ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

吉宗の閉店

2020-01-07 11:25:00 | 健康・病気・薬・食事

日中仕事をしている者にとって、昼食をどこで取るかは、けっこう重要な問題だ。

昨年のことだが、久々に皿うどんでも食べようと足を運んだのが「銀座・吉宗」である。ちなみに、「よしむね」ではなく「よっそう」と読む。長崎ちゃんぽんが名物な老舗だが、その日は皿うどんの日だと思っていた。でも歩きながら、偶には茶碗蒸し定食もいいよなァと考えていた。

ところが店頭に着くと店が閉まっている。張り紙を読むと、排水施設が故障しているので当面休業しますとの事。妙なこともあるものだと思ったが、閉店では仕方ない。

ところが、この閉店は長引いた。夏が終わり、秋になっても店は再開しなかった。そして年末になり完全な閉店と、今後は他での再開を目指すとの張り紙を読む羽目に陥った。

ちなみに同じビルの一階の喫茶店パウリスタは、ずっと営業しているから地階の吉宗だけが排水施設故障というのも妙な話である。おそらく他にも理由はありそうだ。事情を知っている訳でもないので、安易な憶測は避けたいと思う。

創業は1866年だそうだが、今の銀座店は昭和40年代だと聞いている。先代のS先生が贔屓にしていた関係で、私もよくご相伴に預かった。もっぱら昼のランチであったが、私は名物の長崎ちゃんぽんよりよも皿うどんのほうが好きであった。でも、偶にはあのボリュームたっぷりの茶わん蒸しも食べたくなる。

酒を止めていたS先生とは異なり、友人のH先生はお酒好きであったので、ときおりH先生に同行して、夜の部で辛子レンコンと麦焼酎を頂くこともあった。あの頃は、居酒屋で飲むよりも料理割烹とか、蕎麦屋などで一杯やることが多かったと記憶している。

正直言って、昼の部のランチよりも、夜の部の酒の肴としての料理のほうが若干美味しかったと思う。S先生が亡くなり、H先生も亡くなってしまい、私はここ数年ご無沙汰の店でもあった。

それだけに、この閉店は残念である。張り紙では、どこかでの再開を目指すと記してあったので、一応期待はしている。でも、ここ数年の飲食業界の厳しい事情も多少は知っているので、いささか悲観的でもある。

飲食店にとって、昼のランチよりも夜のコースが重要な稼ぎ頭である。酒がほとんど出ない昼とは異なり、夜はビールだけでなく、日本酒、焼酎、ワインなどの酒が売れる。

酒はどの店にとっても極めて収益性の高い商品である。近年老舗の居酒屋、割烹料理店などの閉店が相次ぐ理由の一つは、この酒の売り上げが減っているからなのは、知る人ぞ知る事実である。

私が皮肉に思うのは、酒の味自体は以前よりも向上しているからだ、バブルの頃やそれ以前は味の曖昧な高級酒が幅を利かせていたものだが、酒のみが本当の酒の旨さを知ってしまい、値段が高いだけの酒が消えていった。

ところが、本当に美味しい酒は、値段も高い。それに納得しての店飲みのはずだったのだが、酒税法の改正によりいい酒の販売箇所が飛躍的に増えたことが、飲食店の酒の売り上げに微妙に影響した。

良い酒を、自宅で料理した酒の肴と共に飲む人たちが増えた。特に友人同士での飲食を友人宅でするようになると、わざわざ高い飲食店に足を運ばなくなっていった。

そのせいで、いい酒を出す美味しい飲み屋、割烹料理店、蕎麦屋の客層が、いっそう高齢化が進んでしまった。若い客層へのバトンタッチが上手くいかなくなった。

近年、老舗の名店の閉店が相次ぐ理由の一つが、これだと思うのです。日本の伝統ともいえる老舗の名店が次第に無くなっていくのは寂しい限り。残酷な現実だと思いますが、高齢化と少子化が進む日本では、社会の変化に対応できない老舗は、次第に数を減らしていくと予想しております。

コメント
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