入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

     ’19年「夏」 (37)

2019年08月13日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 今年も、あの山室川の深い谷間に一時、かつてあったはずの風景がささやかだが戻った。昨日山から下りて来る時、芝平や荊口の普段は人のいない家々に県外車が停まり、人影がして、お盆に帰省した家族が家の前で焼肉でもする団欒の様子も目にした。そんな通りがかりの者の目を和ませてくれた情景とは言え、数えてみれば5軒か6軒ほどの家のことで、見方を変えれば、風雨や雪に朽ちかけた無人の廃屋の方が目立ち、却って痛ましいというふうにも思える。
 法華道(諏訪神社口)の入り口にある写真のこの家などは例外で、しばしば人の姿を見掛けるし、周囲の庭や畑などは実によく手入れされている。出会うと挨拶程度の言葉を交わすが、東京から来ているのだそうだ。今はいいがこの家も、やがて屋主が変わればやはり、他の家々と似たような道を辿ることになる気がする。
 この家からそれほど離れていない場所で育った北原のお師匠は、芝平の地に寄せる思いは今も人一倍強い。もちろん、その気持ちは分かる。しかし、他の地へ移った人々もやがては、この狭い谷間での実際の暮らしを知らない世代に代わることは避けらず、そうなれば、その人々にこの山間の古い集落である芝平への郷愁を期待することはできない。

 取り敢えずきょうで、盆休み前半の訪問者が去った。明日から後半に予約した人たちが来る。すでに、18日までの予約は打ち切らせてもらったが、やはり不満が出た。一人でも多くの人を受け入れるべきだという言い分であろう。分からないではないが、ここでは来てくれた人たちの快適さを優先させてもらった。
 仮に予約を打ち切らずに受け入れていたとしても、その数にはおのずと限りがある。それで環境や、雰囲気が悪くなるくらいなら、適正だと思われる人数で打ち切ることの方が良心的だと考えた。全てとまでは言わないが、よく耳にする「少しでも多くの人に、少しでも多くの機会を」などというのは、売り上げを優先させるための方便に過ぎない、という気がする。

 8月10日から18日までのキャンプ場の予約は、大変に勝手ながら打ち切らせていただきました。
 営業案内 「入笠牧場の山小屋&キャンプ場(1)」およびその(2)です。下線部をクリックしてご覧の上、どうぞご利用ください。
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     ’19年「夏」 (36)

2019年08月12日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 7日に帰って以来、きょうまでずっと上で暮らした。一度里に下りたつもりでいたが、そうではなかった。その間ロケ弁2食、昨日は身内の救援を得て人並みに3食、その他に一体何を食べていたのか覚えていない。いや食物ばかりか、ここ数日のことは全てが曖昧模糊とした中で、忙しく過ぎた。
 撮影のために泊まり込みを覚悟して着替えは持って来ていたし、風呂は露天風呂ではなく管理棟のを使った。冷凍庫にはかなり食料があったから何とかなったわけだが、そう、酒量はかなり上がったはずだ。
 それでも来訪者の要望に応え、二夜続けて天体観測も行った。大人も子供も皆が土星に感動していたが、危なっかしい手付きで望遠鏡を操作しながら、いつものように木星の左側、かのガリレオも見たであろう三つの衛星に惹かれた。月齢は10を超えていたはずだが、それにしては木星の縞模様も観測できた。
 当然露天風呂も沸かし、背中こそ流さなかったが三助の役も果たしたつもりだ。



 色々なことが終わり、牧場のことに専念できるころには、ここにはすでに秋風が立ち、本格的な次の季節が来ているだろう。短い夏の盛りの中で、早くもその季節の逝くのを心待ちにしている。
 紅葉の山路をどこへ行くかはまだ決めていないが、ともかく今年の秋こそは牛が下りたら、大手を振って旅に出る。それが励みだ。

 8月10日から18日までのキャンプ場の予約は、大変に勝手ながら打ち切らせていただきました。まだ余裕はありますが、あくまでも来ていただく方たちの快適な滞在を優先するためです。ご理解ください。
 営業案内 「入笠牧場の山小屋&キャンプ場(1)」およびその(2)です。下線部をクリックしてご覧の上、どうぞご利用ください。
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     ’19年「夏」 (35)

2019年08月10日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 昨夜も上に泊まる。そしてよく眠れないまま夜が明けた。そういう夜に見る夢には、帰り方が分からず途方に暮れている都会の郊外の駅がよく出てくる。列車は次々に通過していくが、どれに乗ったら帰るべき場所へ行けるのか、この夢の中では知ることができない。
 その後夢は、今度はしてもいない不義理の夢に変わった。さんざん世話になった人に顔向けができなくなったとか、してもいない借金の返済を怠っていた夢とかだ。過去にはそういうこともあったから、いまごろになって古傷の痛みが夢の中で疼くのかも分からない。
 昨夜は加えて、夢の中で山にも登った。ピッケルを手にアイゼンも履き、どこぞかの山での登攀の場面だったが、少しも興は乗ってこなかった。もうすることもない山での一コマが、浅い眠りの中でどういう意味を持つのかと、目が覚めてからしばらく考えた。

