■東電グループの関電工を事業主体とする前橋バイオマス発電施設は、群馬県が定めた環境アセスメントを行わないまま、昨年末迄に事実上竣工し、本年2月から本格運転が開始され、4月24日には行政関係者を招いて完成披露式=開所式まで開かれてしまいました。この暴挙を食い止めようと、当会は地元住民団体とともに、発電施設に隣接する木質チップ製造施設に対する補助金交付の「差止」もしくは「処分の取消」を求める訴訟を2016年7月15日に提起しました。それから早くも2年3カ月が経過しようとしています。9月5日の第10回弁論準備では、裁判長がいよいよ証人尋問に向けた方針を示し、原告住民に対し人証の証拠申出書の作成と提出を訴訟指揮しました。そこで原告住民らは、指定された10月1日の朝、当該申立書を郵送で前橋地裁と被告群馬県訴訟代理人宛てに発送しました。一方、被告群馬県も裁判長の訴訟指揮に基づき、求釈明への反論として10月3日付で第8準備書面を提出してきました。このあと、被告から原告証拠申出書への反論が出される可能性がありますが、次回10月26日(金)10時30分から前橋地裁で開かれる第11回弁論準備で、裁判長がどのような指揮を示すかが注目されます。
↑被告から10月5日に届いた第8準備書面を同封した普通郵便の封筒。↑
今年4月25日(水)午後4時30分に開かれた第8回弁論準備以降、これまでの本件裁判に関する情報はブログ記事を御覧下さい。
○2018年6月15日:東電の毒牙から赤城と県土を守れ!…6月20日前橋バイオマス補助金返還第9回弁論に向け原告が準備書面(8)提出↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2669.html
○2018年8月4日:東電の毒牙から赤城と県土を守れ!…9月5日前橋バイオマス補助金返還第10回弁論に向け被告が第7準備書面提出↓
http://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2716.html
○2018年8月28日:東電の毒牙から赤城と県土を守れ!…9月5日前橋バイオマス補助金返還第10回弁論に向け原告が準備書面(8)提出↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2737.html
○2018年10月2日:東電の毒牙から赤城と県土を守れ!…10月26日前橋バイオマス補助金返還第11回弁論に向け原告が証拠申出書を提出↓
https://pink.ap.teacup.com/ogawaken/2767.html
■今回、原告住民らに届いた被告第8準備書面の内容は次のとおりです。
*****被告第8準備書面*****PDF ⇒ 20181007078ihj.pdf
<P1>
平成28年(行ウ)第27号住民訴訟によるバイオマス補助金支払差止請求事件
原 告 小川賢 外1名
被 告 群馬県知事大津正明
第8準備書面
平成30年10月3日
前橋地方裁判所民事第1部合議係 御中
被告訴訟代理人弁護士 石 原 栄 一
同 関 夕 三 郎
同 織 田 直 樹
同 安 カ 川 美 貴
同指定代理人 板 垣 哲 夫
同 笛 木 元 之
同 生 方 宏 久
同 武 藤 淳
同 浅 見 淳
同 石 井 米 吉
以下,原告準備書面(9)における求釈明等について,必要に応じて回答する。
<P2>
1 原告準備書面(9)第1-1項(「前橋バイオマス燃料と前橋バイオマス発電が別法人であるとの被告の主張への反論」)における求釈明について
(1) 求釈明事項
「・・・あるいは,当初から被告は,両法人がその実際の製造能力に余裕のあることを承知で,環境アセスを免除した上で,本件事業を許可したのではないの
か,釈明を求めたい。」(4頁1行目乃至3行目)
(2) 被告の回答
前橋バイオマス燃料の製造能力に余力があるかどうかは,標題の争点(前橋バイオマス燃料と前橋バイオマス発電が別法人であること)と無関係であるため,回答の必要性がない。
なお,被告は本件事業を「許可」する立場にない。したがって,同求釈明は前提が誤っており,この点でも回答の必要性がない。
2 原告準備書面(9)第1-2項(「放射能対策が適正であるとの被告の主張への反論」)における求釈明について
(1) 求釈明事項
「(3)原告が,このトラックスケールを製造するメーカーに確認したところ,メーカーの技術相当者は『40万ベクレル程度の放射線源がなければ検出不能』と証言している。被告はきちんと事業者にこのことを確認したのか,釈明を求めたい。」(4頁17行自乃至20行目)
(2) 被告の回答
原告らが求釈明の前提として主張する事実は,抽象的であり明確な証拠に基づくものでもないため,回答することは適切でない。
3 原告準備書面(9)第2-1項(「求釈明1についてJ)における求釈明について
(1) 求釈明事項
① 「(3)被告は,年間における間伐材の蔑地や形状,自然乾燥期間の変化,そして,人工乾燥したチップの混合比率など含水率計算の前提条件をきちんと事業者からヒヤリングして,確認したのか。その経緯と根拠について明確な釈明を求めたい。」
② 「(4)また,原告は,低位発熱量の方程式(全国木材チップ工業連合会報告資料)からカロリー値計算,メガジュール値計算から含水率を導き出したが,
<P3>
被告も,この方程式から,同様に導き出し,含水率43.125%との違いを明確にし,その理由を科学的に説明する必要がある。被告の釈明を求めたい。」
(2) 被告の回答
原告らは,同項(2)において,天然乾燥5万トン分が含水率45%で,人工乾燥3万トン分が含水率40%であることから,それらを混合した場合の合水率43.125%は導き出されない旨主張し,上記各求釈明は,このことを前提としたものである。
