周囲の森がここまで色付いてくると、クマササの緑の色までが、黄や赤を主な色調とした風景の中でそれなりに格上の役割を見せるようになった気がする。黄色く染まった落葉松やダケカンバの林の中に、モミや、トウヒ(スプルース)の緑の色を見るのと似ている。
そのダケカンバは、白樺と比べれば落葉が早く、初の沢の大曲よりその奥一体のダケカンバの林は、すでにクリーム色をした樹幹が目立つようになってきて、その分、林の中に何本かのモミの大樹だと思うが、緑の色がよく引き立って見える。また、今年は雨が多かったせいだろう、いつもなら枯れてしまう牧草地にも、新鮮な緑の色がまだ残っている。
こういうことを呟くと、そういう写真をここに載せたくなるが、これが難しい。今述べたクマササについては今朝、オオダオ(芝平峠)の少し手前を通過する際に感じたことで、果たしてそこで写真を撮ったとしても、意を伝えてくれるようなものになったかは分からない。多分駄目だろう。ひとりで見て、感じているしかない。
交通事情の悪いせいもあるが、入笠山の伊那側ではおよそ登山者の姿を見かけなくなった。芝平は県道の崩落で通行の見通しは立っていないし、利用者の多い千代田湖から枯木の頭を超えてくる林道も、1ヶ月近く経つが、いまだ舗装工事で作業中は通行止めである。
芝平の住人は街に出るのに真逆の方向のオオダオ(芝平峠)まで上り、日中8時半以降16時半までは迂回路(その時間以外は工事中の道を通行できる)しか通行できない。まるでDの文字を反転させ、縦線の中間辺りから上に進み、グルッと左回りするようなもの。
山奥氏もその一人だが、全くご苦労なことにそういう難儀に耐えて、買い出しや歯医者、病院に通っている。忘れられた住人、に近い。
天気予報は夕方から雨のはずだが、今も美しい夕暮れの空が広がっている。
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