■情報によると、東電グループの関電工を事業主体とする前橋バイオマス発電施設は、群馬県が定めた環境アセスメントを行わないまま、今年内に竣工し、来年1月から運転開始を予定しているといわれています。放射能汚染木材を毎年8万4千トンも集めて燃焼させることから、県民の間からは放射能二次汚染に伴う懸念や不安の声が起きていますが、肝心の群馬県や前橋市の行政は関電工ら事業者らと癒着して、環境アセスメントを免除したうえに多額の補助金までつけてやるという、とんでもない非常識ぶりを平然と行っています。そうした背景のもとで、当会は地元住民団体とともに、発電施設に隣接する木質チップ製造施設に対する補助金交付の「差止」もしくは「処分の取消」を求めて訴訟を2016年7月15日に提起しました。
その後、裁判所から補助金の一部は既に支払われていることから、支払の有無で峻別してはどうか、と訴訟指揮があり、結局、2016年12月26日に、新たな住民訴訟の訴状を裁判所に提出したところ、今度は、同じ事件で2つの訴状が出ていると被告からイチャモンがつきました。そのため、2017年3月10日の第4回口頭弁論で、最初の訴状を取り下げる羽目になりました。
そして、2017年3月15日に、出直し裁判の第1回口頭弁論が開かれ、同5月10日に第2回口頭弁論が行われましたが、また裁判所からイチャモンがつけられてしまい、法定外の受任裁判の形で、同5月22日に第1回弁論準備が行われ、6月15日に第2回弁論準備が行われ、7月18日(木)午後4時から第3回弁論準備が前橋地裁3階31号法廷で開かれました。これまでの裁判の経緯は次のブログをご覧ください。
〇2017年6月11日:東電の毒牙から赤城山と県土を守れ!…前橋バイオマス補助金訴訟6.15弁論準備に向け原告準備書面(2)を提出↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2341.html#readmore
〇2017年6月18日:東電の毒牙から赤城山と県土を守れ!…6月15日に第2回弁論準備として開かれた前橋バイオマス補助金訴訟↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2345.html#readmore
〇2017年7月7日:東電の毒牙から赤城山と県土を守れ!…前橋バイオマス補助金訴訟で7月7日に原告が差止⇒返還に訴えの変更申立↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2360.html#readmore
■それでは第3回弁論準備の模様をレポートします。
午後4時になり受命裁判官の佐藤裁判官が入室してきて、さっそく第3回弁論準備手続きが開始されました。
裁判官:原告のほうから訴えの変更申立書を7月7日付に出してもらった。4億8000万円およびそれに対する補助金の支払い時から支払い済みまで5分の割合の請求をするというかたち損害賠償の義務付けという形にしてもらった。これが訴えの変更になり、民訴法上の訴えの変更なのか、行政法上の行政事件訴訟法上の訴えの変更なのか、ちょっとこちらで検討しているところであり、少しこちらで検討させていただくが・・・。
原告:すみません。どこが違うのでしょうか?
裁判官:要件がちょっと違う。
原告:行政法も民事のひとつというふうに聞いていますが。
裁判官:そう。いくつかあり、民事訴訟法の143条の訴えの変更なのか、行政事件訴訟法の19条もしくは21条の訴えの変更なのか、もう少しこちらで今検討中。そこはもう少し時間をいただきたい。いずれにしても(原告の)訴えの変更について、なにか被告のほうで変更自体について意見はあるのか?
被告:ございません。
裁判官:よろしいですか。それでは、こちらのほうは、陳述のかたちでよいか?
原告:はい。
裁判官:で、従前の準備書面(2)だが、主位的請求としていままでの請求を維持する。あとは予備的請求として差し止めと返還請求をあわせて請求すると、こちらは今まで陳述を留保されていたということだったが、こちらは陳述しないという形でよいか?
