昨今、女性ソロキャンパー(何、この用語?)に関しての議論をネット上で目にする。
以前にも書いたが、私にとってキャンプとは山から山へ渡り歩くための手段に過ぎない。だから自然を満喫するとか、都会の喧騒を逃れての憩いとか言われると、違和感ありありで共感できずにいる。
どうも問題の発端は、独りでキャンプを楽しみにきた女性に執拗にまとわりつく男性がいることらしい。それを嫌がる女性側と、親切に声掛けして何が悪いと開き直る男性側の対立が問題らしい。
正直言うと、「はぁ~」とため息でちゃう。そしてくだらねぇと吐き捨てたくなる。
そもそもひ弱な人間が自然の中で生き延びるのは難しい。たとえ男性であっても単独での登山は、あまり推奨できるものではない。。山の中で暮らすことの不便さ、危なさは街中とは別次元である。
人が出す残飯目当てに猪やクマが出没するのは定番だ。また平地ではただの大雨も、山の中では恐ろしい豪雨となることも珍しくない。都会にいて強風に怯えることは稀だが、山の中ならば身体が浮き上がるほどの突風だって実際にある。
人間よりも体の小さな犬や猿だって実は怖い生き物だ。野犬に集団で襲われたら武器を持たぬ人間なんぞ、ただの餌でしかない。小柄な猿でさえ、その腕力は成人男性を上回るし、噛みついたり引っかかれたりしたら、危険なばい菌に感染する怖さもある。
そして何よりも恐ろしいのは、狡猾で卑劣な人間だ。私自身、それとは知らずに泊まったキャンプ場そばの山小屋で、女性を狙った殺人事件が起きていたこともある。悪名高き秩父の富士見平小屋の事件である。
この時は22歳のOLさんが被害に遭っているが、他にも被害者はいたらしい。単独での女性登山者は危ないというのも、決して誇張とは言えない。
実際、この年、私たちは女性だけのパーティを組ませて、秩父に上る企画を立てたが、反対も多く、結局サブリーダーに男性を一人付け、そのうえで同じルートを追うように一パーティ、交差するパーティを二つ付けて合宿をしている。
その翌年には女性だけのパーティで縦走も敢行している。実は当時の登山界では、重い荷物を持てるものが偉いといった脳みそ筋肉的な発想が蔓延しており、必然的に背筋力の劣る、つまり重い荷物を持てない女性を軽くみる風潮があった。
でも実際に女性と共に登山をしていると、確かに筋肉量の少なさからくる男女差はある。特に岩稜帯での行動速度に差が付くのは確かだった。しかし、環境の激変に対するストレス耐性などは女性がはるかに勝る。同じ苦痛ならば、男のほうが根を上げるのは早く、むしろ女性は体を故障するまで耐えてしまう。
決して男性優位とは言えないと私たちは思っていた。だからこそ女性だけのパーティを成功させて、実績を作りたかった。そんな学生時代を送っていた私であるが、正直女性だけの単独行動は、やはりお勧めできかねる。いや、男性だってあまり勧めたくない。
山は人が精いっぱい努力し、皆で力を合わせねば生きることさえ許してくれない過酷な世界だと認識しているからだ。
ただ、車でキャンプ場そばまで行き、椅子や机を持ち込んでのキャンプは、別物というか私の知るキャンプではないので、そこまで厳しくある必要はないと常識的に考える。だから女性のソロ・キャンプを楽しむ人が出てくるのも理解は出来る。
同時に、そんな独り身の女性に、下心を隠して近づきたがる男性も続発するだろうとも予想できる。善意を前面に出しているだけに、いささか厄介なお節介にも思える。
正直、キャンプに限らず普通の旅行でも独り身の女性は、女好きの男性のターゲットになりがちだ。さぞや鬱っとうしいだろうと思う。だって、声をかけてくる男性の多くは、日ごろ女性との付き合いの乏しい連中だろうから。
女性とお話がしたいのならば、キャバクラやスナックに行けよと言いたくなる。多分、多少は登山歴、キャンプ歴があり、マウントを取れると思ってのキャンプ場でのナンパなのでしょうけどね。
キャンプを明日の登山のための準備と休憩だと捉えていた私には、いささかアホらしい話題ですよ。