入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

       ’16年「春」 (5)

2016年03月04日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

    赤坂狭

  以前なら、これだけ暖かくなると田圃に出て働く人の姿が見え、人の声も聞こえてきたものだ。しかし、今や農業の機械化が進む中、長年続いてきた人力に頼る農業は、この何十年かで一変した。もう、人々が横一斉に並んで田植をしたり、腰をかがめて一株ひとかぶ稲を刈る姿は目にしない。田圃の畔(あぜ)で休憩時に茶を飲みながら大声で話す声や、賑やかな笑い声が聞こえてくるような、かつての典型的な日本の農業風景は消えてしまったと言ってもいい。
 これまでの農業は、過酷なな肉体労働だった。だから、過ぎた時代の農村の暮らしや風景を「長閑」などと言っては、当時を体験した人たちからは文句を言われるられるかも分からない。それに、われわれの文明を発展させてきた原動力は、突き詰めれば結局、人の暮らしからあらゆる分野にまで効率性と、利便性を追求した結果で、農業の機械化もそういう流れから例外ではなかった。
 その文明がどこまで進んでいったらよいかは、誰にも分からない。しかしそれを見切って、そういう覚悟をした上で、ひと昔前の農業で苦労しようとしている若者たちがまだいる。煙で目を赤くして、薪で風呂を焚こうとする子供たちが今もいる。
 そういう人たちをどう評価するかは、まだ分からない。成功するかどうかも分からない。余分な苦労だと嗤う人もいよう。しかしそういう迂遠な生き方を敢えてしようとする人が、アーミッシュを持ち出すまでもなく、どこかにかならずいる。もしかしたらわれわれの裡には、ご先祖さまである洞穴の住人の忘れかけた本能が、眠らずに残っているせいかも分からない。


 
 山室川へ流れこむ栗立川との合流点で、この辺りを土地の人は「赤坂狭」と呼ぶらしい。このすぐ下流に山室川を渡る橋があり、そこらから法華道の赤坂口が始まる。集落の一番奥に、最近高橋夫妻が始めた種平小屋(http://taneheigoya.ec-net.jp)がある。

 TDS君、恥ずかしながら、そういうことです。ありがとう。
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       ’16年「春」 (4)

2016年03月04日 | 牧場その日その時


 今日の写真は季節が昨日のものより少し戻る。四季折々に紹介している「三本のミズナラ」と残雪、そしてその右手にうっすらと見える白い山並みは北アルプスの穂高、槍周辺である。こういう日は、北は白馬の三国堺、南は中央アルプスの大平峠付近までと、直線でも優に100キロを超えるふたつのアルプスの長大な連なりを一望することができる。


    HAL
 HALの餌の値段は、ご主人さまが食べてる米の2倍ぐらいする。ところが、食べ飽きたのか、それだけではすぐ食べようとしない。困った犬である。仕方なく、あれこれと味の違う物を足してやる。今日はスープをお湯で薄めてかけてやった。何かに誘われて食べ出すと、弾みが付く。いつも何か食べる物を欲しているようでいて、それなりに好みや主張もあるらしい。
 寒い朝、あるいは雪の入笠に連れていくと、寒さでふるえていることがある。この犬種、川上犬は寒さに強いと言われているが、強いというだけで、寒いよりも暖かい方が快適であることは間違いない。そう分かっているが、室内に入れるということはしない。今もHALは日当たりのよい場所を選んで、春の日にまどろんでいる。


    キク 
 キクが消息を絶って、まだ生存の期待を捨てきれなかったころの、揺れる気持。

      あれほどに 夜径戯(ざ)れたる キクなりと 
                      もしやのことも 降る雪に問ふ
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