しかし,天然乾燥分5万トン中の水分2万2500トン(50,000×0.45=22,500)と人工乾燥分3万トン中の水分1万2000トン(30,000×0.4=12,000)の合計水分3万4500トンは,全体(8万トン)の43.125%である(34,500/80,000×100=43.125)。したがって,合水率43.125%は計算上導き出される数値であるから,原告らの上記主張は誤りであり,求釈明の前提を欠くため,回答の必要性はない。
4 原告準備書面(9)第2-2項(「求釈明2について」)について
(1) 原告らの主張
「(4)・・・被告は「45%と見積もった」と主張するが,その根拠が見当たらない。この事業計画が始まった当初から,製材端材は合水率が多いので,大型プレス機による脱水が想定されており,環境配慮計画が提出された平成28年5月18日時点で,人工乾燥による3万トンのチップ燃料は想定されていたはずである。だとするならば,含水率45%で逆計算し,燃料使用量が9,770㎏/hになることを証明されたい。」
(2) 被告の反論
本訴訟の争点は,本件発電事業が条例アセスメントを実施していない違法の有無である。・
る(争点1-(1)-イ)。この点については,被告第7準備書面第2-2項で述べたとおりである。
⇒※被告第7準備書面第2-2項
2 求釈明2について
一般に,燃料の含水率が高いほど,当該燃料の発熱量は低くなるから,燃料使用量は増えることになる。逆に,燃料の含水率が低いほど,当該燃料の発熱量は高くなるから,使用燃料は相対的に減ることになる。
環境配慮計画では,天然乾燥した木質チップの(湿量)含水率を45%と見積もり,他方,排ガス量の計算(乙12)では,天然乾燥による燃料と人工乾燥による燃料を併用した場合における全体の(湿量)含水率として43.125%と見積もったのである。燃料使用量9,770kg/hと9,300kg/hとの差は,この仮定した含水率の差により生じたものである。
また,条例アセスメント実施要件該当性判断においては,本件運用により(乾量)含水率を20%*1)(湿量)含水率は16.667%となる(乙12参照)。として計算できる。そして,仮に(湿量)含水率を45%として排ガス量の計算式(乙12)に当てはめた場合,結局,本件運用により排ガス量は39,200Nm3/h程度となり,40,000Nm3/hを下回り条例アセスメントの対象とならないため,関電工が含水率を偽装する理由はない。
⇒当会注:被告群馬県は、上記の被告第7準備書面第2-3項で「原告らは,関電工の排ガス量計算における(湿量)含水率(43.125%)と,前橋バイオマス燃料の燃料供給計画から計算される(湿量)含水率(42.938%)との整合性を問題としている。しかし,上記各含水率は異なる算出方法による計算上の含水率であり,完全に一致することまで要求される性質のものではない。」として、条例アセスを免除した含水率の基準という最も重要な要素について、軽視していることが分かります。これは、関電工やトーセンへの忖度以外の何物でもありません。
5 原告準備書面(9)第2-3項(「求釈明3乃至6について」)について
(1) 原告らの主張
含水率を1000分の1単位で算出したことは相当の精度であり,前提条件が明確にならなければ求められるものではない。また,計算上だけでなく,本件運用時の条件との誤差があってはならない。
<P4>
(2) 被告の反論
本書面前記第3項で述べたとおり,含水率43.125%は,各燃料において想定される平均的含水率から単純計算により導き出されるものであり,「前提条件」は不要であり,「相当の精度」であると評価されるものでもない。
6 原告準備書面(9)第2-4項(「求釈明9について」)における求釈明について
(1) 求釈明事項
「・・・だが,メーカーに提出したサンプルの素性や量を明確にした上での試験結果,さらには,先行機の実績データや燃料の素性や条件,ボイラー性能などが明確にされなければ納得できるものではない。さらなる釈明を求めたい。」
(2) 被告の回答
空気比の値を「1.3」としたことについて,被告は,第6準備蓄面第2-2項(2)のとおり,木質バイオマス発電で使用される同種のボイラーにおける一般的な空気比として「1.0~l.5」とされていること(乙13)を挙げ,妥当である旨主張した。
これに対し,原告らは,「あれだけ水分最の多いチップを燃焼させるのだから,燃焼に必要な空気量は,1.5を遥かに超える可能性がある。j などと反論するものの(原告準備書面(8)12頁),上記空気比の仮定値が不合理であることを示す具体的な現由を主張するものではない。この点,本訴訟の争点は,本件発電事業が条例アセスメントを実施していない違法の有無であり(争点1-(1)-イ),同事業に関する一切の情報を明らかにすることではない。
したがって,原告らが求める情報が本訴訟の争点の審理に直接関連性を有するものではない以上,釈明の必要性はない。
以上
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なお、受領確認の為、次の文書「送付書」をFAXにて地裁と被告群馬県訴訟代理人あてに発信しておきました。
■以上、ご覧いただいたとおり、回答し難い項目については、「争点と無関係であるため、回答の必要性がない」を連発しています。
また、被告群馬県は、相変わらず「『許可』したのではなく、単に条例アセスの免除条項に照らして、事業者が「自主的に判断」しただけだ」と言い張っていますが、事業者である関電工から、何度も相談を受けた結果、条例アセスを実施しなくても済むような含水率の特例条件を設定して、「これなら大丈夫」というお墨付き(=許可)を与えたことは棚に上げています。
いかに、両者が官業癒着しており、被告群馬県が県民や県土に対する生活・営農・自然環境の保全に無関心であり、その裏返しとして特定の法人や団体組織に対して「忖度」をする体質を持っているかが、今回の裁判で明らかにされていくに違いありません。
【市民オンブズマン群馬事務局からの報告】