■高崎市の若宮苑に係る介護保険に基づく介護報酬の支出を巡る不正支出事件で、偽造されたケアプランの有効性について一向に見直そうとしない高崎市の福祉行政の姿勢に疑問を抱いた当会会員は、平成28年から2年越しで、法廷での決着を目指して係争中です。高崎市の福祉行政の歪みを表しているこの事件では、市民オンブズマン群馬としても注目しており、一向に反省の色が見えない高崎市に加えて、介護報酬の一部を負担する群馬県に対して、ルールに定められた措置を毅然ととるように、6月19日付で次の内容の要望書を出状し、県知事のこの事件に関する見解を求めました。
*****県知事あて要望書*****PDF ⇒ 20170619seisj.pdf
平成29年6月19日
〒370-8570群馬県前橋市大手町1-1-1
群馬県知事 大澤正明 殿
CC:高崎市指定介護事業者 各位殿
〒371-0801群馬県前橋市文京町一丁目15-10
市民オンブズマン群馬
代 表 小川 賢
事務局長 鈴木 庸
連絡先:TEL 090-5302-8312 (小川)
TEL 027-224-8567 (事務局)
FAX 027-224-6624 (事務局)
件名:介護保険の財源を流用した高崎市長の告発を求める要望書
当会は、群馬県において行政の違法不当な権限の行使による税金の無駄遣いや、住民の不利益を住民の立場から是正を図ることを活動としている民間の市民団体です。
表件については、当会会員である「要介護者の尊厳を守る会」副会長の岩崎優氏(連絡先 090-9839-8702、事務局 027-343-2610)が従前から当事者である高崎市長を相手取り公金の損失の回収や正しい行政措置を求めて係争中ですが、当会の活動方針に合致していることから、当会として支援するものです。
さて、若宮苑の偽造ケアプランに介護報酬を与える高崎市長の不当な権限の行使に対しては、群馬県民全体の利益の損失です。よって、貴殿におかれては、速やかに高崎市長を告発し、群馬県の負担金(12.5%)の返還を確実に回収するように求めます。
高崎市の不正給付は、介護保険制度を社会全体で支えるという法制定当初の理念とはかけ離れ、真に介護を必要とする利用者へのサービス低下や、日々の厳しい環境で適正な事業運営に真面目に取り組んでいる多くの介護事業者を裏切る行為です。
従って次の事項について要望いたします。
1. 刑事訴訟法第239条に基づき、高崎市長を告発し、流用された群馬県の負担金(12.5%)の回収を確実なものにすること。
2. 偽造ケアプランに対し介護報酬が支給されるというのであれば、若宮苑に限らず群馬県内の全ての介護事業者に対しても同様に扱うこと。
3. 施設サービス計画未作成に対し介護報酬が支給されるのであれば、居宅サービス計画未作成に対しても同様に扱うこと。
4. 高崎市長が、若宮苑の偽造ケアプランに対し介護報酬を与えた事実を、速やかに、県のHP上に掲載するとともに、記者発表すること。
5. 若宮苑のケアマネジャーを介護保険法第69条に基づき適正に処分すること。
以上を要望いたします。
つきましては、平成29年6月30日(金)限り必着で、下記に文書にて貴殿の見解を郵送にてお知らせ頂きますようお願い申し上げます。
記
〒371-0801 群馬県前橋市文京町一丁目15-10
市民オンブズマン群馬
事務局長 鈴木 庸
以上
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■ところが、回答期限の6月30日(金)はおろか、本日(7月10日)現在、未だに群馬県知事からは無しのつぶてです。
この間、6月28日(水)16:50に石原・関・猿谷法律事務所(TEL:0272-35-2040)の関夕三郎弁護士から、当会代表の携帯に電話がありました。内容は「実は、そちらの会員で介護保険給付金で県知事にいろいろ書面を出されている件だが、この事件で群馬県から依頼を受けて担当することになった。ついては、そちらの会からいただいた要望書にCCとして高崎市指定介護事業者各位殿とあるが、これらにも要望書の写しを配布したのか?もしそうだとすると、『偽造』ケアプランだと断定して表記していることから、あとでややこしい事態になるかもしれない」というものです。
これに対して「ややこしくなるという意味は、『偽造』という表現で、この事件のことを第3者に対して広く通知したことで、若宮苑がオンブズマンを名誉棄損で訴えてくる可能性がある、ということでしょうか?」と訊ねたところ、関弁護士は「そうだ。もちろん県はそのようなマネはしないけれど・・・」というものでした。当会代表は、「高崎市指定介護事業者には何社、この書面の写しを送付したのか、事務局に確認しないと何ともはっきりしたことがわかりませんので、とりあえず確認してみます」と返事をしました。
