ヌマンタの書斎

読書ブログが基本ですが、時事問題やら食事やら雑食性の記事を書いています。

鳩山政権の行方

2009-11-20 12:26:00 | 社会・政治・一般
期待よりも不安のほうが大きいが、それでも長年の自民党政治の歪みを正す絶好の機会だとも思っている。

ただ、どうも最近不安を禁じえない。このままだと短命政権に終わると私は予想している。

戦後、親米路線を明確に打ち出した政権、例えば中曽根、小泉は長期政権を実現している。しかし、どの政党であったとしても反米を掲げた政権が長持ちしたことはない。ほとんどそのような指摘をする人は少ないが、これは戦後の日本のおかれた現状からして当然のことでもある。

日本は独立国である。それは間違いではないが、私の目には不自然に見える。国内に外国の軍事基地がある国はそう多くはない。あるとしたら、その外国の保護下にある国だと考えるべきだ。

ましてや、首都をとりまくように外国の軍事基地が配備されているなんて、あきらかに怪しいと思う。要するに一朝ことがあったら、あっという間に外国の軍隊に首都を包囲される。

歴史的な感覚で、この現状をみれば日本は形式的に独立国であったとしても、実質はアメリカの従属下にあると判断しても、そう間違いではないと思う。少なくとも軍事的に自立しているわけではない。

だからこそ戦後の日本においては反米的姿勢をみせる政権はすべて短命に終わった。具体例を挙げれば、まずは田中角栄だ。この人の場合、日本独自のエネルギー戦略の追求が、アメリカという虎の尾を踏んだと私はみている。

さらには細川内閣だ。対等の日米関係を求めたこの非自民政権は、10ヶ月持たずに謎の政権放り出しを行った。私は未だにこの政権放り出しの真の理由を知らないが、それでも反米姿勢が背景にあったと疑っている。

そして橋本内閣。この言語明瞭意味不明の政治家が、日本的言い回しでアメリカ国債の売却を匂わせた途端に、内閣退陣となった。その後のことだが、小渕の跡をドサクサまぐれに継いだ森首相は訪米して最初にアメリカ大統領に約束したのが、アメリカ国債を売らないことだとの話を聞いたことがある。

ミステリーやスパイ小説の好きな私だが、これらの内閣退陣がアメリカ・CIAの策謀の結果だとは思っていない。むしろ霞ヶ関や永田町の過剰反応による倒閣運動の結果だと勘ぐっている。

そこで鳩山内閣である。おそらくは悪意や敵意はないだろうが、如何せん理想が優先しすぎて現実がみえてない。岡田外相が最たるものだが、鳩山氏自身にも「日米対等」という虚像に目を眩まされている感が強い。

アメリカとて永遠の覇権国ではありえない。いつかは凋落するであろう。だが、それはまだ先の話だ。軍事的にも経済的にもアメリカから離反すべき時ではない。

自国の防衛戦略も描けない国とは、自分の足で立つことも出来ないと同意義だ。アメリカからの自立以前に、まず普通の国であることだ。スパイ天国の汚名を晴らすためにも情報管理の法制度は必要だし、緊急時における柔軟な危機管理の法制度も構築する必要がある。

アメリカに寄りかかり、すがり付いて碌を食みながら、対等面するのは醜悪に過ぎる。まずは日本の現状を冷静に自覚してみることだ。現状では反米は甘えに過ぎない。

屈辱に思うだろうが、それが厳然たる現実であり、むしろアメリカの堂々たる同盟国であることを宣言してみろ。それが出来たら民主党政権は長期政権足りうるだろう。そして現在、内閣はそれとは完全に逆行している。

このままだと、どこぞから漏れたスキャンダルで鳩山内閣総崩れになると思うね。
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プロレスってさ ダニー・ホッジ

2009-11-19 11:55:00 | スポーツ
固く握り締めた拳で殴られると痛い。

子供の頃のクラスメイトの一人にAがいた。彼は幼少時に小児麻痺を経験していたせいで、動きが少しぎこちなかった。スムーズに身体を動かすことが苦手で、関節ごとにカクッ、カクッと身体を動かす。そのせいで不器用に見えてしまう。

