入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

    ’16年「初冬」 (10)

2016年11月13日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 午前8時、気温5度C快晴。
 昨日、電気牧柵の冬対策をしながらずっと気にしていたことがあった。ダケカンバの樹林帯を抜けた観音岩の近くには1頭の鹿が罠に掛かっていた。それをどうするか、気持ちが揺れていた。
 週の初めに「NPO法人みろく山の会」のOZWさんの手を借りて、1頭の雄鹿を屠った。それで、この冬の間に要望されてる肉は間に合う。にもかかわらず欲を出して、さらに鹿を殺める必要があるのかという、およそ猟師らしくない疑問だった。
 逃がすという選択もあった。罠は左後ろ足の先の方に掛かっていたから、足は傷付いていない。解放されれば、充分森の中で生きていくことができる。有害動物駆除と言っても、ここでたった1頭の鹿を殺すということにどれほどの意味があるのかという、いつもの疑問だ。そういう疑問を重ねてこの10年の間に、囲い罠とくくり罠で数百頭の鹿を捕獲した。今さらの疑問である。躊躇である。
 何とかして、自分を納得させる理由が欲しくなる。初めのころはそれがあったが、この頃は段々と怪しくなってきた。特に思うように仕留めれないと、その思いはより強くなる。
 「止め刺し」と言って、捕獲した鹿はナイフで止(とど)めを刺す。雄の場合は、銃を使わなければ格闘と言ってもいいような状況になることもあるが雌鹿でも、信じられないような生命力を見せ抵抗することがある。そういう場合、当然に少しでも早く楽にしてやりたいと思うが、半死状態の鹿にさらなる攻撃を加えることは、最初の一刺しよりも何倍もの意志が要る。
 生殺与奪の判断を、誤ることがある。今回はどうだったのだろう。



 みんなよく食べ、よく飲んだ。そして何より、思いおもいの発言。あれは会話というよりか、誰も聞かない演説のような主張と絶叫。ご苦労様でした。楽しかった。今ごろ、小黒川の美しい渓相を眺めながら、クマも逃げ出すような大声を上げていることだろう。ありがとう。

「海のおうち山のおうち」のChiyさん、見ています、読んでます。医者は、いい加減な人がいます。

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    ’16年「初冬」 (9)

2016年11月12日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 秋が戻ってきたようないい天気だった。普段はあまり行くこともないダケカンバの林の中で、木漏れ日を浴びながら終日、牧場の冬支度をした。牧を閉ざす日も、もうすぐだ。

 きょうは地元の女子高校山岳部OGという烈女3名が、2名の従順なる男衆を従えて来牧、1泊する。牧場を案内しろ、風呂を沸かせ、魚をさばけ、望遠鏡をセットせいと喧しいこと。しかし、やはり地元のこういう山の好きな人たちが来てくれるのは有難い、歓迎したい。
 まだまだ用事を仰せつかっているので、本日のブログはここまで。露天風呂を立てるのも、これが恐らく今シーズン最後となるだろう。



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    ’16年「初冬」 (8)

2016年11月11日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 雨に濡れた紅葉が再生したかのように鮮やかな色彩を見せ、その中でも落葉松の金色に染まった葉がひと際目立ち、美しい。記憶にある樹木とその名前を数えながら登ってきたら10種以上になった。クヌギ、ミズナラ、柏、ブナ、落葉松、桜、白樺、ダケカンバ、このあたりは間違いない。トチ、ホウ、ヒメンシャラ・・・、こうなると怪しくなる。
 きょうの写真のイチョウは昨日撮った。こうして見れば黄色く色付いているようだが、前夜の雪で散るのを早めてしまったのだろう、本格的な黄色に染まるまでにはあと一息だった。惜しまれる。



 昨日の天秤棒を使った籾殻運びの顛末が上の写真。2往復目、いつの間にか担いでいた後ろの袋が破れて、中身がこぼれていた。1回目がうまくいったせいで2回目は注意力が不足したのか、折角の籾殻を大分無駄にしてしまった。歩いてきたばかりの雪の上に籾殻が下流から黄色の帯になってずっと続いていたのを目にしたとき、「愚か者奴!」と籾殻に怒られているような気がした。天秤棒を操るのも容易ではないのだ。その上、歩きながら足許がいやに窮屈だと思っていたら、いつの間に長靴の中にまでもびっしりと籾殻が入り込んでいた。誰も見ていない初冬の森の中で、ひとり笑った。
 ともかくも4往復で3箇所、水道管が地表に露出している部分の養生は、用意した籾殻で充分に足りた。これでもし、この冬も水道管が凍結してしまったら、これまでの苦労は徒労となるが、さて。
 
