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入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’23年「春」(54)

2023年05月16日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


「初の沢」は左右の谷に源流を持ち、それが牧場内で合流して一つの流れとなって山室川へ下っていく。左から流れてくる方が谷も深く長く、この流れの中に第2牧区と第3牧区を画する牧柵が在って、随分とその補修には苦労したものだ。
 昨年、ここまで牛が行かないように新たに牧柵を設けたが、それにしても先人たちはかなり無茶なことをしたものだと思う。牛の入牧頭数が増えて、放牧地を拡張していかなければならなかったころの名残りだろう。
 
 牧柵の補修には取り敢えず3本ほどの支柱を担ぎ、有刺鉄線、それに玄能(大槌)を持って急峻な斜面を谷底へと下っていく。切断したバラ線を結線するにはそれほどの苦労はないが、川床に打ち込まれた支柱は大水が出れば簡単に抜けてしまったり、曲がってしまう。それらを直そうとしても支柱の先を石が邪魔していくら玄能を奮っても、簡単には入っていかない。
 いろいろと工夫をしながら、それでも牛が脱柵しないようにと牧柵を修理して行くわけだが、牧守にとっては非常に厄介な骨の折れる仕事、場所だった。

 そんな渓の中ではあるが、ここの自然が造った渓相や周囲の景観は大いに気に入っていた。狭い渓の中にも気持ちのいい草地があったり、複雑な渓を造った奔放な流れがあったり、天然木の林が緑陰を作りながら谷の上部へと続いていたりと、地中から湧き出て間もない冷たい水の流れの中で途方に暮れながらも、よくそんな風景を眺めていたものだ。
 今はここへ牛が来ることはないから、牧柵を見回ったり修理する必要もない。だから滅多に出掛けて行ったりはしないが、昨日久しぶりに行ってみた。

 タラの芽の様子を見に、いつもの場所へ行ってみたのだ。あれだけ生命力の強いと思っていたこの木も、年々のように減っていく。タラの木にしたら、折角芽をふいたと思った途端に摘まれてしまうわけで、鋭いトゲが守ってくれるはずなのに、そうでもない。きっと、たまらないだろう。
 採る方は翌年のことも考えて決して無闇矢鱈なことをしているつもりではないが、それでも次々と枯れてゆく木を目にすれば、何も感じないというわけにはいかない。さんざん採集を愉しんでおいて、そう思うことが遅かったかも知れない。
 ウーン、そんな偽善者のようなことを言うなって? イヤ、確かに。しかし、つい身につまされた。

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 本日はこの辺で。

コメント
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