その後当会事務局に確認したところ、若宮苑を除く全部で112事業所宛てに送付したことが分かったので、翌6月29日(木)09:18に石原・関・猿田に法律事務所に電話をして、関弁護士に伝えようとしましたが、生憎不在だったため、伝言として「CCとして112事業所宛てに送りました」と窓口の女性職員にメッセージを託しました。
その後、7月5日(水)10:30に別件の住民訴訟で前橋地裁を訪れた際、やはり被告訴訟代理人として被告席に座っていた関弁護士から、法廷での弁論が終わった後、「ちょっと話がある」と呼ばれたので、「何のことでしょうか?」と聞いたところ、関弁護士が「やはり忠告しておく。『偽造』という言葉が独り歩きしかねないので、若宮苑から名誉棄損で訴えられるかもしれないから、留意したほうがいい」とアドバイスをしてきました。当会からは「偽造かどうかはっきりさせるためにも、訴えてもらうことは意義があり、覚悟しています」と答えました。
■それ以降、現在に至っているわけですが、遺憾ながら、未だに県知事から回答はありません。まさか、以上に上げた群馬県の訴訟代理人の関弁護士からの「警告」が、当会の見解書への回答というわけではないと思いますが、もし回答ということであれば、なんと無礼なことでしょう。また、関弁護士がこの事件で群馬県から何を委任されたのかも判然としません。この点についても群馬県知事は当会に対してクリアに説明をする必要があります。
■ちなみに当会会員が前橋地裁で係争中の事件「平成28年(行ウ)第7号 不当利得等請求住民訴訟事件」の第6回口頭弁論期日は7月5日に開催されました。傍聴していた当会会員の報告及び所感は次のとおりです。
*****第6回口頭弁論期日の傍聴報告*****
<傍聴人>
高崎市指導監査課係長・釜井克倫氏、同介護保険課・江原氏及び斉藤氏、市民オンブズマン群馬会員
<法廷での進行状況>
補助参加人の若宮苑の訴訟代理人が遅刻し、予定より15分遅れて開廷。早速、丙号証の証拠調べを行ったが、証拠としては不十分であり裁判官も少し呆れ顔の様子。
裁判長 「被告はこの裁判において、これ以上主張、立証はありますか?」
被告・市 「原告準備書面に対して、反論を検討したいと思います。」
裁判長 「求釈明についての暫定ケアプランの運用方法については、何か、資料は存在していましたか?」
被告・市 「その点も含めて反論を検討したいと思います。」
裁判長 「原告側に確認ですが、偽造サインはこの2枚でよろしいですか?」
原告 「はい。この2枚が偽造です。」
裁判長 「被告に質問だが、偽造の点についてどう考えてますか?」
被告・市 「これ以上の主張、立証は在りません。鑑定に関する意見書で主張したとおりです。あとは、裁判所の判断に委ねます。」
裁判長 「何か補足があれば次回期日まで提出して下さい。」
被告・市 「はい。」
裁判長 「次に原告側ですが、主張はまだありますか?」
原告 「ありません。」
裁判長 「そうなると証人尋問ということになりますが。」
原告 「若宮苑・栄養士の指出直美氏の証人申請と原告本人の申請を考えており、立証対象としては偽造の1点に絞ります。」
裁判長 「承知しました。それでは、次回までにその準備をして下さい。」
「これについて被告は何かありますか?」
被告・市 「法律論の問題であると思いますので、人証申請は考えていません。」
裁判長 「それでは次回期日は、9月14日の11時30分で良いですか?」
全員 「お受けします。」
<所感>
以上のようなやり取りを経て閉廷したが、被告側は求釈明の回答が全くできずに、引き延ばし作戦をしている思惑を強く感じさせられた。さらに、補助参加人においても、準備書面の内容がアセスメント・モニタリング・ケアプラン作成会議等を行った期日が全く記載されておらず、裁判長と原告が求めていた内容ではなかった。つまり、争点のひとつである「ケアプラン未作成」についても被告と補助参加人のウソが明かされたと感じた裁判だった。予断は禁物だが、原告側の主張が圧倒的に被告のそれを凌駕していると、傍聴席の誰もが思ったに違いない。
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【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】