私は意地が悪い。
以前、時流に乗って書かれた本を、十数年たってから読み直して検証する意地悪オジサンである。
今回、まな板に載せたのは、カーター政権の安全保障担当補佐官であったZ・ブレジンスキー氏の書である。刊行当初のタイトルは「ブレジンスキーの世界はこう動く ~21世紀の地政戦略ゲーム」でした。
既に故人であり、刊行されて20年以上たつ書を取り上げる私も相当に意地悪だと思う。また予め書いておくと、私はカーター政権時代のアメリカの外交には、かなり否定的である。
たしか2000年頃に図書館で借りて読んだ記憶があるので、一応再読なのだが、実はまったく記憶に残っていなかった。さすがに読んでいるうちに、これどこかで読んだなと思いだす程度の内容であった。
にもかかわらず、私が感心したのは、ブレジンスキー氏の予測が概要では概ね合っていると判じて、そう間違いではないことだ。ただ読み違えていたのは、ロシアが資源大国として復活したことだろう。
それでも大筋としては、その予測は当たっていると私は思う。興味深かったのは、ロシアと西欧を分けるポイントとしてウクライナを挙げていたことだ。この視点は私にはなかった。またもう一つ、中央アジアの旧ソ連の衛星国をユーラシア・バルカンと称して紛争の危険地帯だと強く指摘していることだ。
いずれも、日本のマスコミがほとんど無視している地域だが、21世紀を考える上では重要は指標になると、改めて再確認できた。
ブレジンスキー氏といえば「ひ弱な花、日本」の著者として知られている。日本人としては、ちょっとプライドが傷つくが、ある意味真実だとも認めざるを得ない。その視点は、この著作でも代わっていないが、それでもアメリカの外交戦略の重要指標として、ドイツと日本を挙げている。それなりに評価しているようだが、肝心の日本人自身はその期待に応えられるかどうか、私は疑問だ。
最後に最も私が感心したのは、シナが対等の覇権国としてアメリカとの同盟を望んでいるとの指摘であった。アメリカとの友好関係のあるうちに、台湾を吸収合併するのが目的だとの指摘には、ちょっと感心した。幸い、アメリカはシナを対等だとは認めてないので、今のところ実現はしていない。
私が最初に読んだのは、多分30代の頃だと思うが、当時はそれほど感銘を受けなかった。どうやら私は目は、かなりの節穴のようだと認めざるを得ない。政治、時事関係の本で、再読して評価が高まったのは滅多にない。その意味でも、もう一度精読してみたいと思っています。