 ちょっと整備すれば、この沢もいい遊歩道になる。今は牧場内のため無断で立ち入ることはできないが、放牧以外にも牧場内や、付近の美しい自然環境を有効に生かす手立てはたくさんある。ただ、安っぽい観光地にするくらいなら、今の静穏な環境のままにしておきたい。
 地方の活性化の名のもとに各地で観光投資が行われ、今も続いているし、今後も続くだろう。しかしそれらが目先のことや、経済効果ばかりを求めたものならば、自然環境は簡単に荒廃してしまう。その不安は、野放図に利便性ばかりを追求して止まないわれわれの文明に抱く懸念とも似る。

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    ’16年「初冬」 (7)

2016年11月10日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


  午前9時、曇り、気温マイナス2度C。気温が低いため、日陰は昨日の雪が残り、一部は凍結したままだ。週末には寒気も去るようだが、遠からずきょうのような寒空が常態となる。来る途中、高曇りの空に乗鞍だけが朝日を浴びて輝いていた。

 きょうの写真、昨日運び上げた籾殻の一部だ。湧水で凍結が心配な水道管の一部を、土で埋める代わりにこれで保護しようとしているのだが、全部で10袋ある。ここまでは車で持ってきたからいいが、さてそれからである。このいかにも寒々とした初の沢の奥にある現場まで約300メートル余り、どうやって持っていくのか。重量は大したことないが、90リットルのビニール袋に入っているから嵩張る。途中、木の枝や尖がった岩と接触すれば簡単に破れてしまう。
 最初は古いカーペットを切ってその上に1袋か2袋づつ載せて、引っ張って運ぼうと考えた。しかし、実際にその場に行ってみて、その案が容易なことではないと知った。それをするには地形が複雑で、最低でも2か所、沢を徒渉しなければならない。
 で、どうしたか。天秤棒の前後に1袋づつぶら下げて、一度に計2袋づつ運んでみたらどうだろうかと考えた。テイ沢の丸太橋を架けるときに担いだ4メートル、5メートルの丸太と比べたら、重量的には大したことはないと楽観した。管理棟に取って返して、天秤棒になりそうな木を物色した。
 雪の残る冷え切った渓の中を、およそ時代遅れの滑稽な恰好をしてそろそろと進んだ。重さも意外とあって、さらに前後の袋が勝手に揺れ、バランスをとるのが難しかった。
 子供のころ、天秤棒に担いで隣村から豆腐を売りに来た老人のことを思い出した。恐らくあの人の方が大変だったろうと言い聞かせながら、幾つかの枝沢を無事に渡り、雪と落葉で埋まったあるかないかの踏み跡を登っていった。

 W生殿、そちらもなかなかですが、折角作ってもらった風呂です。ぜひ、こちらをご利用ください。

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 ’16年「初冬」 (6)

2016年11月09日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


  昨夜雪が降った。オオダオ(芝平峠)を過ぎたら、道路の両側がうっすらと白くなっていて驚いた。霜ではなく、明らかに雪だ。いつもよりも1週間ほど早いことになる。木々の間に見える西山(中央アルプス)は、ついに経ヶ岳まで雪が降りてきた。
 今朝はカントリーエレベーターで籾殻を90リットルのビニール袋10袋に入れ、軽トラに積み込み、ここへ着いたのは10時を過ぎていた。晴れてはいるが気温は低く、零度だった。真っ青な空に紅葉、さらにそれを飾る降ったばかりの純白の雪、美しくないわけがない。ただ、冬の到来を実感しつつ、言いようのない不安なまでが湧いてきた、それもいつもより深刻に。
 ここの気温は、昼を過ぎてもたった1度上がっただけだ。



 毎年、牧場の山小屋やキャンプ場をご夫婦で訪れてくれるO谷さんは、以前は映像に関わる仕事をしていた。今年の春に来た時も、お気に入りのテイ沢やヒルデエラ(大阿原)をビデオで撮っていたが、それを先日CDにして送ってくれた。9箇所に架かってる丸太橋のひとつひとつにキャプションや音楽を入れ、水の音や小鳥の声まで入った本格的な作品だった。沢沿いに咲く草花のアップが、雲の浮かぶ青い空が、実に良いタイミングで現れて見る人の気持ちがさらに和む。
 惜しむらくは今回またしても、冒頭に酔っ払ったような男の、余計なだみ声が入っていたこと。気付かぬうちに録音されてしまったとはいえ、あれは爽やかで格調の高い作品を汚し、傷つけたという気がしている。
 それにしても、テイ沢を紹介するにはあれ以上の映像はない。また、O谷氏をおいて、この辺りの自然を優れたビデオ映像で紹介できる人を知らない。F/C Nさんも(元気ですか?)他のメンバーもぜひ見てもらいたい。ここに来れば、誰でもが視聴可能。 
 親戚に会うためハワイに行くとは聞いていたが、その間もこのブログを見ていてくれたという。有難くも恐縮してしまう。

 「NPO法人みろく山の会」のSHIMEさん80ウン歳は、本当に偉い!そのうちどのくらい偉いか、お伝えします。
 名古屋のNさん、了解しました。経路はもう少ししてから、情報を出します。芝平か戸台なら多少の雪でも大丈夫でしょう。

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