しかし、実際には運動神経は良く、大概のスポーツ、遊びを達者にこなした。つまり日常生活にはまったく支障がない程度なのだが、それでも見た目には、その動きがヘンに見えてしまう。子供って奴は、けっこう残酷なもので、このような子供は苛めの対象にされることが少なくない。

しかし、Aが苛められることはなく、むしろその逆だったかもしれない。友達が沢山いたせいもあるが、なによりもAのパンチは痛かった。転校して間もない頃だが、秋祭りの神輿担ぎの最中に子供同士で揉めたことがある。

私とAは同じ側だったのだが、乱戦の最中たまたまAのパンチを受けてしまった。そのあまりの痛さに思わず座り込んでしまった。Aは邪気なく「悪い、間違えた」と言うので、その場は我慢した。でも、ちょっぴり頭きた。

頭にきたのは確かだが、あのパンチの痛さは並ではなかった。正直少し怯えたくらいの痛さであった。転校したてで良くみんなのことが分っていなかったので、いろいろ聞いてみると、Aのパンチの秘訣は拳の堅さだと言う。

小児麻痺から回復する過程で、Aは相当に苦労したらしい。その際に握力が異常に鍛えられ、拳を握り締めることで、パンチ力が高まったらしい。

この時初めて、パンチの痛さは拳を握りこむ強さに由来すると知った。

プロレスの世界で、握力の強さといったら「鉄の爪」フリッツ・フォン・エリックが有名だが、もう一人隠れた強豪がいる。それが「人間ジューサー」ダニー・ホッジだった。

ちなみに人間ジューサーのあだ名は、彼が握力だけでリンゴを潰してジュースを作るパフォーマンスに由来する。ちょっと間抜けなあだ名に思えるが、実際に見ると驚きますぜ。ほんの一瞬でリンゴを握りつぶし、たちまちのうちに十数個のリンゴを潰してしまう。

わずか数分のパフォーマンスだったが、あれは容易には真似できない。あの握力で拳を握り込み、殴られたら凄まじく痛いと思う。しかもホッジはアマチュア・ボクシングの全米チャンピオンの経歴を持つ。

プロレスのリングでは、一応パンチは禁止技なのだが、追い詰められた時に見せるホッジのパンチは凄まじい威力をもっていた。あっという間に試合を逆転させてしまう。

実はホッジはプロレスラーとしては小柄な部類に入る。身長は1メートル70台半ばだと思う。体重だって90キロ台のジュニア・ヘビー級なのだ。しかし、強さはヘビー級であった。

当時、無敵のチャンピオンとして名高かったルー・テーズが「ホッジがあと10キロ重かったら、彼がチャンピオンだと」断言するほどであった。アマレスの強豪でもあり、怪我さえなければオリンピックでメダル間違いなしと謳われたホッジは、私の知る限りで最強のジュニア・ヘビー級プロレスラーであった。

日本では国際プロレスのリングに上がっていたので、あまりメジャーな存在ではないのが残念だ。私がプロレスに夢中な頃は、既に全盛期を過ぎていた。しかし、小柄な身体を俊敏に活かしたレスリングの技術の高さと、時折みせるボクサーばりの鋭いジャブは、十二分にその強さを感じさせた。

ただ、私が記憶するホッジは、いつも仏頂面だった。笑顔を一度もみたことがない。ちょっとハリソン・フォードに似ているハンサムな顔つきなのだが、クソ真面目を絵に描いたようなオジサンだった。性格も同様であったらしく、そのせいでプロレス界を引退するのも早かったと聞いた。

妙なパフォーマンスばかりが目立つ昨今のプロレスからは程遠い、硬骨でクソ真面目なプロレスラー。それがダニー・ホッジであった。インタビューで、「レスリングの素晴らしさを知って欲しくて、プロレスをやっています」と背筋を伸ばして真面目に答えていた姿が懐かしい。こんな普通に常識人のレスラーはその後出ていないことを思うと、少し寂しい気がします。
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世界を見る目が変わる50の事実 ジェシカ・ウィリアムス

