遠くまで、澄んだ青い空が広がっている。見慣れた風景だが、心に沁みてくるくる美しい眺めだ。牧場に夕暮れが迫り、長い影が山に落ちると辺りは急に淋しくなる。日が沈んでいくにつれて山々と接している空の縁(ふち)の色が、薄青色からさらに白くなり、そして徐々に赤みを帯びてくる。近くの葉を落とした白樺の梢ばかりか、大沢山の箒立ちして見えてるダケカンバの林も朱色に染まり出した。日の沈む速さに呆れている間もなく、その夕日が最後の光芒を放って消えた。西山の影のような山並みが一段と暗く濃くなって、それまで気が付いていなかった背後の御嶽山が浮かぶように見えてきた。
鹿が鳴いてる。短い飛行機雲を引きながら定期航路を白い点のような旅客機が飛んでいく。この仕事が終わったら、行ってみたい土地がある、国がある。
明日で7か月の仕事が終わり、この仕事に就いてから丸10年が過ぎることになる。ここで過ぎていったその時間の長さ、重さが、若かったころよりもことさらに感じられるのは、それだけ人生の余白が減ってしまったということだろう。
さあ暗くなった山道を帰ろう。
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