ヌマンタの書斎

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秘密戦隊ゴレンジャー 石ノ森章太郎

2018-06-20 11:49:00 | 

手塚治虫が嫉妬するほどに才能あふれる漫画家、それが石ノ森章太郎であった。

その石森が一度、狂ってしまったのかと思った作品がある。それが秘密戦隊ゴレンジャーであった。

この作品は、特撮TVドラマが先行しており、その原作漫画ではあったが、当初週刊少年サンデーに連載されていた当初は、TV版とそう大差はなかった。


この五人編成の正義の仮面戦隊ものは、大ヒットしただけでなく、その後も延々と続く特撮戦隊ヒーローものの原点となった傑作である。漫画版もサンデーだけでなく、小学生向けの雑誌に石森のアシ出身の漫画家たちにより連載されるほど人気を博した。

ところが本家ともいうべきサンデーでの連載中、途中から作風が大きく変わった。私は当初、石森先生が急病し、アシスタントが代筆したのかと思ったくらいだ。いや、永井豪が石森に代わって代筆を請け負い、悪戯をしているのかと勘繰ったくらいである。

はっきり言えば、スケベ・ギャグ漫画になってしまっていた。この変貌は、どうも石森の確信犯的な所業のようであった。


あの真面目な石森に何が起きたのだろうか?

以下の文は、漫画好きの間で噂されていた根拠なき憶測、邪推にすぎないことを予めお断りしておきます。

十代の頃から漫画家に憧れ、出版社に持ち込み、その才能を認められて漫画家デビューを果たした石森章太郎は、きわめて真面目な若者であった。真面目なだけに、女性に関しては晩生であった。

そして仮面ライダーなどの人気作を連発し、TV化、玩具の商品化と大ヒットにより大金を手にした石森は、その頃から水商売関係の女性にはまって、騙されたりしてひどい目にあっていたようなのだ。

地味な若者が、東京の鵜の目鷹の目を抜く百戦錬磨の女性たちに何を思い、如何なる思いをしたのかは明らかではない。もちろん、その後立ち直るのだが、その前後に描かれた漫画が、このゴレンジャーであったようなのだ。

はっきり言わせてもらうが、このゴレンジャーの後半は、石森の女性に対する複雑な思いを消化しきれず、さりとて仕事を投げ出すことも許されなかったが故の、投げ遣りな作品である。

石森は、その後女性に対する認識を改め、大人向けの漫画を描く際に大いに役立てた。少年漫画から成人向けの、つまり大人の鑑賞に堪えうる漫画を描けるようになり、作風を大きく広げることになる。

そのせいか、この作品は膨大な石森漫画のなかでも、位置づけの難しいものとなっている。今日でも新作が作られる戦隊ヒーローものの原点でもあるのだが、私にとっては、石森が少年向けから、大人向けの漫画を描くようなる転機となった作品だと思っている。

そう思うのは、この作品以前に石森が女性の裸をギャグ漫画として描いた作品がないからだ。この作品で、石森はスケベ漫画(あくまで子供向けではある)を描くことで、なにか一皮むけたのではないかと思うのです。

ただし、作品全体としての完成度はきわめて低い駄作です。でも、石ノ森章太郎という特筆すべき偉大な漫画家の成長を測る意味で、忘れがたき作品だとも思います。


コメント
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