2009-11-18 12:11:00 | 
私は知識という名の神の信者だ。

知識は人を変えると信じている。もっとも、その知識は必ずしも人を幸せにするとは限らない。知識というものは、諸刃の刃で使い方次第で、人を傷つけもするし、自分をも傷つける。

また、知識はその量が多いことが有益であるとは限らない。限られた知識を最大限に活用する知恵あっての知識でもある。知識はそれだけでは有用ではなく、その使われ方が問われるものだ。

知識というものは、それを知っているだけでは役に立たないことが多い。だが、知ったことを契機として、人に新たな道を指し示す先導の役割を果たすことは良くある。

知ったが故に心が動かされ、不正を糾す怒りを呼び起こし、社会を変える契機となることは決して珍しくない。その意味で、表題の本は大変に有意義な企画だと思う。

だが、事実誤認というか、認識の底の浅さがあるのが残念だ。またイギリス人が書いた本だけに、イギリスの過去の悪行については、知ってか知らずにか無視していることも、私としては不愉快だ。

困ったことに、この日本版を刊行するにあたって、どうやら日本人編集者の意向が付け加えられたようで、それがまた偏見と自虐が漂うものであることが、どうも鼻につく。

この本のなかで借金のために奴隷化された人々が世界に2000万人いると書かれているが、これを単純に奴隷だと言い切って良いのか疑問だ。騙された借金なら問題だろうが、自ら望んだ借金の返済のため過酷な労働条件を受け入れたケースが相当に含まれていることは、容易に想像がつく。それって奴隷か?

また日本には借金で縛られたフィリピン人女性が売春に従事していると書き記しているが、いったい何時の話だ?過去にいたことは確かだと思うが、今はほとんどいない。借金しても日本で働きたがるフィリピーナなら多数いるが、奴隷とは程遠く、むしろ日本人が振り回されているのが実情だろう。多分、頭でっかちの善良なる日本人の助言によるものだろうが、世間知らずもほどほどにして欲しい。

マスコミの世界には、現場を知らぬ癖に、知ったかぶりをして善意を振りかざす輩が、少なからず横行している事実を図らずも証明している。みっともない!

とはいえ、そのような一方的な善意に基づく事実誤認は一部に留まると思う。現実社会のあり方を、改めて捉えなおす契機には、十分役立つ本だとも思うので、機会がありましたら一読して損はないと思います。
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相続はねぇ その七

2009-11-17 17:03:00 | 経済・金融・税制
厚生労働省の発表したデーターによると、平成18年の死亡者数は 108万4450人です。また、国税庁の発表したデーターによると、平成18年の相続税の申告件数は 4万5322人であり、申告割合は 4,2%となります。

つまり相続税の申告が必要な相続は、100人に4人程度なのです。これは地域差があって東京、大阪など土地の時価が高い地域だと、だいたい7%前後ですが、土地が安い地方だと2%程度で平均すると4%になるようです。

国土の7割が山岳地帯であり、人口が都市部に集中しがちなので、致し方ない傾向だと思います。ただ、相続財産の大半が土地ですと、その土地に居住している場合に不都合が生じます。相続税の納税のため、自分の住む土地を売るわけにはいきません。

そこで相続人等が引き続き住む土地については、その評価を2割程度(ただし面積制限あり)にして、相続税の負担軽減をしています。それ以外に基礎控除が5千万円プラス法定相続人一人につき1千万円あり、相続の大半が相続税とは無縁でいられるわけです。

日本は世界でも飛びぬけて相続税が高いことで知られていますが、それは資産家に対してだけで、一般庶民についてならば、むしろ相続税は安いといっていいでしょう。

そこに財務省は目をつけています。だいぶ前から国家の歳入の仕方を従来の直接税(法人税や所得税)から間接税(消費税)へのシフトを始めています。これに加えて、相続税を薄く広く課税することを目指しています。

要するに非課税の枠を減らす一方で、税率を引き下げて相続税の納税者を増やして税収を確保する意向をもっているようです。目標は相続のうち2割程度は、税が生じるようにすることらしいです。

