ヌマンタの書斎

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国鉄分割民営化

2020-01-30 12:28:00 | 社会・政治・一般

些か旧聞になるが、昨年11月に中曽根康弘・元内閣総理大臣が101歳で亡くなった。

かつて金丸信が「一番嫌いな奴」だと放言したようだが、実を言えば私も嫌いだった。個人的な面識もないし、なにか問題を抱えたことがある訳でもない。ただ、あのなんとなく人を見下す姿勢が嫌いだった。

もっと言えば、私は中曽根が見下す側に居た人間であったからだと思っている。たしかにあの頃、昭和50年代に私の周囲に居て親しくしていたのは、労働組合の人たちとか、博徒の人たちとか、エリートが毛嫌いする人たちばかりであった。

見下すのは勝手だが、見下された側にも意地はある。私自身、まだ当時は勉学に興味がなく、成績はどうでもよいと思っていたので、中曽根のようなエリート風情に見下されるのは不愉快であった。世の中、エリートだけで動かせると思うなよ。当時は本気でそう思っていた。多分、周囲の大人たちの影響だろう。

そんな私でも、この点だけは認めている。偉業だとさえ思っている。それが国鉄の分割民営化である。

朝日新聞などマスコミ様は報じていなかったが、当時国鉄の労働組合の横暴ぶりはひどかった。勤務中に風呂に入るのは労働者の権利だと喚き立て、駅長などの管理職を集団でつるし上げ(要はリンチだ)、気に食わないと電車を止めた。

私の周りに居た大人たちは、教職員組合の人を別にすれば、金属労協や土建組合といった人たちが中心だったので、本来は国労の味方であるはずであった。しかし、国労の横暴ぶりはあまりにひどく、とても共感できるものではなかったと思う。

だからこそ、中曽根首相の打ちだした国鉄の分割民営化は大衆から支持された。この分割民営化の真の目的は、国労潰しであることぐらいは子供でも分かった。当時、第二政党であった日本社会党や強固な支持者を持つ日本共産党の票田である国労を潰すことが目的なのは確かであった。

だから朝日新聞を始めとして新聞、TVは国鉄分割民営化反対を掲げて大騒ぎしていた。彼らは敢えて無視していた。国民の多くが、国労の横暴に批判的であることを。だからこそ歴史的な大敗をした衆議院選挙の結果に唖然茫然とした。

この事件以降、日本の政治に大きな影響を与えていた革新と称された左派は、大きく二つに分裂する。すなわち頑なにこれまでの主張を守り、依怙地になった少数派と、失望して政治に関心を失した多数派である。

議会でも、組合でも少数派と化した左派たちは、現実を直視できずに過去の栄光にすがり、ますます支援者が離れて行った。その惨状に「我は正しい」と増長した自民党は、強固な政治基盤を固めるが、その驕りが後のリクルート事件などの温床となり、バブル経済を引き起こす。

私の政治家に対する評価は、何を言ったかではなく、何をしたかで決まる。中曽根康弘は政治家として好きではないが、当時の革新勢力の大きな基盤であった国鉄労働組合を潰したことだけは高く評価している。

率直に言って、功罪の鼎を問われれば、罪の方が多いと思うが、それでも功を無視するのは良くないと思うので記した次第。いずれ機会をみて、罪のほうも書こうと思っております。

しかし、まァ101歳だったのか。タフな爺さんであったのは確かですね。

コメント
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