■安中市で15年以上にわたり年2回開催されてきたフリーマーケットを、市民からの“得体のしれない”“苦情”を大義名分として、安中市公園条例を盾に開催を許可しようとしない安中市と、引き続き開催を申請しようとしたフリマ主催者の未来塾との間で、平成19年9月10日に安中市長室で開かれた意見交換会のやりとりについて、安中市と安中市長が広報紙で虚偽の内容を掲載して未来塾と未来塾代表の信用を低下させたとして、未来塾側が平成20年9月17日に、安中市と岡田義弘市長を相手取り、総額800万円の損害賠償などを求めて前橋地裁高崎支部に提訴してから、既に11ヶ月が経過しようとしています。
この間、この事件(前橋地裁平成20年(ワ)第492号)は、次の経緯で係争中です。
<平成20年>
▼11月 5日 被告安中市が答弁書を提出
▼11月13日 第1回口頭弁論が開かれる(原告未来塾側が陳述)
▼11月15日 被告安中市が指定代理人選任届を提出(指定代理人:鳥越一成、島崎佳宏、吉田隆)
▼12月5日 第2回口頭弁論が開かれる
▼12月8日頃 被告安中市のホームページから広報おしらせ版平成19年12月21日号の「談話」と称するページが削除される
<平成21年>
▼1月14日 原告未来塾が第1準備書面、証拠説明書及び取下書(インターネットのウェブサイト上における記事の削除)を提出
▼1月23日 午前10時から、第3回口頭弁論が開かれる(1月14日の原告未来塾の第1準備書面に対して、2月27日までに被告安中市・岡田義弘が共同書面で反論の準備書面を提出するよう訴訟指揮)
▼3月13日 午後1時30分から、第4回口頭弁論が開かれる(被告岡田義弘の丙第1から16‐2までの証拠書類の原本確認を行い、丙第5と8号証については、再度原本確認することになった。また、3月10日付けで原告から文書提出命令申立書が提出されたので、次回に被告岡田義弘が「要点筆記」を提出することになった。裁判長から未来塾に対しては、裁判中でも再びフリーマーケットを開催するつもりがあるか、安中市長に対しては、申請があれば公園使用許可をするつもりがあるかについて、質問があった)
▼4月16日 午後2時30分から、第5回口頭弁論が開かれる(被告岡田義弘が丙第17号証として「要点筆記」を提出。しかし提出した証拠説明書に訂正がある旨、岡田から申し出があり次回までに提出することとなった。そのほかにも釈明等があれば次回口頭弁論までにまとめて準備書面にて提出することとなり、被告安中市も広報およびホームページヘの掲載方法について準備書面にて提出することとなった。準備書面提出期限は、5月15日と決まった)
▼5月22日 午後4時00分から、第6回口頭弁論が開かれる(岡田義弘の提出した被告準備書面(3)と被告安中市提出の準備書面(2)を陳述。また、前回提出予定だった証拠説明書の訂正版が被告岡田から提出され原本確認後受理された。必要に応じ、原告からの準備書面提出期限は6月22日と決まった)
▼7月3日 午後1時30分から、第7回口頭弁論が開かれる
■今回は、4月16日の第5回口頭弁論のあとから、5月22日(金)の第6回口頭弁論まで、両者のやりとりをみてみましょう。第5回口頭弁論で、裁判長から指揮のあった5月15日までの準備書面提出にそって、まず5月13日付けで被告安中市から被告準備書面(2)が提出されました。
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【安中市からの被告準備書面(2)】
平成20年(ワ)第492号 損害賠償等請求事件
原告 松本立家 外1名
被告 岡田義弘 外1名
準備書面(2)
平成21年5月13日
前橋地方裁判所高崎支部合議2係 御中
被告 安中市 指定代理人 鳥越一成 反町勇 吉田隆
被告安中市は、本準備書面において、原告らの平成21年4月8日付け原告第2準備書面に対し、必要な限度で反論する。
第1 名誉感情の侵害
民法710条及び723粂の名誉とは、「社会的名誉」を意味し、人の内心に存する「名誉感情」は含まないと解すべきであり、例外的に名誉感情に対する侵害が一定の受忍限度を超えた場合にのみ、人格権の侵害として、慰謝料請求を認められるとするのが多くの裁判例や学説における趨勢である。
本件「談話」に記載された内容は、社会通念上許される限度を超える侮辱行為でもなければ、原告らの社会的評価を低下させる行為にも相当しないことは、客観的に判断して明白な事実であり、到底、人格権の侵害としで慰謝料請求は認められない。
