第二次世界大戦以降、規模の大きな戦争は「朝鮮戦争」「ヴェトナム戦争」「アフガン戦争」それに「湾岸戦争」くらいである。
その十数倍で規模の小さな戦争は起きている。そのなかでも厄介なのは、政治的信条をベースにするテロである。国家としてではなく、政治的信条を同じくする同士で集まった集団が引き起こす小規模な武力攻撃。
このテロが厄介なのは、大衆のなかに溶け込んでいるからだ。つまり、見つけ出すのは非常に難しい。また見つけたとしても、テロリスト集団への攻撃は、市街地戦に成りがちで、関係のない無辜の市民を巻き込むことが多い。
国家対国家の戦争と異なり、国家対テロリストは、両者の規模が違い過ぎて従来の近代的な国家戦争とは異なる戦い方が必要になる。アメリカがそのことに気が付いたのは、ヴェトナム戦争の頃なのだが、はっきり言うとアメリカの対応は鈍かった。
むしろ対応が速かったのは、イギリスやフランス、ドイツ、そしてイスラエルといった国々である。いずれもイスラム社会を寝床とする反欧米思想に凝り固まった宗教的狂信者であるテロリストの攻撃に苦しんでいたからだ。
対テロリストとの戦いに必要なのは大規模な軍隊ではなく、少数精鋭の特殊部隊である。巨大な官僚組織に統治された軍隊ではなく、状況の変化に素早く対応できる臨機応変な小さな組織こそが対テロには一番役に立つ。
おかしなことに軍事大国であればあるほど、この新しい戦争への対応が遅れた。アメリカのグリーンベレーやシールズ、ソ連のスペツナヅなどを思い浮かべた方は多いと思うが、現実には20世紀後半のテロとの戦いでは、アメリカもソ連も相当に苦戦している。
その原因を一言で云えば、大は小を兼ねないからだ。アメリカもソ連も、軍隊及び諜報組織が大き過ぎて、官僚的な会議の積み重ねと、頑なな予算運用が現場の需要に合わず、能力はあっても、その力を十分発揮できなかった。
皮肉なことに、冷戦が終結して軍の大規模なリストラを進めた結果、アメリカもロシアもようやく対テロ組織がまともに機能するようになったのが実態であろう。
そんな変りつつあるアメリカ及びロシアの軍隊の変化を描いたのが、表題の漫画である。アメリカ兵はウサギに、ロシア兵はクマ、イギリス兵はネズミ、フランスはブタなど動物に擬態化した兵士を描いた戦争漫画である。
かなり悲惨な戦いなのだが、動物で戦争を描いているせいか、ある種のコミカルささえ漂う作品になっている。困ったことに、日本では戦争や軍隊をリアルに描いたり、論じたりするとこが教育の現場では出来ない。
そのため、大きく変わった対テロリズムの実態を知るうえで、この漫画はけっこう役に立ちます。前作で主役であったパッキーやポタたちは、控え目な立場に変り、クマのミーシャ君が主役級の立場に置かれているのが面白かった。
ヴェトナム戦争後の対テロ戦争の流れを学ぶのにも良いと思うので、興味がありましたら是非ご一読あれ。