先月のことですが、世界的に著名なミュージシャンである坂本龍一氏の死去が伝えられました。
教授(プロフェッサー)の異名のわりに見識に歪みがある方ではありましたが、音楽的な才能は確かな人だったと思います。以下の話は、酒の席での税理士同士の雑談であり、いずれの方も業務上の関りがない、つまり噂話の延長に過ぎません。
坂本氏は二人の女性と結婚し、最後を看取った女性とは事実婚、つまり未入籍であったようです。そしてそれぞれに子供がいて、しかも海外在住の方もいるようなので、この相続は非常にややこしいことになるのは間違いないでしょう。
坂本氏がどの程度の遺産を残したのかは知りませんが、その遺産分けは相当に揉める可能性は高いはずです。ただ、この方、日本国籍といえどもアメリカ在住歴が長く、子供たちの中にも海外在住者がいるようです。
日本では相続には民法上の法定相続分が大きな制約になりますが、ほとんどの国にはそのような制度はありません。理由は簡単で、そもそも国家がその国民個人の法的存在は認めても、その家族構成までは保証していないからです。
世界では日本と台湾、韓国だけが国家が家族構成を記録しています。これがないと、法定相続といった概念は意味をなしません。世界中の大半の国は、先進国では遺言書、それ以外では一族の長老などが相続に関わってくる民事上の行為となります。
アメリカでの生活が長い坂本氏の場合はどうなのでしょう。生前に弁護士などとの付き合いがあれば、遺言書が作られている可能性があります。しかし、ない場合はいささか厄介なことになるでしょう。
なにせ日本の民法は、内縁の配偶者の法的な権利を認めていません。税法も同様です。30年近く坂本事務所のスタッフとして、また内縁の妻として坂本氏を支えてきた女性の権利は、事実上無視されています。
ただ、坂本氏の相続はアメリカ主体なのか、それとも日本主体なのかで大きく変わってきます。そのあたりの事情がまったく公表されていないので、酒の場でのくだらない雑談にしかなりません。
実は日本の税法および民法は、海外の方が日本で暮らし、家族関係を構成した場合についての取り扱いは、まだまだ未整備な状態です。麻生政権の時に少し議題に上がっただけ。未だに世帯中心の民法にこだわっているので、時代の趨勢に合わなくなっています。
少し脱線しますが、現在も二重国籍を認めていません。私の知るかぎりでは、多国籍容認が世界の流れだと思います。ただし、国政参政権や徴兵、公民権などに一定の制約を加えるのが普通です。日本は島国であり、海外の人との関わり方に距離を置きたがりますが、人口減少し衰退する将来のことを考えれば、そろそろ多国籍容認の法整備を考えたほうが良いと考えています。
これこそ、本当に厄介な問題なのですけどね。