入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

    ’17年「冬ごもり」 (39)

2017年02月19日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 山に関する愛読書を1冊挙げろと言われたら、串田孫一の「山のパンセ」と答える人が結構いると思うがどうだろう。特に女性に熱心な読者がいたような気がする。はたして今もそうだろうか。山に関連した書籍は、同書が出版されたころ(57年~63年)は登山者とかなりいい関係で、その中でも串田孫一は人気が高かったと思う。
 ただしこれは大分あとになって知ったことだ。この本が出版されたころ、山といえばまず「西駒」、次に「仙丈」、「八ヶ岳」で、それでもようやく「燕」、「穂高」にも登って、何とか趣味は登山ですと言えるようになれたかという17,8歳のころのこと、山の本も多少は読んでいたが、この人のことや著作を知るのはまだ先のことになる。
 「パンセ」とはフランス語で思索・思考という意味とか、かのパスカルの遺稿集に付された題名でもあることなどなどを、さていつごろ知ったのか。多分、山行を最も一緒にしたNROの口から出たのだと思うが、フランス語を本の題名にしたところに著者の気取りが感じられ、また内容もおよその見当が付いたから遠ざけて、読まなかった。後年、同じ著者の「もう登らない山」などという本が世に出た時もこの思わせぶりな題名に、著者によるのか出版社が付けたのかは分からなかったが、ともかく反撥を感じた。
 それが、もう40代になっていたと思う、四国に落ち着いていた学生時代の友人Tが、「山のパンセ」の復刻版を入手したという話の続きから、同書を読めと勧められた。どういう加減か彼も、いつのころからか四国の山々に登るようになっていて、高じて富士山、穂高、谷川、剣、石鎚などに付き合った、そのころのことだった。
 長い話になってしまったが、それで読んだ。思っていた通りの本だった。知的で品良く美しく、かつ呆れるほど山を語り、自然を語り、そして登山についての思索を語ってくれていた。登山ということが社会の中で今と比べ、少し違った位置に置かれていたような気がして、おかしな言い方をあえてするが、まだ山に登るという行為について思索が必要な時代だったのだろう。山の歌が生まれ、流行ったのも、ちょうど同じころで、現在の中高年の登山者の中には、そのころに登山を始めた人がかなりいると思う。(つづく)

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    ’17年「冬ごもり」 (38)

2017年02月18日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 昨日の続きだが、彼は何故携帯電話を使わなかったかという疑問は当然ある。使えたのに使わなかったとは考えにくいから、何らかの事情で使えなかったのだろう。寒冷地でのバッテリーの消耗もその理由として考えられる。それとも、突然の体調不良が彼を襲ったのだろうか。この可能性も無視はできない。
 ともかく、駒ケ岳の山頂(2956メートル)に等しい吹き曝しの高所で、彼の行動を奪い動けなくし、そこに留めた原因は何だったのだろか。
この「西駒」と愛称する中ア・駒ケ岳は、故郷の山である。中学生の時から数えれば、30回以上は登ったはずだ。山頂のすぐ脇にある祠は、村はずれの産土神社と等しいほどに愛着を持って思い出すことができる。その同じ場所にうずくまり、風雪に身をさらしながら、寒さや死の恐怖におののきつつ息を引き取るまでに、どれほどの時間が流れたのだろう。
 
 冬の上高地で一人ウロウロしていて、暇を持て余した挙句、テントを残して西穂へ登ったことがあった。その夜泊まった西穂山荘のおかみが、どう思ったのか、冬の独標で自殺を図ったある登山者の話をしてくれた。一応救助されたがその人は、凍傷のため両手両足を切断する羽目になってしまい、思い通り死なせてやった方が良かったのかと、ずうっと思っていると話してくれた。「文字通りのダルマサマになってしまってね」と。
 
 昨日、新聞の遭難記事を見てそのことも考えた。遭難の原因は、もっと違う事情があったはずだと思いつつも、あの西駒の頂で動くことを止めてしまった遭難者の行動について、今だに合理的な説明が見付からないでいる。

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 ’17年「冬ごもり」 (37)

2017年02月17日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

Photo by Ume氏

 朝から雨が降っている。午前中、「NPO法人みろく山の会」のOZW氏から問い合わせがあった。来週末の予約を受けているが、やはりこの時期、雪の状態が気になるようだった。無理もない、昨年は3日間のうちの中日に雨に祟られている。
 この時期の雨は、雪よりも余程性質(たち)が悪い。風雨の中、稜線を歩いていれば濡れて体温を奪われ、ひどい場合は生死にかかわる。また多量に雨水を含めば雪の斜面、壁は、雪崩の原因にもなる。
 
