連休初日、予想通り天気はあまり良いとは言えず、権兵衛山は半分ほど雲の中に隠れ、時折その切れ端のような雲が霧となってかなり低い放牧地まで下りてくる。風はなく、静かな牧場の朝、牛たちはすでに行動を始め、その無声映画のような場面を眺めながらきょうも一日が始まる。
遠くで牛の声がする。あれは何かを訴えている声のはずだ。もう、囲いの中の草はほぼ限界に近いというのに、それでもあの牛たちの主たる活動の場は変わらず、第5牧区に出てもまた戻ってきてしまう。あの国有林の中の牧区は広範囲に及び、それだけに管理も難しく、そこを諦めて反対側の第4を開けた方がいいのかどうかと思案しながら、まだ決めかねている。
牛たちを第1に置いていた1ヶ月の間、第4の牧草は期待したほど伸びなかった。牛をあそこに連れていっても、残りの半月は厳しいかも知れない。さらに林を北へ4乃至500㍍ほど行き、そこを抜ければ登山路と接する放牧地である第4のBがある。草もそれなりに期待できるが、ただしあそこは水場がない。そのため、牛たちは毎日片道1キロを超える距離を移動することになる。いい運動になるし、歴代の牛たちの中にはそうした牛もいた。しかし、その時は二代にわたり先導役の雄牛がいたが、今年はその役をする牛が上がってきていない。
そんなことを呟いていたら、その間に囲いの中の牛の大半が第5へと移った。先程から聞こえていた牛の声は、どうやらその誘いだったのだろう。朝食の支度をする前にその声に釣られて、こちらも森の中へ行ってみることにした。(9月19日記)
結局、牛の全頭が囲いの中に戻った昨日の夕暮れ、第4牧区へ出る門扉を開けた。すると、牛たちは素直に誘導に応じるかと思った矢先、第4へ出たばかりの1頭のホルスが、有刺鉄線と並行する電気牧柵に濡れた鼻先が触れた。8000ボルトの電圧である、驚いたその牛の様に恐怖心を煽られた他の牛たちは、囲いの中に留まる牛と第4に出た牛との2群に割れてしまった。こうなると、もう囲いの中の牛はそこから外へ出ようとはしない。
これまで時々言い換えてはいるが「囲い」は「囲い罠」のことで、ここには鹿を誘い込むための吊り上げ式のゲートが2か所に設けてある。牛のいるときは閉じてあるがこれを開けて、残留した牛を出すことにした。
と、ここまでは上手くいった。ところがこの後、またしても予期せぬことが起きた。因みに昨日の歩数は1万3000歩、老体が軋む。
T井さん、通信ありがとうございました。Umeさん、そしてOldさん、Demaruさんにもにも感謝いたします。
連休中はこの呟きもか細かったり、途切れるかも知れませんが、取り敢えずきょうはこの辺で。きょうから少し賑やかになる。フランス人が2名、昨夜から来ている。