もう一つの変更は、相続税の課税方式を個別にすることです。

現行の相続税法は、相続財産全体に対して課税して、各相続人の実際取得分に対して納付税額を按分します。この方法は納税を連帯納付としていますが、これが社会の実情に合わなくなってきたことが問題でした。

相続争いは勿論、海外にいる相続人、核家族化により顔も知らぬ他人の親族など、従来の家族単位での相続が難しくなっているのです。そこで個別に取得した相続財産について課税する方法に変えようと財務省は考えているようです。

実際、原案は既に作られ昨年末に国会に出される予定でした。ところが諸事情によりこの原案は国会に出されず、次の提出の機会を伺っているようです。

さらに長年政権を担ってきた自民党が下野して、万年野党だった民主党が政権を取ったため、税制審議も白紙からのスタートを余儀なくされており、当面大幅な改正は先送りとなりそうです。

とはいえ、相続については社会が変化している以上、民法、税法ともに改正が必要なのは事実です。あまり宣伝されていませんが、民法上の遺留分については既に一部改正がされています。税法もいずれ改正されるはず。

7回に分けて相続について書いてきましたが、まだまだ書き足りないことは数多あります。でも、守秘義務から書けないこともあり、忸怩たるものもあります。いずれにせよ、長文にお付き合い頂きありがとうございました。
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相続はねぇ その六

2009-11-16 12:32:00 | 経済・金融・税制
本のブログなのに、脱線続きで申し訳ありませんが、もう少しだけ続きます。

相続財産には不動産や預貯金、有価証券、動産などの他に、未払い金やローンといった負債も含まれます。私はマイナスの相続財産と呼んでいます。

注意しなければいけないのは、これらの負債、とりわけ金融機関からの借入は、法定相続人全体が負うべきものとなっています。ですから、誰が借金を負担するのかを協議分割書などに明示しておかないと困ったことになります。

マイナスの相続財産の取得は、債務引受といいます。これには「免責的債務引受」と「重畳的債務引受」の二種類があります。後者は連帯債務の引受になりますから、法定相続人全体で債務を引き受けることを意味します。

たとえば賃貸不動産を建築するために借りたローンがある場合、その賃貸不動産を相続により取得した相続人が、そのローンをも引き受けるのが筋だと思います。このような引受を「免責的債務引受」と言いますが、これには債権者(銀行等貸主)の承認が必要です。

その不動産に担保価値が十分あれば良いのですが、そうでない場合債権者が不安に感じて免責的債務引受を拒否する場合があります。新たな担保を提供するなりして信用力を増さないと、結果的に他の相続人にも債務義務が引き継がれることになるのです。

土地神話が崩壊した今日、遺産よりも負債のほうが巨額な相続もあるのも現実です。

そのような場合に備えて、「相続の放棄」という手段があります。ただし、これは相続の開始を知った日から三ヶ月以内に裁判所に申請しなければなりません。

従いまして、相続が発生した場合には、債務の存在がないかどうかを確認しておく必要があります。多くの場合、ローンを支払っていることを示す証拠書類が残されていますから、領収証や送金記録を探してみることです。

ただ、世の中には性質の悪い連中がいるものです。相続が開始されてから半年以上たって(つまり相続の放棄の期限を過ぎている)から、いきなり現われて借金を返せと喚かれたら、誰でもパニックになろうってものです。

この連中(たいがいが街金や闇金ですね)は交渉を有利に運ぶため、相手を動揺させて自分のペースで進める策を弄します。もう、相続の放棄は出来ないのだから、お前ら相続人が借金を払う義務があると声高に主張してくるのです。

これは嘘ではないので、多くの方がこれに引っかかって泣かされたものでした。しかし、現在は違います。

このような問題に対して裁判所が新しい見解を出し、債務の存在を知った日から三ヶ月以内の相続放棄を認める判決を下しています。ただし、借金がなくなるわけではないく、あくまで相続の放棄ですから、其の点は誤解なきように。

一週間ちかくかけて、長々と相続の話をしてきましたが、次回が最後です。今後の相続についてお話したいと思います。
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