 きょうの新聞に、中央アルプス駒ケ岳の山頂付近での遭難を報じる記事があった。遭難者は大学生22歳。登山届も出しておりそれによれば、14日に日帰りの予定だったらしい。発見されたのは翌15日の午前11時半ごろ、山頂付近の祠の横とある。これだけでは入山した場所も分からず、普段はしないことだが新聞社や、木曽警察に問い合わせてみた。しかし、記事以上のことは分からなかった。
 やはり天気のことが一番気になり、思い切って千畳敷ホテルに当日の天候を尋ねてみた。その結果驚いたことには、入山したのは14日ではなく12日の日曜日で、やはり駒ケ根側からロープウェイを利用したことが確認できた。肝心の天候については、晴れのち曇りだったそうだ。
 単独だが、若いし、天候も吹雪くほどのことはなかったと思う。八丁坂を登ってカールの上に出た段階で視界不良や、風雪が激しければそこで引き返しただろう。ここから頂上へは一度中岳を越えなければならないが、その辺は問題なく通過できたはずで、そうでなければ山頂へはたどり着けない。
 そこで考えたことは、山頂から下山中にほどなく天候が悪化して方向を見失い、迷い、そのためもう一度下山路を確認しようとして山頂まで登り直したのではないか、ということだ。そこで力尽きたか、あるいは天候の回復を待ちながら下山の機会を失ってしまったか・・・。
 軽々な憶測はここまでにしよう。ロープウェイのお蔭で、四季を通じて登山者ばかりでなく観光客にも人気のある山になった。日曜日で他にも登山者がいただろうに、不幸な事故は起きた。
 登山届の取り扱いについてその他、アレコレ考えさせられた事故だった。

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    ’17年「冬ごもり」 (36)

2017年02月16日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 入笠のことばかり考えているわけではないが、それでも一応ここには、いくらかでも関連することを話題にしようという気はある。だから、無いことの分かっている米櫃(こめびつ)の底を探ろうとするようなことになるのだ。
 
 昨日の15日で、たった3か月しかない今年度の狩猟期が終わった。この間、猟をするわけではないが、今シーズンもあっという間に終わってしまったという気がする。
 確かに、鹿などの有害動物の駆除を目的にした狩猟なら年中できるが、これはややこしい決まりがあり、誰でも、どこでも、ドコンドコンと鉄砲をぶっ放してよいというわけにはいかない。
 それだけでなく、銃の取り扱いについては、特に厳しい決まりが多数ある。例えば銃を車の中に放置することは厳禁だが、だからといって、それを担いで銀行は無論だが、コンビニでも行くわけにはいかなかろう。人にに勧められたこともあったが、今では鉄砲など持たなくてよかったと思っている。ただ罠猟に関しては、業務の必要もあり免許を取った。現在でも、持っている。
 そんな縁でたまには誘われて猟に同行し、その大変さを垣間見るようになった。もし狩猟が生活の糧でなかったなら、あれは大変な趣味だと言える。今や猟師も高齢化し、若い人がやらないと嘆きの声を聞くが、それも充分にうなずける。なにしろ寒い、重い、疲れる、危険。
 冬の登攀と一緒だと言えるかも知れないが、登攀における困難や苦労は前提であって、同時にまた目的でもある。それに対し猟は、目的はあくまでも獲物である。苦労や困難はできるだけ避けたいところだろうに、多くの場合そういうわけにはいかない。
 深い雪の谷を転げ落ちていった鹿を追って数10メートルも下り、今度はその重い獲物を何とか苦労の末引きずり上げる。それができたとしても、その後最低でも放血と、内臓は抜かなければならない。雪まみれ、寒い、血まみれの解体処理・・・、1頭の鹿にどれほどの時間と手間がいることか。
 しかしそれでもあの猟師たちは、わずか3か月のこの狩猟期に精も根も使い果たそうとする。お疲れさまでした。

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    ’17年「冬ごもり」 (35)

2017年02月15日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など

Photo by Ume氏(再録)

 2月もすでに半分が過ぎた。まだまだ寒い日が続くが、日の光はその明るさを日毎に強めつつある。上ではまだこんな景色を見ることができるだろうが、長居し過ぎたた客を疎んじるように、冬に疲れた人々の気持ちは、次の季節へと移りつつあるだろうか。
 
「昨日のオリオンの天体写真は素晴らしかったが、誓子の句とは随分と印象が違いはしなかったか」
「そうでござったか」
「何だ、不満そうな言い方だな」
「いや、いろいろな感想を持ってくださって結構でござる。しかし、まあ、なかなか・・・」
「お前の文章も何だ、星空は昔の人のように肉眼で見ろと言ってるように読めたが」
「あれは、望遠鏡がなくてもここでなら、いくらでも素晴らしい星空を観望できると言いたかったのでござる」
「だけどお前、金もないのに望遠鏡を買ったんだろう。常設してると書いてあるじゃないか」
「その通りでござる。しかし、その望遠鏡で眺められる天体は惑星など限られたもので、広大な宇宙はまず肉眼で見てもらいたいのでござる」
「そういうものか」
「最近はそれに、星空が村おこしや観光に使われるようになって、おかしなことになっている所もあると聞いているのでござる」
「ウムー、エスキモーがバナナの栽培をするような話だな」
「いや、頭の上がらぬ奥方の前で、大先輩が亭主関白を気取ろうとするようなものでござる」

 ATOさん、暖かくなったらぜひ、星空を眺めに来てください。

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