アメリカの往年の名レスラー、アイアンシークが亡くなった。
正直言って、来日数も多くなく、あまり印象に残っていないが、知る人ぞ知る実力派。
イランはテヘラン生まれのペルシャ人であり、本名はコシロ・バジリ。伝説的なイラン・レスリングの名手であったとされる。その正統派のレスリング技術は、カール・ゴッチのお墨付きである。
イランでホメイニ師が革命を起こしてからアメリカに亡命し、アメリカの敵であるイスラム系プロレスラーとして悪役を演じて大人気となった。似たようなギミックのプロレスラーとして、ザ・シークが有名だが、本格的なレスリングの名手であるアイアンシークのほうが格上だ。
リングの上ではアンチ・アメリカを叫ぶイスラム系レスラーとして大活躍していたが、おそらく本人はあまり好んではいなかったと思う。どちらかといえば真面目なペルシャ人であり、プロレスを演じるよりも、裏方として若手レスラーを鍛えるコーチ役を好んでいたらしい。
ただ悪役レスラーとしての人気は凄まじく、映画まで製作されるほどであった。まさに売れっ子レスラーであったため、日本のプロレス界との付き合いは少ない。ただ実力派であることは、バーン・ガニアを始め、多くのプロレスラーから伝えられており、その意味で幻の強豪扱いであった。
そして残念なことに、数十年ぶりにUWFインターから招聘されたときは既に50代を過ぎており、全盛期にはほど遠かった。彼の全盛期の本物の強さを知るのは、当時アメリカを巡業していた日本人レスラーだけであった。だからこそ招聘したのだろうけど、遅きに失したと思う。
80年代に新日本プロレスが、崩壊したソ連からロシア人アマレスの強豪たちを招聘して一大ブームを巻き起こした。ステロイドで筋肉を膨らませたプロレスラーでは相手にならず、当時ケガで出場できなかったスティーブ・ウィリアムスが本気で悔しがり、次の回では本格的なレスリングが出来る選手を連れてきて一矢を報いた。
その際、連れてきたかった一人がアイアンシークことコシロ・バジリであったらしい。残念ながら契約の関係でダメだったが、この頃は全盛期の強さを誇っていたので、ソ連のアマレスラーとの試合は是非とも見たかったが、夢に終わってしまった。実に残念です。