


爽やかな秋日和の中、牛たちは何も知らないままトラックに乗せられて山を下りていった。今年は、約1週間ばかり例年よりも早かった。
関係者が皆帰った後、いつものようにその後第1牧区に上がり、牛を追い落すために開けた柵を閉じ、下牧のため切断しておいた電気牧柵の電源を入れ直した。そしてしばらく、そこにいた。
わずかな頭数の牛たちだったが、その姿がきょうで消えて風景が一変した。主のいなくなった空き家を訪れた時のようだった。たった4ヶ月の縁でしかなく、同じことをを12年も繰り返してきたというのに、やはり、虚脱感とか寂寥感に襲われるものだ。それに、あの牛のいた風景の中に入っていく時、自然と身に付いた脱柵や事故死に対する気構えや緊張感も、これからはもう不要になった。気楽になったかと言われればそうだが、牛のいない風景に慣れるにはしばらく時間がかかる。
あの牛たちにしても、明日の朝、狭い畜舎で目を覚まし、仲間の牛ばかりか草原や森が一夜にして消えてしまっているのをどう思うのだろう。いやいや、塩が欲しいといって吠え、調教すれば従う牛たちだから、何の感情もないはずがない。事実4か月前に入牧した時、自由になった牛たちがあんなに喜び、はしゃいだのだから・・・。
秋風が旅に出ろと言ってませんか。小屋もキャンプ場も充分に余裕があります。FAXでも予約や問い合わせに対応できます。ご利用ください。入笠牧場の営業案内は「入笠牧場の山小屋&キャンプ場(1)」
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