入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

    ’17年「冬ごもり」 (28)

2017年02月08日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

        山を去る人たち、見送るHAL

 冬の夜の短い団居(まどい)が終わり翌朝、降りしきる雪の中を人々は山から去っていった。

 人気の消えた小屋の中を軽い虚脱感と、寂寥のようなものを感じながら見回った。戸締りを確認し、消し忘れた明かりを消し、ガスの本管の元栓を締め・・・、そういういつものことを済ませてから、雪の降る中を犬を連れて、また来た道を帰ることにした。ただ、いつもなら牧場の中を通るのだが、そのころには雪ばかりでなく風も出てきていたので、急登や、吹き曝しを避け、久し振りに本家・御所平峠を越えてみることにした。



 峠には、北原のお師匠が背負い上げた地蔵が雪の中で迎えてくれた。久しぶりに対面したお地蔵様だったが、心なしか寂しげに見えたのをその日の天候のせいにして、写真を撮ると一礼し、足早にその場を過ぎた。その辺りまでは登山者や猟師が来ているらしく足跡がかなりあったが、その中に先行して法華道を下ったはずのISKW隊の3人のものは、早くも雪に隠されてしまったのか判別できなかった。
 歩きだしてしばらく行くと、明らかに雪道は法華道から左にずれていくのが分かった。本来はもっと右のはずだが、あえてそれに付き合って落葉松の森をさらに進んだ。やがて見たこともない小高い丘の上に至り、その後ついには足跡の主たちの行動は分からなくなってしまった。
 法華道を正しく進んだ場合は、いくらも行かないうちに「御所平」の標識のある落葉松の平坦な森に至り、その向こうには牧場の広がりをそれとなく察知できた。ところが踏み跡の消えたその場所は、北条氏の残党が潜伏したと言われる「平」の字が相応しいような場所ではなかった。さらに進めば、傾斜は急になって、西方に落ちていくようだった。
 実はこういうことをかねてより心配していた。所構わず無邪気に歩き回るスノーシューズの愛好者や、獲物を追う猟師を見ていると、時には彼らの足跡が登山者を誤った方向に導いてしまいはしないかということをだ。雪のない時なら迷いたくとも迷いようもないような峠から御所平までのわずか数百メートルの距離を、前々日種平小屋の高橋氏が「峠近くは道が分かりずらい」と言ったことを思い出した。それを聞いたときにはその意味がまったく呑み込めなかったが、ようやくにして納得した。
 仕方ないから、北と思われる方向に進んだ。雪の森は、人と犬の闖入をまるで面白がるように、それを黙って眺めているようだった(つづく)

 
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