国人による交通事故のほとんどが、無免許運転である。この現実を無視して従来の日本語によるペーパー試験に固執する警察庁は馬鹿だと思う。
冒頭の車の自動運転システムの開発は、上記のような現実から止む無く生まれたものだ。必要性があるからこそ、開発実用化が急がれている。
お分かりであろうか。少子化の影響は既に始まっている。それも待ったなしの緊急性を持つ大問題となっている。私見だが、車の自動運転は現状の技術では、場所を限定してでしか実用化は難しいと思う。
もし車両の自動運転が実用化されるのなら、それは車両ではなく、鉄道の方が先ではないかと思う。私の予想では、完全な無人化による自動運転ではなく、人間が監視しながらの間接的な自動化になるのではないかと考えている。
これほどまでに、少子化は日本社会に大きな影響を与えている。(また続きます)