原告らは、裁判例等を引用(原告第2準備書面20頁の東京高裁平成13年9月5日判決を含む。)して、反論しているが、引用例としては、いずれも正鵠を得たものではない。
第2 真実性又は真実相当性
原告らは、意見交換会において、被告岡田が使用許可に関する結論は1週間で出すことは無理と明言したと主張しているが、事実と異なる。
実際は、1週間以内とか2、3日のうちに決断することができるどうかは、わからないと発言したのであって、1週間では結論を出せないなどとは明言していない。
かように本件訴えにおいて、発言の正確性に対し、ことさら厳格性を求めて被告らを非難する立場の原告らさえも、録音テープを所有し、事実を確認できるにもかかわらず(意図的かどうかは別として)、このように事実と異なる表現方法を採っている。
また、自分が発言した内容がそのまま記事として伝わらないことは、文章を書くプロのマスコミ報道においても起きることである(乙11号証)。
ましてや、被告岡田が市長の「談話」として、未来塾との長時間にわたる意見交換会の概要について、原告らの主張をあますことなく表現することができないのはやむを得ないことであり、本件「談話」は、意見交換会において自分自身の記憶に強く残り、市民に伝えたい事項を自分の言葉で表現したものである。
さらに、発行するにあたり、同席した職員に対して記事の正確性について、確認を求めているため、真実性又は真実相当性の立証については何ら問題となることはない。
同席した部長3人に確認したことは事実であり、陳述書(乙第5号証及び6号証)にもあるとおり、掲載された事項は、話し合いの一部ではあるものの、概ね掲載内容のとおりであると証言している。
なお、広報を発行する前に原告らに事前確認を求めるべきであったとも主張しているが、市長談話という形式で自分の意見を発表する場合において、その必要はないことは明らかであり、原告らも意見交換会の内容を記事とした未来塾ニュース(乙10号証)を発行するにあたって被告らの確認を求めていない。
第3 広報紙の発行手続
安中市が発行する広報祇は、「広報あんなか」、「おしらせ版あんなか」及び「グラフあんなか」であるが、「グラフあんなか」は、写真誌で、以前は隔年で発行されていたが、合併後の現在は、予算上の関係で不定期として、発行されていない。
「広報あんなか」は、毎月1回、月の初日に発行され、多色刷りの記事と写真の構成により、A4サイズの冊子形式で市民に周知が必要な事項や市のイベント記事などについて、多く載せている。
「おしらせ版あんなか」は、毎月2回(11日及び21日)発行され、通常はA3の見開き1枚両面により、「広報あんなか」に載らない予防接種のお知らせなど市民に身近な記事や「広報あんなか」発行後に周知が必要となった事項について、内容として発行している。
広報紙に掲載する原稿については、各課に広報主任が置かれ、広報主任は、その所属する課の広報紙に掲載する原稿を取りまとめて、「広報あんなか」は発行日の30日前までに、「おしらせ版あんなか」は発行日の20日前までに秘書行政課に送付することになっている。
こうして各課の広報主任から集めた原稿を基に、秘書行政課広報広聴係の担当職員が紙面構成を考え、広報紙の編集を行い、できあがった版下の原稿については、順次上司の決裁を経た後、市長の最終決裁をもらって、印刷業者に発注を出している。
本件「談話」は、本来であれば前回と同様に「広報あんなか」に載せるべき内容であったと考えるが、「おしらせ版あんなか」の続紙のような形での紙面として、平成19年12月21日号と合わせて、発行した。
これは、先に発行された未来塾ニユース(乙10号証)とあまり期間をおかないうちに、被告岡田の市長として市民に対し意見交換会の報告をしたいという考えに基づいたものである。
第4 広報編集会議
原告らは、広報編集会議が開催されていないことを問題としているが、当該会議は広報紙に載せる記事が多いなどの理由で、広報紙の企画及び編築上において、各課から収集した原稿について取捨選択又は適宜修正の必要があるときに開催されるもので、広報紙の発行ごとに開催されるものではない。
このため、会議の構成員も総務部長、秘書行政課長及び広報広聴担当職員のみをもって構成され、事務的に各課の意見を調整のうえ原稿の取捨選択等を行い、政策的な判断はしないことから、他の市幹部職員は入っていない。
