おそらくですが、誤解されていることが多いのがレアステーキだと思う。
私は20代の頃までレアステーキとは、高温で表面を焼いて、中身は赤身の状態、つまり半生の肉のことだと思っていた。それは違うと教えてくれたのが、S事務所で私が決算申告を担当していたレストランのオーナーだった。
実はレアステーキを美味しく焼き上げるのは時間がかかる。ウェルダンで焼き上げるよりも長い時間が必要になる。というのは、赤身の部分に十分な熱を通すために低温でじっくり焼き上げる必要があるからだ。そして、これが難しい。
レストランのオーナー曰く、日本の飲食店で出すレアステーキは、そのほとんどが単なる生焼けで、本当のレアステーキではないそうだ。実際、私もその店でレアステーキを頂いたことがあるのだが、注文してから出るまで約一時間はかかった。
強火で焼くのは最初だけで、あとは焼かずにオーブンの上で寝かせておくそうだ。ちなみにオーブンの上はけっこう熱い。そして時々肉を指で押してみて、スッ~と肉質が変わったのを感じたらアルミホイルで覆っておき、その間に付け合わせのジャガイモやニンジンなどを用意して客に出すそうだ。
私がメモをとっていたらオーナーは苦笑しながら「無理、無理、家庭では出来ないよ。第一こんな大型のオーブンはないだろう」と言われた。たしかにない、というかこんなデカいガスオーブンなど家庭で設置できるわけがない。
以来、私は家でステーキを焼くことは諦めている。コリアのプルコギのように薄切りした牛肉ならば家庭でも焼ける。しかし肉が分厚いステーキは無理だ。実際、私はこの店で食べたレアステーキの味が鮮明すぎて、ほかの店では納得できなくなってしまった。そして、この店が閉店してしまった。
なので、たいがいはウェルダン、もしくはミディアムで焼き加減をお願いしている。
実は東京では最上のレアステーキを出すお店として、四谷のフランス料理店である北島亭があるのだが、私は行ったことがない。漫画家のよしながふみさんの記述だとすごく美味しそうなのだが、北島シェフも高齢だし、行くか行くまいか迷っています。
ダチョウ倶楽部の寺門氏は絶賛しているけど、脂っぽくて嫌との評もあるので、自分の舌で確かめたいとは思うのですが、カロリーが怖い。なにせ大量の脂に浮かべてステーキを焼くという、物凄いこだわりの調理法らしいですから。