原告:はい。
裁判官:で、これに関連して、被告のほうの第2準備書面、29年6月14日付の準備書面、こちらは(補助金の)全部について支出が完了したということだが、こちらに関しては陳述扱いでよろしいかなと思うが?
被告:はい。
裁判官:で、被告のほうの第2準備書面と原告のほうからの訴えの変更を今回陳述ということにする。で、まあ、合議体なので話し合っているところであるが、一応請求の形式的なところが整ったということで、中身の判断についても整理していこうという話になっているので、原告のほうで今回詳しく中身についても準備書面を通じて立証するというような主張はあるのか?
原告:ええ。今までの従前の主張をなぞって、プラスアルファも、検討次第ですが、それも含めてもう一回まとめてみたいと思います。
裁判官:裁判所からのお願いとして、返還請求ということなので、交付決定が・・・1回為された交付決定が違法であるから取消すべきだという主張なのか、そもそも無効だという主張なのか、そこを明らかにしてもらいたいと思う。わかるかな?既に補助金を支払い・・・
原告:無効確認をするわけでしょうか?
裁判官:いや、違う。確認ではなくて、まあ補助金4億8000万円が出されたわけだが、その行為が無効である、法律的な効果を生じないので、その4億8000万円を返すべきだと、いう主張なのか、それとも無効とまでは言えないが、違法だということで、取り消すべき、その交付決定を取り消したうえで返還請求をするのか。その、法律上のその辺に申請のチェックで、それについての根拠条文などを出してもらって、法律的にどういう主張なのかというのを分かるようにしていただければと思うが、よろしいか?
原告:はい。
裁判官:それを踏まえて被告のほうで反論するということでよいか?
被告:はい
原告のほうはそれでよろしいか?
原告:はい。
裁判官:よろしいね。合議体のほうは検討させていただいているが、もう少し主張整理のほうを私のほうで進めさせていただいてよろしいか?
原告・被告:はい。
裁判官:次回期日については、原告のほうはいつまで?
原告:1か月・・・夏休みがあるんですよね?
裁判官:はい。8月10日まで裁判所は夏季休廷なのでそれ以降、まあ、いずれにせよ、8月25日ぐらいまでは大丈夫か?
原告:はい、わかりました。
裁判官:では9月の4、5日あたりでどうか?
被告:差し支えます。
裁判官:9月の1日はどうか。
被告:別の案件が入っている。
裁判官:あとは・・・、7日は?
原告:金曜日ですか?
裁判官:木曜日。
原告:7日でいいです。
裁判官:時間は?
原告:7日であればいつでもいいです。
被告:3時以降であれば。
裁判官:はい・・・4時でどうか?
被告:はい。
裁判官:では、9月7日で。8月25日までに原告は書類を出してください。すいません、被告側川の反論というのは原告の主張を待ってからでのほうがよろしいか?
