午前5時半、屋根を打つ激しい雨音で目が覚めた。山は荒れている。この天気ではこの連休中、もっと高い山へ向かった人たちの中には苦戦している人もいるだろう。特にテント泊の高齢者は濡れそぼつ身を狭い空間で、動きを封じられて鬱々としているかも知れない。
人は勁くもあれば、また弱くもある。こんな悪天でも平気で行動する人もいれば、あえなく遭難する人もいる。
先程からずっと、きょうのような天気の中で、雨に耐えて写っている1枚の自分の写真が頭から離れない。それがいつ、どこで撮られたものかを思い出せないのだが、寒さに耐えながら顔をしかめた上半身大の写真で、その時着ていた雨合羽はしばらく愛用しただけにどこで買ったかも覚えている。それでいてどうしても肝心な山や、それ以上の記憶の先へ進むことができないでいる。
雨の降る様子を眺めながら呆けている今の気分も悪くない。落ち着く。こんな天気でもどこかから鳥の声が聞こえてくる。シジュウカラだろうか。
目の前の囲い罠と兼用の草地には大分緑の色が増えてきた。キャンプ場の端に見えている無数の枝がうっすらと赤味を帯びた3本の木は、花が咲けば分かるが、多分山桜だろう。
枯れてしまったかと心配させた老婆のようなミヤマザクラの古木も、息を吹き返したようでヤレヤレだ。性悪なコナシの木は芽吹くのも勝手ながら、年によっては牧場の斜面を白い花の帯が縞状に飾る様子を見せてくれる。今春はそんな豪華な気紛れを期待してもいいのだろうか。
明るくなってきた。牧場の様子を見ようと第3牧区へ上がってみると、いつの間にか最低雲高が上がっていて、視線の届く限りの広大な空間には中アは越百から北アは三国堺まで、白い峰々が横一列に浮かぶようにいつもよりくっきりと見えていた。(4月30日記)
本日のPHは、今度予定されている撮影をドローンで支援をするUme氏が下見に来て、ついでに撮ってくれた上空からの山小屋の写真。(4月30日撮)
本年度の営業案内については下線部をクリックしてご覧ください。
本日はこの辺で。