特に本件「談話」に関しては、広報紙発行の最終決裁者である市長の強い要望によるものであり、他課から収集した原稿ではないため、そもそも事務レベルの協議の場である広報編集会議の開催が求められる案件ではなかった。
記事の形式については、市長「談話」であり、内容の真偽は、既に市長自ら意見交換会に出席した3人の部長から確認がとってあったことから、担当者としては特に内容に修正しなければならない点はなく、市民にはできるだけ職員が加工しない市長の生の意見を届けることが望ましいと判断し、記事としてそのまま発行したものである。
このため、広報編集会議が開催されていないことをもって真実相当性が認められないとする原告らの主張は失当である。 以上
【証拠説明書】
平成20年(ワ)第492号 損害賠償等請求事件
原告 松本立家 外1名
被告 岡田義弘 外1名
証 拠 説 明 書
平成21年5月13日
前橋地方裁判所高崎支部合議2係 御中
被告安中市 指定代理人 鳥越一成 反町勇 吉田隆
号証/標目(原本・写しの別)/作成年月日/作成者/立証趣旨/備考
乙11/MSN産経インターネットニュス(写し)/21.4.15/田所龍一/マスコミ報道においても、発言者の真意を伝えることは難しい事実/-
【乙第11号証】MSN産経インターネツトニュースからの記事
【from Editor】やっぱり「書いてよかった」2009.4.15 08:25
このニュースのトピックス:プロ野球注目選手
4月2日号の週刊文春に私の記事が載った。
創刊50周年記念特集「重大事件私はそこにいた」の一コマで、昭和56年に「ベンチがアホやから…」の名言を残して球場を去った元阪神・江本孟紀(たけのり)氏の「その生発言を聞いた記者」として取材を受けたのである。
記事は私の一人称で書かれていた。だが、『スクープ記者が「書かなきやよかった」』の見出しがつけられ、文中にも「僕さえ記事を書かなければ…」とあった。残念ながら、この件に関し、これまで、一度たりとも「書かなきやよかった」と後悔したことはないし、新聞記者であれば「書いて当然」とさえ思っている。
文春の記者にもそう話したつもりだったが、なぜ真意が伝わらなかったのだろう。
「ベンチがアホやから野球がでけへん!」という江本氏の発言は、記者の質問に答えて出たものではない.昭和56年8月26日のヤクルト戦(甲子園)、八回に降板し、怒りの形相でベンチを出てきた江本氏を迎えたのは入社3年目の私1人。とりつくしまもない。江本氏は無言で選手通用口に入った。「コメントなしかあ」とホッとしたときだった。突然、江本氏の背中が揺れ、「ベンチがアホやから!」の怒鳴り声。
まさしく独り言である。私もそう報告し、各社の虎番キャップたちも「エモやんのいつものグチ」で済まそうと、ロッカールームから江本氏を呼び出し確認をとった。
ところが、「独り言でもなんでも、俺が言うたことには違いない。そもそも首脳陣への怒りは今日がはじめてやないんや」と独り言を正式発言に変えてしまったのである。
江本氏は首脳陣批判の責任をとって阪神を退団した。もし、あそこで私があの発言を聞いていなければ、辞めなくてもよかったのではないか-との思.いがつのる。退団した翌日、私は江本氏を自宅に訪ね思いをぶつけた。
「アホやのう、お前がまだ通路の入り口で立っとると思ったから、わざと聞こえるように言うたんや。お前のせいで辞めたんやない。気にするな」。江本氏の優しさに救われた。
「書いてよかった」と思っている。文春の若い記者は一生懸命に私の話を聞いていた。だが、それでも伝わらないこともある。取材される側に立って改めて、取材する難しさを再認識した。(大阪運動部長田所龍一)
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■こうして、原告からの「真実性又は真実相当性」関する攻撃に対して、被告安中市は、当事者の発言内容がそのまま記事として伝わらないケースとして、あの有名なエモやんの「ベンチがアホやから」の発言を掲載した記事を例示して、防御しようとしました。安中市の指定代理人が、この事件をよく覚えたいたことには感心させられますが、、「ベンチがアホやから」は、エモやんの発言そのものであり、無理やりコジツケの感が否めません。
【ひらく会情報部・この項「その2」に続く】