被告:はいそうですね。
裁判官:はい。では出していただきます。では今日はこれで。
■以上の通り、約9分間足らずで第3回弁論準備が終わりました。次回の第4回弁論準備は9月7日(木)午後4時から前橋地裁3階の31号法廷(ラウンドテーブル法廷)で開かれます。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】
※当会注1:民事訴訟法における訴えの変更
訴えの変更とは、民事訴訟において、原告が請求又は請求の原因を変更することをいう(民事訴訟法143条)。民事訴訟における審判対象の決定は原告の専権事項と考えられているところ、訴訟の進行に従い、原告が従来の請求のほかに新たな請求を追加し、あるいは従来の請求に代えて新たな請求を行うことが紛争の解決のために必要となることは十分に考えられる。このような場合に常に新しい訴訟を提起しなければならないとすると、従来の請求に関する訴訟資料を流用することはできないので訴訟経済上も無駄が大きい。そこで訴えの変更という制度が認められている。なお、ここにいう請求原因とは攻撃防御方法としてのものではなく、訴訟物の特定のために必要とされるものである。
(訴えの変更)
第143条
1. 原告は、請求の基礎に変更がない限り、口頭弁論の終結に至るまで、請求又は請求の原因を変更することができる。ただし、これにより著しく訴訟手続を遅滞させることとなるときは、この限りでない。
2. 請求の変更は、書面でしなければならない。
3. 前項の書面は、相手方に送達しなければならない。
4. 裁判所は、請求又は請求の原因の変更を不当であると認めるときは、申立てにより又は職権で、その変更を許さない旨の決定をしなければならない。
※当会注2:行政事件訴訟法における訴えの変更
行政事件訴訟法19条(原告による請求の追加的併合)1項は取消訴訟が提起された後に、原告による主観的併合と客観的併合を認めた規定。民事訴訟法上の訴えの変更(民事訴訟法143条)によっても、原告による追加的併合と同様の効果をあげることができる。そして行政事件訴訟法19条1項の要件と民事訴訟法143条の要件が異なるため、行政事件訴訟法の原告による追加的併合の規定は、民事訴訟法上の訴えの変更の適用を排除する趣旨かについて疑義が生じるのを解消するために19条2項が設けられている。つまり併合状態を作出するのに、行政事件訴訟法19条1項と民事訴訟法143条1項のどちらを用いてもよい。又さらに19条1項と同様の効果をあげることのできる規定として行政事件訴訟法21条があり、21条の要件は19条1項の要件とも民事訴訟法143条1項の要件とも異なる。
(原告による請求の追加的併合)
第19条
1. 原告は、取消訴訟の口頭弁論の終結に至るまで、関連請求に係る訴えをこれに併合して提起することができる。この場合において、当該取消訴訟が高等裁判所に係属しているときは、第16条第2項の規定を準用する。
2. 前項の規定は、取消訴訟について民事訴訟法第143条の規定の例によることを妨げない。
取消訴訟が係属中に、訴えの利益を欠く場合がある。ここで訴えの変更を認めることで、既に取消訴訟で形成された訴訟資料を損害賠償その他の請求の裁判に利用することが可能となり、一から裁判をやり直さずに済み訴訟経済に資し、原告の訴訟追行上の負担を軽減することができる。
行政事件訴訟法21条(国又は公共団体に対する請求への訴えの変更)1項と19条1項、民事訴訟法143条1項の要件の違いは次のようになる。19条1項との違いとして、被告を変更することができること。民事訴訟法143条1項との違いとして、異種の訴訟手続きになる場合でも訴えの変更が可能なこと。民事訴訟法143条1項による訴えの変更の場合は、併合について定めた民事訴訟法136条の要件を満たす必要があり異種の訴訟手続き間で訴えの変更はできない。(21条1項による場合は。行政事件訴訟から民事訴訟への訴えの変更が可能だが、民事訴訟法143条1項による場合はそのような訴えの変更はできない。)民事訴訟法136条が異種の訴訟手続き間で併合を認めないのは、それぞれの訴訟手続きで重視される考えが違うため(例えば弁論主義、職権探知主義のどちらが重視されるか等)、審理に混乱をきたすからである。
(国又は公共団体に対する請求への訴えの変更)
第21条
1. 裁判所は、取消訴訟の目的たる請求を当該処分又は裁決に係る事務の帰属する国又は公共団体に対する損害賠償その他の請求に変更することが相当であると認めるときは、請求の基礎に変更がない限り、口頭弁論の終結に至るまで、原告の申立てにより、決定をもって、訴えの変更を許すことができる。
2. 前項の決定には、第15条第2項の規定を準用する。
3. 裁判所は、第1項の規定により訴えの変更を許す決定をするには、あらかじめ、当事者及び損害賠償その他の請求に係る訴えの被告の意見をきかなければならない。
4. 訴えの変更を許す決定に対しては、即時抗告をすることができる。
5. 訴えの変更を許さない決定に対しては、不服を申し立てることができない。