 昨夜、夕日を眺めに第1牧区へ上がっていった時のことだ。驚いた。雷電様に通ずる放牧地には、およそ100頭ほどはいただろう、鹿が車の音を聞き付けて逃げていくところだった。夕暮れの草原に、まるで茶色の敷物が移動していくような錯覚を覚えたほどだ。後には、前日よりもさらに拡大したイノシシの掘り起こした跡が延々と続いていた。
 毎年の春、入牧すると電牧を立ち上げ、初冬の風が吹くころにこれを落とす。初夏には漏電を避けるため、2キロくらいはあるリボンワイヤーの下を草刈りする。そういう努力の結果がこれである。今や鹿対策用の電気牧柵は殆どその意味がないことを思い知らされた。災害に襲われた人に比べたらこんなことは大したことではない、シジホスの神話なぞを持ち出せば滅相もないと嗤われよう。それでも、何年にもわたり保守してきた者の努力は、これであからさまに否定された。
 もしかすれば、この時の落胆が昨夜の夢を誘ったのかと思う。

 8月10日から18日までのキャンプ場の予約は、大変に勝手ながら打ち切らせていただきました。まだ余裕はありますが、あくまでも来ていただく方たちの快適な滞在を優先するためです。ご理解ください。
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     ’19年「夏」 (34)

2019年08月09日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 エライことになってきた。撮影に加えて、昨夜は野外でピアノ演奏を試みるHさんと、彼女の支援者Aさんがやって来て、というより予期せずに現れ、そして歓談痛飲は深更に及んだ。にもかかわらず、今朝は撮影のため5時に起こされ、それから長いながいBigな一日が続いた。
 多くを語るよりか、夕暮れの牧場の情景を皆さまにお見せして、言葉少なく本日はご無礼します。


 
 追伸。FMZ君、君はこういう夕焼けを見たことがあるか?山林火災と紛うがごとき。







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     ’19年「夏」 (32)

2019年08月07日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 どうも空の色が夏空のようには見えない。特に昨日の帰りに眺めた空は、記録的な暑さだったにもかかわらず、すでに秋色を帯びているようにさえ感じた。どっちにしろ後10日もすれば牧場の短い夏は終わり、次の季節に移るだろう。

 海さん、折角この独り言にご一党の記念写真を掲載する許可を得ておきながら、しばらくそれを果たすまでに時間がかかりました。決してトカゲの定春を責めるわけではないのですが、彼の毒気にでも当たったのか、以来iCloudと上にあるPCとが不仲になってしまいました。幸い、家にあるPCとは相性がいいようなので、ようやく皆さんのこの夏の一こまをお披露目することができました。



 アラスカで気ままな旅を続けているI氏から絵葉書が届いた。タルキートナだとかフェアバンクスだとか、すっかりアラスカンになったようなな調子で旅の様子をつづってくれた。まあ、遊子は帰還を忘れず、この秋まで是非いい旅を続けて欲しいと思う。ただし、そちらでもこの呟きを聞いてもらっているようだから伝えておきたい。旅の思い出を語るに際しては、年齢も、学校も、そしてアラスカも、どっちが先輩であるかを忘れないように。特に、聞き方にとって未知のアラスカの土地を語る場合には、気を付けること。年寄りはかなり嫉妬深い。懐かしく、羨ましくて、クク。

 忙しくなってきた。たった2,3時間のここでの晩酌を楽しみに山を下ることさえも段々と難しくなってきた。この呟きも、あの白岩岳の急登を強いられているような状態で、喘ぐばかりで思うに任せない。その辺りのことに関しては、もう少し時間が経ってから縷々お伝えすることにして、とりあえず皆様方におかれては、何卒この暑さになど負けずにお過ごしくださるようにと念じてます。

   八月の石にすがりて
   さち多き蝶ぞいま息たゆる。
   わが運命を知りしのち
   たれかよくこの烈しき
   夏の陽光の中に生きむ。

 夏が来るといつも伊東静雄のこの詩の一節を思い出す。が、それはこの詩に対する反撥のせいだと思っている。

 10日から18日までのキャンプ場の予約は、大変に勝手ながら打ち切らせていただきました。まだ余裕はありますが、あくまでも来ていただく方たちの快適な滞在を優先するためです。ご理解ください。



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