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谷川は行く都度に新しい刺激を与えてくれた。谷川と上高地を比較してみても仕方ないことだが、どちらに行ってみたいかと聞かれたら、谷川と答えたい。今さら岩登りではないが、マチガ沢、一ノ倉沢、幽ノ沢の出会いを巡り湯檜曽川の畔で、まだそんなことができるかどうか分からないが、できたら昔のように火を燃やし、早瀬の音を聞きながら快適な一夜を過ごしてみたい。
日中は一ノ倉の出会い辺りまで観光客で賑ぎわっても、それよりもずうっと奥にあるかつて幕営地にしたあの辺りなら、清冽な湯檜曽川の流れが、あるいは白毛門の上に顔を出すはにかみ屋の朧月が、現在(いま)も昔と変わらずに迎えてくれるような気がする。
昨日、地元のテレビ局が上高地の自然と、それを守る人々の活動を伝えるというので見た。確かに上高地は美しい。幾つかの場所は、つい昨日のことのように思い出すこともできる。
しかし、谷川の方がやはり苦労した分、記憶に残る度合いが強くて、深い。それにまた、上高地は整備され過ぎた観光地であって、山に登る者にとっては出発点であり、通過点だった。厳冬期の誰もいない上高地ならいざ知らず、現在のような人の行き交う雑踏の中にまで、あえて行かなくてもいいような気がしてる。
まあ、しかしそうは言うものの、いずこも観光地化が進み、谷川とて時期によってはとっくにあのころから、その例に漏れてはいなかった。もし今行っても、落胆が待っているだけかもしれない。
読者各位におかれては、そろそろ5月の山の計画を立てましたか。今日は好天に誘われてついまた、入笠まで行ってきました。明日は現在の入笠を、写真を添えてお伝えします。なお今日の写真は、昨年の4月30日に撮影しました。